キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に18

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良太はジリジリする思いで教室にいた。隣では玲奈が何か話しているけど、一つも耳に入って来ない。苦しそうな顔をしたカズサが運ばれて行ってからずいぶんと時間が経ったように思うのに、実際の時間はそれほど経っていない。

いつも白いカズサの顔だけど、さっきは真っ青で苦しそうだった。なのに玲奈たちはカズサが嘘をついているのだと言う。どこをどう見れば嘘だと思うのか、ますます玲奈の事が好きになれない良太だった。


一方で、友人達はカズサを保健室まで運んできたのだけれど、保険医が不在だった。

とりあえず、ベッドにカズサを寝かせる。カズサは相変わらず冷や汗を流しており、息をするのも苦しそうだ。

何かないかと2人は保健室の中を探すが、どこになにがあるのかさっぱりわからない。やっと見つけたタオルでカズサの汗を拭ってやる。

「…。後藤くんも、横田くんももういいよ。ありがとう。迷惑掛けてごめんなさい。」

「迷惑なんかじゃないって。カズサ大丈夫か?」

「もう戻って…。ボクの事はいいから…。じゃないと後藤くんや横田くんも悪く言われちゃうかもしれないから。ね、寝てれば治ると思うから。戻って。ありがとう。」

苦しそうにしているのに、カズサから出てくるのは自分達を悪く言われないようにとの気遣いばかりで、後藤も横田も胸をつかまれるような気がする。今まで、他の奴と同じようにカズサの事を無視してきたのに、そんな事は一切言わないカズサ。

