キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に23

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退院の日が決まった。良太と玲奈が一緒に居るところを見なくなったからか、毎日のように後藤くんや横田くんが来てくれて楽しませてくれるからかわからないけど、前に比べると心の揺れは小さくなってきたと思う。

母さんがいてくれる事も安心出来ているからかな。痛みも無くなってきたし、食欲も少しずつ戻ってきた。

数日前にいつの間にか花瓶に綺麗な花が活けてあって誰か来たのか聞いたら、良太が来てくれたんだと母さんが教えてくれた。

その時は複雑な気持ちだったな。「会いたかった」けど「会わなくてよかったんだ」って気持ちの狭間で揺れてた。

母さんは良太と話をしたと言ってたけど、その内容については教えてくれなかった。ただ、彼女がいるならちゃんと付き合いなさいって言ったって…。

母さんは流されてカズサといるようならカズサは幸せにはなれないから、ハッキリと言ったんだって…。勝手な事してごめんねって謝ってくれたけど、実際良太には女の子の方がいいに決まってる。良太はノンケだから何もこっちにこなくていいんだ。ボクが勝手に良太の事を好きなだけなんだから。

良太がちゃんと玲奈と付き合えば、玲奈だってボクの事を敵対視しなくなるだろう。そうすれば少しは良太と話す事とか遊ぶ事も出来るかもしれない。そんな事を思うボクは女々しいのかな?

そりゃ、良太がボクの事を好きになってくれたらって思うけど、それはないに等しい事だから、期待はしない。友達でいられるだけで十分なんだから…。

「カズサ、もうこのお花捨てちゃうわよ。枯れちゃってるもの…。捨てたくないでしょうけど…。」

「うん。いいよ。母さん捨てて。いつまでも咲いてるわけじゃないんだよね。花も…。いつかは終りがくるんだ。」

「カズサ…。退院したらカズサの好きなもの作ってあげるわね。そうだ、後藤くんや横田くんも誘う?大勢の方が楽しいでしょ?」

「うん。後藤くんと横田くんが来てくれたら嬉しいな。」

「2人に何が食べたいか聞いておいてね。それじゃ、母さん家に戻るわね。洗濯物取り入れなくちゃ。」

「うん。ありがとう母さん。ねえ、母さんはいつまでこっちにいられるの?」

「ほんとならカズサがちゃんと治るまで居たいんだけど…。」

「ボクなら大丈夫だよ。母さん大きなプロジェクトに参加してるって言ってたもんね。頑張って欲しいよ。ボクのせいで抜けなくちゃならなくなったら責任感じちゃうから。」

「ありがとうカズサ。出来るだけ又こっちに戻れるように調節するわ。あと2日ほどしか居れないの。ごめんね。」

「いいよ。ほんとは4日だけって言ってたのにもう1週間以上居てくれてるんだもの。ほんとに仕事大丈夫なの?」

「大丈夫よ。出来る事はこっちでしてパソコンで送信してるから。便利になったわよね。違う国にいても仕事が出来るんだもの。」

「そうだね。母さん、そろそろ帰らないと日が暮れちゃうよ。」

「あら。ほんと。じゃあ、また来るわね。」

「明日、退院なの忘れないでね。」

「はいはい。後藤くんと横田くんに食べたいもの聞いたらメールしてね。」

母さんがバタバタと帰るころには夕焼け雲が輝いていた。

「明日は退院か。学校…。考えても仕方ないか。大丈夫、ちゃんとやれるよ。」

「何が大丈夫なんだ?」

「あ、後藤くん来てくれたの?」

「当たり前だろ。横田も後から来るってさ。」

「毎日ほんとにごめんね。」

「謝るなって。オレ達が好きで来てるんだから。それより明日退院だって?」

「うん。お昼に退院する。あ、母さんが退院祝いをしようって言ってて、もしよかったら後藤くんも横田くんも来ないかなって言ってたんだけど、どうかな?予定があったら無理しなくていいから。」

