キミが思い出になる前に
キミが思い出になる前に21
入院して5日目。
食欲は相変わらずで余り食べないので母さんがボクの好きなものをお弁当で作って来てくれる。小さなお弁当に彩りよく飾り付けられたお弁当。食べる事が重荷にならないように小さいお弁当をいくつか持って来てくれる。
1度、後藤くんや横田くんがお弁当を食べている時に来て、ボクが食べ切れなくて残そうとしたのをきれいに平らげてしまったのを見た母さんは、すごく喜んで次の日から、ボクのだけじゃなくて、後藤くんや横田くんのお弁当まで作ってくるようになった。みんなで食べるとボクもいつもよりも食べるから、母さんは喜んでいるし、後藤くんは部活帰りでおなかが空いてるらしくとても喜んでいる。横田くんも両親が共働きで家庭料理に餓えてるんだと母さんの料理を喜んで食べている。
みんなが帰って夕方から夜になる頃はすごく寂しくて良太を思い出すのは変わらなくて。時折涙がこぼれたりするけど、いつかは忘れないといけない人だから…。
夜は相変わらず寝れなくて、先生にお願いして睡眠導入剤を処方してもらってるけど効かくて…。それもつらかった。夜が長いと考えることばかりで、良太に会いたくて会いたくて…。
「カズサ、ちゃんと寝れてる?ご飯は少しずつ食べれるようになって来てるけど、眠れてないんでしょ。」
「うん…。」
「良太くんの事ね。母さんにちゃんと話をしてくれるかな。嘘はダメよ。」
「うん。母さんとの約束だもの。ボクは良太とサヨナラするためにここに来たんだから…。」
母さんがボクを抱きしめてくれる。その温かい胸の中で今までの良太との事を話した。一緒に過ごした事、看病してもらった事、楽しかった事。そして玲奈の事。クラスでの自分の存在の事。
「人をすきになるって、嬉しい、楽しいだけじゃないわよね。でもカズサはカズサなりに一生懸命頑張ったのよね。」
「うん。頑張ったと思う。」
「それでカズサはどうしたいの?」
「ボクは良太の事がやっぱり大好きで、近くにいられなくても良太を見ていたいんだ。」
「良太くんの横には彼女が引っ付いてるのに?カズサは良太くんには近寄れないのにそれでもいいの?」
「そりゃ、苦しいよ。すごく嫉妬もしちゃうし、嫌な自分だと思うけど、良太を好きな気持ちが止められなくて…。どうせ終りが来る事はわかってるんだから、それまでは良太を見ていたい。ボクは我儘なのかな?バカなのかな?」
「カズサ…。」
母さんがポンポンと頭を叩く。
「わかったわ。カズサが納得するまで頑張りなさい。でも卒業までよ。もし、それまでに無理だと思ったら、いつでも母さんの所に来なさいね。母さんはいつでも待ってるから。」
「ありがとう母さん。」
「でもクラスで孤立させるなんて嫌な感じね。」
「いいんだよ。きっとそれだけ高田さんは良太の事が好きなんだ。高田さんはボクの良太に対する気持ちを知ってるから警戒してるんだよ。高田さんだって一生懸命なんだ。だからボクは平気。高田さんの気持ちもわかる。」
「カズサはほんとにお人よしね。」
「良太も女の子と付き合う方がいいんだよ。だから見てるだけでいいの。」
「母さんはいつでもカズサの味方だからね。心に溜めないで悲しくなったり、苦しくなったら言ってね。」
「うん。それに今はクラスで孤立してるって言っても後藤くんや横田くんがいるから。」
「そうね。あの子達はいい子だわ。カズサが退院したら家に呼んでご馳走しようか?」
「うん。きっと喜ぶと思うよ。部屋片付けなくちゃ。」
「もう綺麗にしたわよ。でね、これ見たいんじゃないかと思って持ってきたの。中は見てないわよ。」
母さんがカバンから出してきたのは転校する時にもらった寄せ書きと、思い出ノートとデジカメだった。
「うそっ!!どうして。これ見たかったんだ。夜が長くて寝れなくて…。母さんありがとう。」
「これ、カズサの宝物でしょ。カズサの事ならわかるわ。離れてから余計にわかるようになった気がするの。いつもカズサの事を考えるようになったからかしらね。」
ノートを見ながら母さんに良太との思い出を話す。もちろん全部話す事はしないけど、こんな事してくれたんだって話すのは楽しかった。その時の事まで思い出して、時間が戻ったような気がした。
「へえ、良太くんってそんな子なんだ。どんな顔してるのかなあ。母さんも会って見たいわ。」
「写真見る?」
ボクはデジカメの良太の写真を見せる。
「あら、イケメンじゃない。カズサってメンクイなんだ。」
「違うよ。そりゃ、良太はイケメンだけど、ボクはそこを好きになったんじゃないよ。良太の性格とか、太陽みたいなところとか、安心出来ると事とかが好きなの。」
「はいはい。わかってるわよ。」
たくさん良太の事を話してて少し疲れたみたいで…。いつも夜にあんまり眠れないから、母さんがいる事に安心して瞼が重くなる。
「かあ…さ…ねむい…」
「ゆっくりお休みなさいな。」
「傍に…いてくれ…る?」
「カズサがおきるまでちゃんといるから、安心して。」
母さんがボクの額にキスしてくれて、髪の毛をなでてくれる。温かくてボクは安心して眠りに付いた。
その後、良太が病室にお見舞いに来てくれた事は知る事もなく…。
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たとえこの世の終りが来ようとも

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