キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に13

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6時ともなるともう真っ暗で、店の灯りが眩しい。雑踏の中では光の中、楽しそうな友達連れや、家族、カップルが楽しそうな会話をしながら歩いてる。その中でボクはハァハァと息を整えながら良太を探した。1時間も遅れているんだからいるわけないとは思ったけど、探さずにはいられなかった。

良太…良太…良太…

心の中で良太の名前を叫びながら探す。額からツーッと汗が落ちる。それでもやっぱり良太は居なくて…。

1時間も待っててくれるわけない。又、嫌われたかもしれないと思うとやるせなくてポトポトと涙が零れ落ちる。好きになってもらえないのは仕方ないけど、嫌われるのは嫌だ。

ボクは傍のベンチに身体を預けて座りこんだ。今日は夕方から冷え込むって天気予報で言ってたっけ…。

そうだ、携帯で連絡…。

あわてて携帯を鳴らすけど、良太が出る事はなくて、完全に嫌われたんだなって思うとますます悲しくなる。そのまま動けなくて、気が付くともう7時前になろうとしていた。

「さぶっ。」

すっかり身体が冷えてるのに気が付いてノロノロと立ち上がり、家に向けて歩き出そうとした時だった。

「カズサっ!!バカッこんなところにいたのか。オレ家に行ったんだぞ。」

「良太…。」

「あーあ、こんなに冷えて。また風邪引いたらどうすんだ。」

「ごめん。良太の電話に気が付いたのが遅くて、ここに来た時は6時前だったんだ。」

「それから1時間もここにいたのか?」

「良太に電話したけど繋がらなくて…。」

「あーーー。悪い。バッテリー切れてんだよ。ごめんカズサ。」

良太とこんな風に2人で話すのは久し振りだ。寒いよりもその事の方が嬉しいと思うなんておかしいかな。

「このままじゃ、マジでカズサ風邪ひくな。オレの家ここの近くなんだ。来いよ。」

「え?でも悪いよ。」

「いいから。ぅわっ。手冷てー。」

良太は冷たくなったボクの手をしっかりと掴んで歩き出す。良太の手はとても温かくてボクの手を包みこんでくれる。久し振りの温もりにさっきとは違う涙がこぼれて、良太に見られないように袖で拭いた。

「良太。手を離して。男同士で手を繋いでたら変に思われるよ。」

「こんなに暗いんだからわからないって。それに誰も見てないだろ。」

良太はかまわずに手を繋いだまま家へと向かう。

恥ずかしいけど、嬉しくてこの温もりも覚えておこうと心の中で思う。

昨日まではクサクサして落ち込んでたのに、良太が居るだけで心の持ちようも違う自分にちょっぴり呆れる。

駅からしばらく歩くと閑静な住宅街が広がり、どの家も温かい光が窓から漏れていて幸せな家庭を思い起こさせる。その中の一軒の家の前で止まると、良太はカズサを振り返りニカッと笑う。

「オレん家ここ。妹もいるからウルサイかもしれないけどまあ、入れよ。ただいま。」

「お帰り。遅かったのね。お友達と会えたの?」

奥から、エプロンをかけた優しそうな人が出迎えてくれる。

「わっ。お兄ちゃんのお友達?いつもの人達と違うね。」

「母さんも、愛美(エミ)もカズサがビックリしてるだろ。」

「こんばんは。突然お邪魔してすいません。星野 上総と言います。いつも上村くんにはよくしてもらってます。」

ペコリとお辞儀する。

「まあまあ、礼儀正しいのね。おばさんカズサくんの事とっても気に入ったわ。」

「ほんと、いつもの友達みたいにガツガツしてないし、優しそうだし、きれいだし愛美も気に入った。」

「ありがとうございます。ボクも嬉しいです。」

「なんだよ。2人してカズサの事気に入ったのかよ。オレとずいぶんと態度が違うんじゃねー?」

「お兄ちゃんと、カズサくんじゃ雲泥の差よ。早くカズサくんあがって。寒かったでしょ。」

「ほんとに。こんな玄関でごめんなさいね。ココアでも入れましょうか?」

「愛美も一緒に飲む。」

良太を置き去りにカズサは2人に手を引かれて奥へと消えて行く。

「オレがカズサに用があるのに…。」

2人に気に入られたカズサは色々な質問攻めを浴びながらも、楽しい時間を過ごす。もともと自分が話すより、聞き上手のカズサだ。優しく微笑みながら聞いてくれるカズサにますます高感度があがる。