「何いってんだよ。もちろんオレは行くよ。カズサの家に行くなんて楽しみだぜ。」

「楽しみって…。別に何もないよ。普通の家だよ。」

「わかってるけど、何かワクワクすんだよ。横田は来なくてもいいんじゃねー?」

「何の相談だ後藤。オレが何だって?」

「ぅわっ。お前は忍者か。気配殺すなよ。」

「何言ってんだか。お前の声が大きすぎて気が付かなかっただけだろうが。バーカ。」

「横田。バカとはなんだバカって言うな。」

「ははっ。ほんとに2人は仲良しだね。羨ましいよ。」

「別に仲良くねーよ。腐れ縁だって。」

「カズサももうオレ達の友達だろ。」

「ありがとう。横田くんもボクの退院祝いに来てくれる?」

「もちろん行く。」

「何が食べたい?母さんが食べたい物作ってくれるって。」

「マジ?えっと、から揚げだろ、ハンバーグもいいよな。ラザニアとか…。酢豚とか、春巻き、チャーハンに、オムライス、散らし寿司もいいよなあ。カレーとか、お好み焼きに焼きそばだろ、うーーーん…。」

「おい後藤、言ってるもんめちゃくちゃだぞ。どんだけ食う気だ。」

「うるせーな。食べたいんだからしょうがねーだろ。」

「横田くんは何かないの?」

「ラフティ食いたい。」

「なんで沖縄なんだ?オレ時々お前がわからんわ。」

楽しい会話が心を解してくれる。

母さんには一応2人の食べたい物をメールしたけど、かなり悩んでるようだった。

次の日、先生や看護士さんに挨拶して母さんと家に戻る。

何もする気が起きなくて荒れ果ててた部屋は母さんがすっかり綺麗にしてくれていた。

「ついでに模様替えもしといたわよ。カーテンとかシーツとか明るい色にしたわ。暗い色は気持ちまで暗くしそうなんだもの。とくにカズサは落ち込みやさんだから。」

「もうなんだよ落ち込みやさんって。でもありがとう。ほんとに明るくて気持ちがいいよ。」

「さ、カズサは寝てて頂戴。退院したって言っても少し自宅療養しなくちゃね。体力も落ちてるだろうし。」

「うん。少し疲れたから寝てる。」

「後藤くんと横田くんは何時ごろに来るの?」

「学校終わって一回家に帰るっていってたから6時くらいかな。」

「じゃ、それまでに母さんは料理をしとくわね。5時頃にカズサを起こして上げるからそれまで横になってなさいね。」

「うん。じゃ、母さんお願いね。」

ボクは病院の荷物を片付ける。手に取ったのは良太との思い出ノート。

「お見舞いに来てくれた事、お花くれた事を書いておかなくちゃな。」

もう余り増える事のない良太との思い出…。それでも一つでも増えますようにと祈りを込めて書き込む。

せめてこのノートが一杯になればいいのにな…。

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Re: タイトルなし 

鍵コメC様こんばんは☆

カズサママはカズサの事がとっても大事。カズサが男の子しか好きになれないのを知ってるからこそ。カズサを守れる人間でないと認めないんです。今の良太にはカズサを守れないのがハッキリわかるから、ノンケだから今なら普通の恋愛が出来るからこそ、キッパリと言います。それでもカズサを選んでくれるならカズサママは反対しないと思う。良太にちゃんと考えさせるための言葉だと…。母の愛です。

カズサはそんな母の気持ちがわかるからこそ、母が自分のため、良太のためを思って言ってくれた事だから何も言いません。

後藤と横田とカズサの友情って言ってもらえて嬉しいです。書いてて恋愛感情っぽい?とか思ってたので…。2人はカズサが大好きなだけで、恋愛感情ではないんです。可愛い弟みたいな感覚かな?可愛くて仕方がないんですよ。2人ともいい奴ですから、カズサをちゃんと守ってくれます。

鍵コメC様コメありがとうございました☆

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