キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に19

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気が付くと、白い天井が見えて、腕には点滴がされていた。服も病院の病衣に着せ替えられていた。

ここに至った原因を思い出し、フゥーと大きな息を吐く。胃の痛みは点滴のおかげか、それとも抗生剤でもうたれたのか収まっている。不快感は残ってるけど…。

でも教室で気持ち悪くなって、後藤くんと横田くんが心配そうに見てて、何か会話して保健室に運んでもらった気はするけど、その後ははっきり覚えていない。

「カズサ目が覚めたか?」

一瞬、良太の声に聞こえて嬉しくなって声の方を向いたけど、そこにいたのは後藤くんと横田くんで、2人には申し訳ないけど、少しがっかりしちゃった。ごめんなさい。

「なかなか目を覚まさないからオレ達不安だったんだぞ。」

「カズサ、すごく耐えてたんだな。十二指腸潰瘍らしいぞ。」

「カズサ、最近ちゃんと寝てるか?食事摂ってるか?」

「どうして?」

「先生が十二指腸潰瘍はピロリ菌なんかでかかる事が多いけど、睡眠不足や不安、イライラなんかのストレスでなる事もあるって言ってた。」

「最近のカズサ、顔色悪いし、メシ食ってるとこ見ないし。学校ではあれだろ。精神的にまいってるんじゃないかと思ったんだ。先生にも言ったぞ。カズサの承諾なしに悪いと思ったけど、病気治すためだから。」

「うん。ありがとう。後藤くん、横田くん。でもどうして2人がここに?」

「保健室出て教室戻ったら、救急車が来たからもしかしてカズサかと思って。保険医に無理いってきたんだ。」

「ごめん。どうしよう…。後藤くんと横田くんの立場が悪くなっちゃうよ。」

泣きそうなカズサの顔に2人は顔を見合わせてカズサの傍に座る。

「カズサは本当に優しいな。」

「気にする事ないぜ。オレ達はカズサの味方に付くってクラスで断言したから。」

「だ、だめだよ。そんな事したら後藤くんと横田くんが…。」

カズサの目からどんどん涙がこぼれてきて、後藤と横田はそんなカズサを抱きしめポンポンと頭を叩いたり背中をさすったりする。

「泣くなよ。カズサ。これはオレ達が決めた事だ。オレ達がこうしたいと思ったんだ。1人で頑張らなくてもいいんだぞ。」

小さな華奢な身体が震えていて、後藤も横田もそれをとめたくて優しくハグする。

「しばらくは入院になるけど、オレ達が毎日来てやるからな。授業のノートもカズサほどきれいには書けないだろうけどちゃんと取って来るから安心しろ。」

「て、えらそうに言ってるけど、後藤のノートなんて字が汚くて何書いてるかわかんないじゃん。」

「横田てめーそんな事言うか?」

「カズサのノートはオレがちゃんと書いてやるよ。カズサほど成績良くないけど、それなりの成績は取れてるからさ。後藤は後ろから数えるほうが早いけどな。」

「横田ーーーーっ!!」

「ふふふっ。2人とも仲良しなんだね。ありがとう。」

笑顔のカズサに2人は何も言えずに赤くなる。カズサのために何かしてやりたくなるのだ。

「そう言えばカズサの親は来ないのか?入院になってるのに。」

「ん。ボクは母子家庭だし、母さんは今はイギリスに単身赴任してるんだ。だからすぐには戻って来れないんだよ。心配かけたくないし。」

「じゃ、カズサは1人暮らしなのか?」

「うん。」

「だからメシとかいい加減なんだろ。1人でいろいろ考えて眠れないとかだろう。」

「そう…なんだ…。」

「オレ達カズサが1人暮らしなんて知らなかったからさ。」

「知ってるのは良太だけだよ。あと先生と。」

「知ってて良太は何もしてないんかよ。いくら玲奈がいるからって。」

「良太を怒らないで。良太はボクに本当によくしてくれたから。良太の事悪く言われるの嫌なんだ。」

「ごめん。考えもせずに言っちゃって。」

「後藤はほんとに考え無しで直球だからな。カズサ許してやってな。こいつこれでもいい奴だから。」

「これでもいい奴って何だよ。」

病室に笑いが起こる。和やかな時間にカズサは気分が落ち着くのを感じる。

「本当に後藤くんも横田くんもありがとう。」

「オレ達の事はいいんだよ。しかし良太も薄情だよな。いくら玲奈がいたって、それまでカズサと仲良くしといて来ないなんてな。」

その言葉にカズサの顔が悲しげに変わるのを2人は見た。カズサの中での良太は特別なんだと感じる。

「でもさ、良太だっていつまでもああはしてないだろ。オレ達見てて良太と玲奈は合ってないと思うぜ。前は良太の傍に玲奈がいたのが当たり前だったから、そう思いこんでたけどな。」

