キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に20

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病院に入院して4日が経つ。検査ばかりの毎日。病室から出る事も許されず、個室なのでトイレも完備していて病室から出る事もなく、殆どをベッドの上で過ごしている。

でも寂しいばかりじゃないんだ。

だって毎日後藤くんや横田くんが来てくれるから。

2人で来れない時でも、必ずどちらかが顔を出してくれる。

ベッドの周りや棚の中は2人が退屈しないようにと持ってきた音楽CDやマンガ、PSPのゲーム、小説本、ありとあらゆるものがあって看護士さんに苦笑されている。

「いいお友達だわね。」なんて言われるとカズサも嬉しくて「はい」って大きな声で返事をしてしまうほどだ。

後藤くんは良太と同じバスケ部員だから部活があるはずなのに、適当にごまかしてサボっているらしい。横田くんは生徒会の仕事があるから時々しか来れないけど、来れない時は後藤くんにipodに新しい曲を入れて貸してくれる。

カズサは音楽なんて気にして聞いていた事がなかったので色々な音楽を聞いて楽しんでいる。

バンプ、ソナポケ、Superfry、イエモン、エレカシ、クリープハイプにJUJU、YUI、flumpool,ユニコーンなどカズサが聞いた事のない音楽を横田はチョイスしてくれていた。

「そう言えばさ。お前親に連絡しなくていいのか?」

「え?あああっ!!」

「何だよ急に。ビックリするだろ。」

「今日、母さん帰ってくるんだった。」

「マジかよ。早く電話しろって。」

後藤くんに言われて気が付くなんてなんて間が抜けてるんだ…。

「もしもし母さん?」

「カズサッ!!どういう事?どこにいるのよ。家の中ぐちゃぐちゃだし、何これ?」

「詳しい事は後で話すよ。ごめん母さん。今ボク入院してるんだ…。」

「にゅ、入院ですって!!何で早く言わないのっ!!」

「すぐに退院出来ると思ってたから。母さんに心配かけたくなかったんだよ。」

「で、どこ?どこの病院なの?今すぐに行くから。早く言いなさい。」

「青葉総合病院。」

「すぐ行くからっ!!」

「か、母さん?」

後藤くんを見ると肩をすくめていた。

「カズサが悪いよな。連絡してなかったのかよ。」

「うん。心配かけたくなかったんだ。」

「余計に心配かけてんじゃん。」

シュンとしたボクに横田くんが頭をヨシヨシしてくれる。

「カズサを責めるなよ。可哀想にな。カズサ、後藤のいう事なんか気にしなくていいからな。」

「横田くん…。」

「ちょーーーい待て。横田。そうやってカズサに触ろうとしてるだろ。」

「もちろん。カズサは可愛いからねえ。」

ドキドキする。後藤くんも横田くんも冗談だよね。ボクが男の人しか好きになれない事をわかって言ってるんじゃないよね。

「横田くん…。ボク女の子じゃないよ。男だよ。」

「わかってるさ。カズサは綺麗で可愛いけどちゃんと男だよ。当たり前だろ。」

「じゃあなんで触りたがるの?」

「ん?触りたいから。ぎゅって甘やかしたくなるんだよなあ。」

「横田くんは男の人が好きなの?」

「違うよ。オレ女の子大好きだもん。でもカズサは別だな。ここ数日一緒にいて守ってやりたいなって思ったんだよ。恋愛とかじゃないから安心して。」

「どうだか。あんだけ女に囲まれてたくせに最近はちっとも遊ばないでここにくるくせに。」

「まあ、実際今いる女の子よりもカズサの方がキレイし可愛いし、性格もいいな。」

「カズサ気をつけろよ。」

「う、うん。」

後藤くんも横田くんもどこまでが本気でどこからが冗談なのかわからないよ。

そこへドタドタと廊下を走る音がして「バンッ」と病室のドアが開いた。

「か、カズサッ!!大丈夫なのっ!!」

「母さん。ボクは大丈夫だよ。病院の廊下は走っちゃダメだよ。」

「もう、この子はっ!!」

気が付くと母さんの胸に抱きしめられていた。息も出来ないくらいに強く抱きしめられて、抱きしめている母さんの手が震えてて、すごく心配をかけちゃったんだなって思った。

「母さん苦しいよ。」

「あ、ごめんなさい。もうビックリさせるんだから。母さん、心臓が止まるかと思ったわよ。」

そこで初めて病室に後藤くんと横田くんがいるのに気が付いた様で、あわてて乱れた髪や服装を整えて挨拶する母さん。

「カズサのお友達ですか?カズサがいつもお世話になってます。」

「いいえ、オレ達の方がいろいろとよくしてもらってるんです。」

「2人ともボクの心配をして毎日来てくれてるんだ。退屈しないようにって音楽や本とか持って来てくれるんだよ。」

「そうなの。いいお友達ね。で、どっちが良太くん?」

何を言い出すんだとカズサは固まる。後藤も横田も良太の名前が出た事が予想外でビックリしていた。

「え?だってカズサ、良太くんと仲良くしてもらってるって電話で言ってたから。お見舞いにも来てくれてるもんだと思ってたんだもの。ごめんなさいね。勘違いして…。」

「いいえ、いいんです。オレは後藤と言います。」

「オレは横田です。」

「カズサは内気で自分からは積極的に動けないから、良太くん以外にもお友達が出来てたなんて、母さん嬉しいわ。後藤くんも横田くんもカズサの事お願いしますね。私が海外にいるものだからカズサには寂しい思いをさせてるのよ。」

「母さん、それはボクがここに残りたいって行ったからなんだから、そんな事言わないで。それにボクはここでの暮らしを楽しんでるよ。」

「そうだ、母さん主治医の先生に挨拶して来なくちゃ。」

「じゃ、オレ達もそろそろ失礼します。カズサ又明日来るからな。」

「うん。ありがとう。気をつけて帰ってね。」

1人になった病室で、夕焼け雲を見ながら思い出すのは良太の顔だった。みんながいる時は忘れてられる。なのに1人になると思い出すのは良太で…。

「良太に会いたい…。」

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