「もう大丈夫だよ。ね。」

苦しいのに笑顔を見せようとするカズサに後藤も横田もそこを離れることが出来ないでいた。

「カズサ、今までごめんな。オレたち噂に振り回されてカズサのこと傷付けてたよな。ほんとにごめんな。」

「そんな事いいよ。早く戻って。」

「先生が来るまでオレ達ここに居るよ。カズサ迷惑か?」

「迷惑じゃないけど、でも後藤くんと横田くんがみんなにいじめられるかもしれないのが嫌なんだ。」

「気にするな。オレ達男だぜ。それにカズサは1人で耐えてたろ。オレ達は2人だから、カズサよりマシさ。それにこれからは3人になるかもな。」

「後藤くん…。」

「そうそう、カズサが噂を広めたりするような奴じゃない事わかってたのに、のっちまった自分が情ないわ。ごめんなカズサ。」

「横田くん…。2人ともありがとう。」

「オレ達はカズサの味方だから安心して何でも話してこいな。」

「今までは良太がその役目だったのかも知れないけど、今は玲奈がべったりだからな。オレ達で我慢しろ。」

「我慢だなんて。ありがとう。嬉しい。でも本当にボクの事は気にしなくていいからね。1人でも大丈夫だから。」

「女どもはどう言うか知らないけど、他にもカズサの味方はいると思うからさ、1人でいいなんて寂しい事言うなよ。」

「後藤くんも横田くんもありがとう。おかげで少し胃の痛みも収まったみたい。」

「よかったな。でもここで寝とけよ。又ぶり返すかもしれないからな。」

「うん。そうするよ。」

「じゃ、オレ達はカズサの寝るの妨げないように戻るわ。保険医見つけて言っとくから静かにしてろよ。」

「うん。ありがとう。」

後藤と横田が出て行き、保健室は静かになる。

カズサは思いがけず仲良くしてくれた後藤と横田に感謝し、久し振りに友達と話した事に嬉しくなる。

「イタタタ…。なんだろこの胃の痛み。」

2人には痛みは収まったと言ったけど、実際は痛みは続いていて、カズサは布団の中でお腹を押さえて丸まっていた。

しばらくウンウンと唸っていると保険医がやってきてカズサの様子を見る。その頃にはカズサは汗だくで目を開ける事も出来ずにいた。

「星野くんわかる?」

保険医の声に少し頷くが声は出せなかった。

保険医が身体を触診していくたびに痛みで顔が歪む。

「これは病院に行った方がいいわね。星野くん病院に行くよ。」

何を言われても答える事が出来ず、カズサは救急車が来る前に意識を失ってしまった。

教室に戻った後藤と横田は2人でカズサは大丈夫なのかと話しをしていた。

「カズサさ、めちゃくちゃ軽かったぞ。あいつちゃんと食べてるのか?」

「そう言えば最近、昼飯食ってるのもあんま見ないよな。」

「そう言われて見れば…。いい匂いもしたなあ。」

「お前だけずるいんだよ。」

「先にカズサの具合が悪いのに気が付いたのはオレなんだから仕方ないだろ。」

「オレが抱き上げたかったなあ。」

「ちょっと、あんた達カズサくんの嘘にのせられて鼻の下伸ばしてんじゃないわよ。」

「はあ?何が嘘なんだよ。」

「カズサくんは病気のフリしてたのよ。良太と玲奈の気を引くためにね。」

「お前らバカ?あれが演技なわけないだろ。カズサイジメもいい加減にしろよな。」

「なんですって!!あんた達、このクラス中を敵に回すっていうのね。玲奈の事、可哀想だと思わないの?」

「玲奈は良太と付き合ってるんだろうが。それでなんで可哀想なんだよ。カズサの方が可哀想だろうが。難癖つけて一人にしていじめてるんじゃねーか。オレと横田はそんな中にいたくねーから抜けるわ。いじめるならオレ達も一緒にしろよ。」

「何よ。その態度。玲奈の事を裏切るのね。いいわよ。あんた達覚悟しときなさいよ!」

「勝手にすれば?せいせいするわ。」

その時救急車が学校内に入ってきて、みんな窓の方へ集まる。

「なんで救急車?」

口ぐちに救急車に誰が乗るのか見ている。後藤と横田はもしかして…。と保健室に走る。保健室に着いた時、ちょうどカズサが担架に乗せられていた。

「先生、カズサ悪いんですか?」

「ん。ちょっと痛みがひどいみたいだから病院で診てもらったほうがいいと判断したのよ。」

「どこの病院ですか?オレ達、カズサの荷物とか持って行きます。」

「こらこら授業があるでしょ。カバンとかは先生が後から持っていくからいいわ。」

「でも、心配ですよ。あいつこの頃多分、メシちゃんと食べてないと思うんです。昼飯食べてるの見てないから。」

「そうなの?学校での様子を話せる方がいいかもしれないわね。どちらか1人一緒に付いて来てくれる?」

「「オレが行きます!!」」

「2人は入らないわ。1人でいいのよ。」

「オレが行くって。」

「オレが行くからお前残れよ。」

「困ったわね。わかったわよ。2人とも行きましょう。先生は自分の車で行くから1人は先生と。1人は救急車に乗って、胃が痛み出した時の様子とかを話して頂戴。先生は急いで担任の先生に話してくるからカバンもってきなさい。カズサくんのもね。急いで。」

じゃんけんで後藤が救急車に、横田が先生と一緒に行く事になった。2人は急いで自分達のカバンとカズサのカバンを持つと下駄箱へ急ぐ。

ちょうど担架が運ばれてきたところで後藤と横田はカズサに声をかけるが、カズサは意識をなくしており、酸素マスクをしていた。

それぞれに救急車と、先生の車に別れて外へと出ていく。サイレンの音が次第に小さくなって行く中、教室ではザワザワと内緒話があちこちで始まっていた。

「あれ、カズサくんだったわよね。」

「うん。酸素マスクまでしてたよ。」

「後藤くんと横田くんが声掛けたみたいに見えたけど、カズサくん反応しなかったみたいに見えた…。」

「仮病なんかじゃなくて、本当に病気だったんだ。」

「私達、ひどい事してない?カズサくんに…。」

「カズサくんは何もしてないんじゃないの?」

あちこちでザワザワと話されているのを良太は見ているだけで、後藤と横田はカズサのすぐ傍にいるのに、オレはなんでここにいる?どうしてこんなにイライラするんだ。まるで後藤と横田に嫉妬してるみたいじゃないか。

…?嫉妬?オレ、後藤と横田に嫉妬してるのか?なんで?カズサの一番の友達はオレなのに後藤と横田がその場所にいるから?

