キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に24

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後藤くんと横田くんが来るまで自分の部屋でゆっくりと過ごす。思い出ノートや写真を見ているうちにウトウトしてたみたいで、母さんの声で目が覚めた。

「カズサもうすぐ5時になるわよ。起きるの?」

「ん。お風呂入る。」

病院ではゆっくりと湯船に浸かれなかったし、自分の家のお風呂じゃないから落ち着いて入れなかったんだ。

たっぷりとお湯を溜めて入る。やっぱり自分の家のお風呂がゆったり出来る。入浴剤を入れれるのも家ならではだよね。

ゆっくりとお風呂を楽しんで出てくると、リビングにはテーブルの上に並べ切れないほどの料理が並んでいた。

「母さんすごい頑張ったね。」

「今まで作った中で一番頑張ったと思うわ。」

「でもこの量すごすぎない?」

「やっぱりカズサもそう思う?」

「後藤くんと横田くんのリクエストに出来るだけ答えようとしたらこうなっちゃった。」

「母さんてば…。」

そこにチャイムが鳴って後藤くんと横田くんがやって来た。

「「こんにちは。お邪魔します」」

「どうぞ。中に入って。」

「後藤くん、横田くんいらっしゃい。来てくれてありがとう。」

「カズサ、退院おめでとう。」

「これ月並みな花で悪いけど…。」

「まあ、気にしなくてよかったのに…。きれいなコスモスね。早速飾るわね。」

「うわーーーっ!!すっげーごちそうだーーーっ!!」

「後藤落ち着け。」

「ははは。どうぞ。好きなところに座って。」

「後藤くんと横田くんのお口に合うといいんだけど…。遠慮なく食べてね。カズサはあんまり食べてくれないから。」

「じゃあ、遠慮なく頂きます。」

「これじゃ、カズサの退院祝いじゃなくてメシ食いに来たみたいだな後藤は…。」

「後藤くんらしくていいよ。たくさん食べて。横田くんも。ちゃんと母さんラフティ作ってくれてるよ。」

「うそ、マジで。嬉しいなあ。じゃ頂きます。」

ボクも母さんも2人の食べっぷりのよさに見ほれていた。

「やっぱり男の子はこれくらい食べてくれなくちゃね。見てて気持ちいいわ。それに比べてカズサは…。」

「母さん、後藤くんや横田くんみたいには無理だよ。この2人は特別。特に後藤くんはバスケしてるからたくさん食べなくちゃ身体が作れないからだよ。」

「まあ、カズサは男にしちゃ小食かもしれないな。」

「1人暮らしなんだから、1人でもちゃんと栄養考えて食べなくちゃダメだぞ。」

「うん。わかってる。前はよく良太が来て食べてたからそれなりに栄養も考えて作ってたんだけど…。」

「カズサ料理出来るの?」

「難しいのは作れないけど、それなりに出来るよ。」

「カズサは料理が上手なの。私が仕事してて作れなかったからカズサが作ってくれてたのよね。」

「料理が出来るなんてカズサすごいよ。今度、ご馳走してくれ。」

「後藤、あつかましいぞ。」

「だって、良太も来なくなったら、カズサちゃんと食わなくなるかもしれないだろ。だから代わりにオレが来て食べてやるんだよ。」

もう、良太とご飯を食べる事はないのかなって思うと少し悲しくなった。

「カズサが落ち込んじゃっただろ。後藤と2人でご飯なんてやだよな。オレと食べようぜ。オレも少しなら作れるから二人で作って食べような。」

「ちょーーいまちっ!!オレも仲間に入れてくれ。オレは料理は作れないけど、片付けなら出来る。」

「ふふっ。後藤くんと横田くんがいてくれたら安心ね。これからもカズサを宜しくね。私はまたイギリスに帰らなくちゃいけないから、たまにはここに泊りにきてくれてもいいのよ。カズサも1人じゃ寂しいだろうし。」