「そうそう。カズサと連れ立つようになってから、あいつ嬉しそうだったもんな。」

「オレ達が仲間に入れろって言うと絶対にダメだって入れてくんないんだぜ。」

「そうなの?全然知らなかった。」

「おうよ。だからカズサと遊びたがってる奴他にもいると思うぜ。」

「そうなら嬉しいな。ボクはみんなに好かれてる自信ないから。良太の傍にいるから相手してくれるんだと思ってた。」

「バッカだな。カズサ。カズサはカズサだからいいんだろ。」

「それ、良太にも言われた。カズサはカズサのままでいいって。」

「そうそう。それにこれからはオレ達とも遊んでくれよな。」

「ほんとに。いいの?」

「こっちこそお願いしますだ。特にテスト前の勉強みてくれーーー。」

「後藤は赤点だらけだからな。」

「うっせー。」

「ははは。いいよ。じゃテスト前は一緒に勉強しようね。」

「やりー。」

3人の会話はカズサの心を落ち着かせて行った。病気になったのは辛いけど、こうして気にしてくれる友達が出来たのが嬉しかった。良太が傍にいない寂しさを感じないわけではないが、それでもこの2人には救われる思いだ。

「あの、体調が戻ってるわけではないので面会を終わらせて頂けますか?検査もありますので。」

看護士に言われて後藤と横田は席を立つ。

「ごめんカズサしんどいのに長居して。又明日来るわ。大人しくしてろよ。」

「これ貸してやるよ。オレの好きな音楽だからカズサが気に入るかわからないけど、何もないよりいいだろ。」

横田がカズサにipodを貸してくれる。

「ありがとう。」

「オレ達の携番入ってるよな。いつでも電話でもメールでもしてこいよ。」

「ここは病室ですから携帯は使えません。」

看護士に一喝されて後藤と横田は首をすくめる。

「外でならいいですか?」

微笑みながらカズサに言われた看護士はさっきの表情はどこえやら優しくカズサを見る。

「ええ。外でならいいですよ。でも今は動いちゃダメですよ。先生が動いていいって言ってからにしてくださいね。」

「はい。ありがとうございます。」

「さ、面会は終りです。お引取り下さい。」

看護士に追いやられ病室をでる後藤と横田はカズサにニカッと笑って電話するとジェスチャーしてきた。

カズサはそれに笑顔でありがとうと口パクで答え手を振った。


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~ Comment ~

イイ奴らですね♪ 

Rin様、リンクしてくださってありがとうございます!

ワタシも遅れ馳せながら、Rin様のサイトをリンク致しました♪嬉しいです\(^-^)/

後藤クンと横田クンは、ホントイイ奴らですね♪男の友情!って感じで(^^)
このくらいの年齢の時って、女子の方が強いから…(口でなんて絶対勝てませんよね 汗)クラスで争うと居心地悪くなるし、長いものに巻かれるのも仕方なかったんでしょう。でも、おかしいことをおかしいってちゃんと言えて、なかなか骨のある二人!カズサにとっては良太が最高の存在ではあるけど、今の状況を考えるとこの二人の存在は夜道を照らす月明かりみたいでしょうね。

十二指腸潰瘍…カズサ、早く良くなってね~っっ!!


Re: イイ奴らですね♪ 

waka様こんばんは☆

こちらこそリンクして頂いてありがとうございます☆嬉しいですっ(♥ó㉨ò)(♥→㉨ฺ←)ウン

後藤くんと横田くん、そんなに登場させるつもりなくて最初は名無しでした(゚m゚*)プッでも、カズサが1人になるのは嫌だったので良太じゃなくてもいい友達をと思い、名前をつけました。ちなみに後藤くんは『後藤 忠司(ゴトウ タダシ)』横田くんは『横田 祥司(ヨコタ ショウジ)』と言います。使う事はないかも知れませんが(笑)

とてもいい奴らなので、良太の代わりにカズサを守ってくれるはずです。

カズサももうすぐ退院です。カズサ母との水入らずの生活がカズサを癒してくれるかな?でもイギリスにかえっちゃうからなあ…。それまでは甘えっこになりそうなカズサです。

waka様コメ&リンクありがとうございました☆
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