後藤がカズサに触れたから?抱きあげたから?

カズサは男だぞ?嫉妬するなんておかしいだろ?

そんな事よりもカズサは大丈夫なのか?

担任に聞こうと立ち上がった時、腕を玲奈に掴まれる。

「どこに行くの?玲奈を置いていくの?良太お願いだから行かないで。玲奈の傍にいて。答えがでるまでは傍に居てくれる約束でしょ。」

大きな目に涙を一杯ため、オレを持つ手は震えていた。オレはそれを振り切る事が出来ずにまたイスに座りなおした。

オレ自分の気持ちがわからない…。


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~ Comment ~

 

恋の病は、お医者さまでも草津の湯(温泉)でも治せないものだといいますから、良太が来ないと回復しないでしょうねぇ・・・。

でも今はおじょ―サマにがんじがらめ。
本人も心身ともに身動きとれない。
どうしましょ??

オバサン、魔法使いになろうかしら?

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Re: タイトルなし 

ますみ様こんばんは☆

いつもいつもご訪問頂きましてほんとにありがとうございます♪

カズサはすっかり落ち込みモードです。後藤くんや横田くんも慰めにはなっているのですが、やっぱり良太に会いたいカズサ。なまじ一緒にいる嬉しさを知ってしまったので余計に寂しいのですね。

良太も良太で自分の気持ちもハッキリしないし、玲奈を突き放す事も出来なくて…。

ますみ様が魔法使いに?ステキ☆でもオバサンなんて言わないで下さい。お姉さまで…。

優しく見守ってくれるお姉さまに感謝です。いつもありがとうございます☆

Re: タイトルなし 

鍵コメM様、わざわざ教えて頂きましてありがとうございました。

文章って難しいですね。本をたくさん読めば身に付くものでもないし…。私はこれまでいろんな本を読んできましたが、言葉力のなさには泣きたくなります。上手な表現が出来ないんですよね。UPしてからああ書けばよかったって思う事がざらです。

でもみなさん読んで下さって…。優しいみなさんのおかげで細々と頑張れています。ありがとうございます☆

我慢の限界 

こんばんは!今日はワタシのサイトにも来てくださってありがとうございました!

カズサ、もう我慢の限界っっ!!(泣)救急車騒ぎにまでなってしまって…(T-T)玲奈、居る…こういう自己中の女子!ワタシも経験アリです…全く受け付けませんでした…(-_-;)
でも本当にイイ子は誰なのか、良く見ていれば分かりますからね!カズサもみんな分かってくれる日が近いことでしょう(^^)

後は良太がどう出るか?オノコよ、頑張るのよっっ!!

Rin様、リンクの件ですが、ワタシのサイトでよろしければお願い致します♪ワタシのサイトでも、Rin様の所とリンクしてもよろしいですか?自分の所でもリコメで書きましたが、こちらでも改めて書かせて頂きました!

また寄らせて頂きます!



Re: 我慢の限界 

waka様こんばんは☆

リンクの件ありがとうございました☆早速貼り付けちゃいました✿ฺ(pq◕ฺ∀◕ฺ*)キャ♬

私のリンクまで貼り付けてくださると(TωT)ウルウル 感激でございます(*´д`*)ハァハァ動悸が…。こちらこそღ(๑☻ܫ☻)㋵✿㋺✿㋛✿㋗✿㋧✿(☻ܫ☻๑)ღです☆

さてさてカズサ可哀想な事になってしまいました。1人でいるのは平気でも、好きな人と恋人がいちゃついてるのは堪えます。それも意地悪されてるから…。玲奈の世界は玲奈を中心に回ってますからね。良太がガツンといかないといけないのに、自分の気持ちがわからなくて動けないでいます。

カズサにはつらい状況だけど、母様もいるし、後藤と横田という味方がいるのでなんとか頑張って欲しい!!良太さえ、自分の気持ちに気が付けばいいんですけど、そこはノンケの男の子だから葛藤があります。もう少し見守ってやって下さいね。

waka様、コメ&リンク承諾ありがとうございました☆
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