キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に14

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突然塞がれた唇。

驚いて、身体が強張る。

どういうつもり?

頭の中がグルグルする。こんな気持ちのないキスなんていらない。

ボクは力任せに良太の身体を突き飛ばした。

「何するんだよ。何してるのかわかってるの?ボクをバカにしてるの?からかってるの?玩具にしてるの?」

「ごめ…。」

荷物も持たずに良太の家を飛び出した。

「カズサッ!!」

良太に触れられた唇が熱い。

「良太のバカ…。」

何で良太はボクにキスしたんだろう。高田さんとの事を追求されたくなかったから?ボクが口やかましく高田さんとの事を言ったから?

でも…。

考えてみたら良太は何も悪くない。

高田さんとの事もボクが口を挟む事じゃない。誰を好きになろうとも、誰と付き合おうともそれは良太が決める事。ボクは良太の恋人でもないのにヤキモチ妬いて、良太に八つ当たりしただけだ。ボクが悪い…。良太が優しいから一緒に居る事が当たり前になって、その時間がなくなってしまって高田さんといる良太を責めて…。

ボクが良太の事を好きでいるのはボクの勝手。良太はいい友達でいてくれてたのに。その良太を責めてボクって最低な奴だ。

真っ暗な空からはボクを諌めるようにポツポツと雨が降り出してきた。

「家に帰らないと、また風邪引いちゃうな。」

家に帰る頃には全身びしょぬれで、そのままお風呂に直行すと熱いシャワーを身体に浴びる。ふと指先が唇に当たって良太の唇の感触を思い出した。

「良太の唇も熱かったな。」

良太にとっては意味のないキスだろうけど、ボクは初めてだったんだ。ずっと良太の事が好きだったから、良太以外の人は考えられなくて…。

「よかったじゃないか。初めてのキスが良太で…。」

言った傍から涙がこぼれて…。

「良太に八つ当たりした罰だよ。初めてのキスがあんな気持ちのこもってないキスだなんて…。好きな人とのキスなのに全然嬉しくないや…。」

お風呂から出ると冷蔵庫から水を取り出して飲む。

「晩ごはん…。」

食べる気も起きず、そのまま冷蔵庫を閉じる。

良太に謝らないといけないよね。だって八つ当たりして1人で怒って良太を困らせた。キスの事はどうしてあんな事したのかわからないけど、もしかしたらボクが興奮してたから落ち着かせようとしたのかもしれない。

ズボンのポケットから携帯を取り出すと良太からメールが入ってた。

『カズサごめん。カバン預かってるから。』

メールを見てカバンを忘れてきた事に気が付くなんてボクはどれだけ動揺してたんだろ。カバンの中には財布と文庫本と病院の薬が入っている。

「良太が謝る事ないのに。」

ボクも良太にメールを打つ。

「ボクこそ良太に八つ当たりしたみたいでごめん。カバンはそのまま預かっててくれないかな?明日の放課後取りに行くから家の人に預けててください。」

良太が部活で居ない時に取りに行くつもりだった。

状況が変わったわけじゃないから、良太とボクは一緒に居ないほうがいい。

いつまでこうしていればいいのかな。このまま見てるだけの方が良太のためだし、ボクの心の中を整理するためにもこのままの方がいいんじゃないかな。もともと良太とサヨナラするためにここに来たんだ。今のままじゃ、これ以上良太の傍にいたらサヨナラ出来なくなるかもなるかもしれない…。

まんじりともせず夜が明けていく。眠ったのは空が白くなって来た頃で、目覚ましもかけずに寝てしまっておきたら昼を過ぎていた。

「あーあ。学校サボっちゃったな。」

いまさら学校に行く気にもなれず、薬を飲もうとしてカバンを良太の家に置きっぱなしだったのを思い出し、鳥に行く事にした。もしかしたら家の人は居ないかもしれないけど、それならそれでかまわないと思った。ずっと家の中にいると気分が落ち込みそうだったから…。

「いきなりこんな時間に行ったら迷惑かな?」

そう思った頃には良太の家の近くで、思いきってインターホンを鳴らす。

程なく玄関が開いて良太のお母さんが出てきた。

「こんにちは。昨日は挨拶もせずに帰ってしまってごめんなさい。」

「あらカズサくん。こんにちは。あら?学校は?」

「寝坊してしまって起きたらお昼回ってました。」

「さぼっちゃったのね。そっか、カズサくん1人暮らしだものね。誰も起こしてくれないか。」

「はい。起きてビックリしました。」

「そうよね。ビックリするわよね。あ、カバン取りに来たのね。ちょっと待ってて。」

そういうと良太のお母さんはボクのカバンを持ってきてくれた。

「でもカズサくんっておっちょこちょいなのね。カバン忘れるなんて…。」

「ですよね。気を付けなくちゃ。」

「そうよ。家だからよかったけど、お店とか外で忘れたら出て来ないかもしれないから気を付けてね。」

「はい。ありがとうございました。」

「またゆっくり遊びにいらっしゃい。今度、一緒にご飯でも食べましょ。」

「ありがとうございます。楽しみにしてます。じゃ、失礼します。」

良太のお母さんにお礼を言うと来た道を帰る。まだ学校の時間だしウロウロするのも何だか気が引ける。

良太にメールしても大丈夫かな?玲奈が携帯を見るって言ってなと思い出し打つのをやめた。家に帰ってくれば取りに来た事もわかると思って…。

こうして良太との間に距離を作って行けば玲奈が騒ぎ立てる事もなくなり、良太に迷惑をかける事もなくなるだろう。ちょっぴり心が痛いけど慣れなくちゃな。

家に帰ると何も考えないようにと家中の掃除や洗濯をして時間を潰す。する事がなくなると文庫本を読んでその世界の中に逃避した。

それでもふとした時間に良太の事を思う。気が付けば、思い出ノートを取り出していた。

「昨日のキスの事書くのは女々しい?でもボクの初めてのキスだし…。」

しばらく迷ったけど、まっさらなページにペンを走らせた。

『〇月〇日 良太とキスをした。ボクの初めてのキス』

ボクは良太に本当にサヨナラ出来るのかな?でもしなくちゃいけない。もういい加減諦めないと…。


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