「カズサくんてお兄ちゃんと同じ年なんだよね。お兄ちゃんは愛美の話なんてちっとも聞いてくれないんだよ。カズサくんがお兄ちゃんならよかったなあ。」

「そんな事言ったらダメだよ。良太はすごく言い奴だよ。周りのみんなの事をちゃんと考えられるし、リーダーにもなれる。頭もいいし、スポーツだって出来る。女の子にモテるんだ。すごい自慢のお兄さんだと思うよ。高田さんだって良太の事自慢してる。」

「ああーー。愛美きらーーい。あの人、お兄ちゃんに見せる顔と愛美に見せる顔違うもん。意地悪だし。何でお兄ちゃんがあの人といるのかわからないよ。」

「愛美ちゃんそんな事言ったらダメだよ。」

「ん?何の話だ?」

「お兄ちゃんはオンナを見る目がないって話。」

「何だよ。それ。それよりカズサオレの部屋に行こうぜ。」

「あ、うん。」

良太の部屋は男の子の部屋らしく、バスケの選手のポスターやボールなんかがあったり、ゲームやマンガが積み上げて合ったりした。でも本棚にはちゃんと参考書がたくさん並んでて、影でちゃんと勉強しているのがわかる。お兄ちゃんのお下がりだなんて言ってたけど、大切にしているのが見ただけでもわかった。

「で、今日はボクに何の用だったの?」

「カズサに謝ろうと思って。」

「どうして?良太は何もしてないよ。」

「玲奈の事があってカズサはクラスで1人浮いちゃったのにオレ何も出来なくて。カズサを無視するような態度とっちゃってさ。オレってひでーよな。」

「いいよ。そんな事。良太が高田さんと付き合ってるって聞いたときはショックだったけど…。だって良太は付き合ってないっていってたから。」

「ああ。オレはマジで付き合ってるつもりはなかったんだけどな。いまでもそんなつもりはない。」

「じゃあ、どうして?」

「玲奈な、すごい思いこみが激しいだろ。玲奈の中ではオレは玲奈の彼氏なんだよ。そこで否定するとどうしてだって、どうして嘘つくんだって怒る。オレに八つ当たりするならいいんだ。でも玲奈の場合、それがオレと玲奈を邪魔する相手に向かうみたいで。今で言えばカズサだな。で、オレがカズサを庇うとするだろ、そうするとカズサに対する嫌がらせはもっと酷くなる。だからオレは今はカズサの傍にいちゃダメなんだ。携帯も玲奈はチェックしてるみたいで、ロックかけるとやましい事があるのかって見せるまで食い下がる。だから昨日のカズサのメールも削除した。」

「そうなんだ…。」

「でもよ、昨日のカズサのメールなんだよ。もうオレとは友達じゃないっていうのかよ。今までありがとうってなんだよ。オレ怒ってるんだぞ。確かにオレもカズサに何も連絡しなかったし、言える立場じゃないのはわかってるけど、今まで2人で過ごしてきて、言わなくてもカズサはオレの大事な友達なんだってわかってくれてると思ってた。」

ボクの目から今日何度目かわからない涙が溢れだす。良太はボクを嫌ってるんじゃなかった。

「泣くなよ。カズサ。今のクラスの状態って酷いよな。カズサよく頑張ってると思う。オレだってカズサの傍にいたいと思うけど、そんな事すると玲奈、逆上するだろ。今は玲奈を逆なでしないほうがいいと思うんだ。だからオレ、カズサの味方が出来なくて、はがゆい。ごめんな。心細いよな。」