「イギリスなんですか?じゃ、英語なんてペラペラ?」

「それなりにはしゃべれるわよ。じゃないと仕事出来ないもの。」

「すげー。オレ英語ダメなんですよ。」

「お前は英語だけじゃないだろうが。」

「うっせー。横田だって英語はギリじゃんか。」

「そうなんだよなあ。英語はどうも教科書とそりが合わないんだよなあ。洋楽は好きなのになあ。」

「カズサに教えてもらえば?」

「カズサしゃべれるのか?」

「カズサもいずれはイギリスに連れて行くつもりで、中学生の頃からネイティブの先生についてたから。」

「マジかカズサ。すげーじゃん。」

「テスト前教えてくれるか?」

「ボクでいいなら。役に立てるかわかんないけど…。」

「よし、テスト前はカズサの家に泊り込みで合宿だ。」

「後藤の場合はテスト勉強なんだか遊びになんだかわからないな。」

「1人でやったって楽しくねーじゃん。みんなでやろうぜ。」

「ボクはいいよ。」

「みんなごめんなさい。私少し仕事があるから奥の部屋に行くわね。もう少しカズサの相手してやってね。」

「「はい。」」

母さんが奥の部屋に行ってからも楽しい話は続く。

ボクの休んでいる間に合った出来事や、今度の修学旅行の話とか話題がつきない。

「そういえば、カズサ良太に今日退院する事言わなかったの?」

「え?うん。言ってないよ。後藤くんと横田くんだけ。」

「そうなんだ。オレはてっきり教えてるんだとばかり思ってたから、良太が知らなかったって少しショックだったみたいだからさ、悪い事しちゃったかなあって思ってさ。」

「あんまりボクが良太といると高田さんが気を悪くするから…。」

「そんなん関係ないじゃん。男同士の中に入ってくる玲奈が悪いんじゃねー。なんであんなにカズサの事を目の敵にするのかわかんねーわ。」

「良太をカズサに取られるとでも思ってるんじゃないの?」

「横田くん、それはないと思うよ。ボク男だもん。」

内心ドキドキしてた。ボクが良太を好きな事に気付かれたんじゃないかって思って…。

「カズサはそこいらの女よりも綺麗だからな。こんなこと言ったらカズサの気を悪くするかもしれないけど、カズサが転校して来た時、男の中でもカズサの事、いいなって思った奴案外いたんだぜ。今もそうなんじゃないか?玲奈の事があるから何も言わないだけでさ。」

「ボク男なのに?ボクを好きになってくれる人なんているのかなあ?」

「カズサそれマジで言ってんの?カズサがいい奴な事はみんなわかってるさ。カズサを嫌う人間の方が少ないんじゃないか?」

「そうだぜ。オレ達もカズサの事は好きだぜ。」

「ありがとう。」

「カズサいつから学校に来るんだ?」

「今週は休みなさいって言われてるから、来週から行くよ。」

「そっか。じゃ、朝オレ迎えに来てやるよ。」

「そんな後藤くんに悪いよ。」

「てか、後藤は遅刻の常習犯だろ。後藤待ってたらカズサが遅刻しちゃうだろ。オレが迎えに来てやるよ。通り道だし。」

「横田くんありがとう。」

「横田、てめえオレの株を下げるような事ばっかり言いやがって。オレも迎えに来るからな。」

「後藤くんもありがとう。じゃ3人で行こうね。」

にこっと笑うカズサの顔に嬉しくなる後藤と横田。この笑顔を守ってやりたいと心の中で思う。

結局この日は2人ともカズサの家に泊る事となった。

カズサの寝室に布団を引いて3人で眠る。後藤は合宿のようだとはしゃぎ、横田にたしなめられる。明日は日曜だからゆっくり出来る。

母さんがイギリスに帰国しなくちゃならなくなって、1人で見送るつもりだったけど、2人も付いて来てくれる事になった。帰りが1人じゃない事が寂しさを紛らわせてくれる。おまけに日曜も泊ってくれて月曜日は3人で登校することになった。

「良太の傍に居れない寂しさはあるけど、2人がその隙間を埋めてくれてるな。母さんも安心してくれたみたいだし…。でも2人は良太にはなれない…。」

少しの寂しさを抱えて過ごす。いつか寂しさが溢れてしまわないかと不安が首をもたげる。

「諦めなくちゃ、どうしても諦めなくちゃいけないんだ。」

何度も繰り返して心の中で思う言葉。その度に心の中が悲鳴をあげるようになっていた。


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~ Comment ~

 

恋は止められないものね、カズサ。

でも、思い出ノートとデジカメはちゃんと管理しておかないと。後藤くんたち、漁って見つけてしまいそうだ・・・・。

お母さんがイギリスに帰ってまた一人になったカズサ。
月曜日にクラスはどうなっているのかしら?


昨日は久しぶりに晴れて洗濯日和でしたが、今日は再び雨。
冬が近づいてます。
そちらはいかがですか?

Re: タイトルなし 

ますみ様こんばんは☆

カズサは苦しんでるんです。自分の中の矛盾に…。叶わないと、諦めないといけないと思う気持ちと良太の傍にいたい、良太と結ばれたいと思う気持ち。諦めないとという気持ちが強いのに、良太の事を好きだと言う気持ちが強くて…。心が分離しそうなカズサなのです。

思い出ノートとデジカメね。後藤くん達は勝手には漁らないだろうけど、いつ目にするかわからないですもんね。カズサその辺わかってるのかなあ?ずっと1人で暮らしてるから、そういうトコ気が付かなさそうですもんね(^-^✿) (_ _✿)(^-^✿) (_ _✿)うんうん

クラスの状態はどうなんでしょう?取り合えず後藤くんと横田くんが席も近いのでカズサは心強いようですよ。

乙女心と秋の空でしたっけ?今年の秋は雨が多くて嫌です。紅葉を見に京都にも行けません(TωT)ウルウル
今日は雨がひどくて車の運転が大変でした。夕方まで仕事でヘロヘロ…。雨のせいでこっちも寒かったです。

ますみ様もお風邪など召されません様に御身体ご自愛下さいませ☆コメありがとうございました☆
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