ボロボロとこぼれる涙は頬を流れ落ち顎から滴ってラグを濡らす。身体も震えて自分で身体を抱きしめても崩れ落ちそうだった。

でも、泣いてばかりじゃ良太に迷惑がかかる。カバンからハンカチを取り出し、目に当てて涙を押さえる。

ボクは大丈夫、良太のために迷惑はかけない。大丈夫だから。暗示をかけ涙を止めると良太にニコッと笑いかける。

「えへ。大丈夫だよ。泣いちゃったりしてごめん。ボク男なのになに泣いてんだか。良太安心してよ。ボクは大丈夫だから。1人でいるの本当は好きなんだ。静かに本も読めるし。だから良太は気にし無くてもいいよ。高田さんを大事にしてあげないと。」

「だからカズサは誤解してるって。玲奈とは友達なんだって。」

「友達ならなんでみんなの前で高田さんとは付き合ってないって言わないの?高田さんの事に何でもいいよって言う事聞くの?ボクと遊ぶのもぷっつりやめたのは高田さんが嫌がったからでしょ。良太の言ってる事とやってる事は矛盾してるよ。良太は高田さんとの事をどうするつもりなの?」

「オレはただ玲奈がカズサに酷い事してるから謝りたかったんだ。玲奈との事は玲奈がもう少し落ち着いてから話し合おうと思ってる。今は何を言っても聞かないと思うし。」

「ボクは別に謝ってなんか欲しくない。もういいから。話それだけなら帰るね。」

感情が高ぶって止まってた涙が出てきて、ボクはカバンを持つと部屋から出て行こうとした。

「待て。待てよカズサッ!!」

気が付くと良太に抱きしめられて荒々しく唇を塞がれていた。

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読んで下さいましてありがとうございます。寒くなりましたが皆様大丈夫ですか?インフルエンザ接種もしなければと思う今日この頃。ワクチンを打って効くのに2週間。薬が効いてるのは3ヶ月との事。11月下旬か12月に打とうかな?今までは職場でただだったのに、この職場は1000円取るんですよ。ケチくさい。でも一般じゃ、ここいらは2500円から3000円が相場のようです。

ところで『やさしいKissをして』してなのですが、しばらく更新をお休みさせて頂きます。正直、もう終りにちかいのに書けなくなりました。必ず仕上げる予定ではありますが最終話まで書けたらUPする予定でおります。申し訳ありません。



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~ Comment ~

 

Rinさま。
よく、’話が降ってくる’と言ったりしますよね?
私たち(あれ?)はプロではないのだから、無理することは無いと思いますよ。

PCの前で頭を抱えるのは仕事の時だけで十分です(笑)。


カズサ、仲直りが出来たようで良かった。
そして良太のおうちへ。。
お母さんや妹さんにも気に入ってもらえてうれしかったでしょう。

ラストは・・・えええッ??!?
次回を待ちます。。。

Re: タイトルなし 

ますみ様こんばんは☆

今日もご訪問ありがとうございます。

優しいお言葉胸に染み入ります。自分を追い詰めてはいいお話にならないと思って思いきりました。ちょっと胸が疼くけど、書かなくちゃって思いこんでた時よりは心が楽です。

去年の12月の下旬から書き初めて、こんな事は初めてです。

『キミ思』でも同じ事にならないようにと思いつつ書いてます。

しかし、急展開しちゃいました。そんなつもりなかったのに、良太がやっちゃいました。あの時は良太に乗り移られた感じで…。おかげでウダウダです(苦笑)良太目線からも書かないとあの行動は意味不ですよね。カズサも意味がわからなくてグルグルしてます。

しかしまあ、良太もカズサも見事に玲奈に振り回されて…。オンナって本当に怖い生き物です。

ますみ様励まし&コメありがとうございました☆

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