キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に26

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校門をくぐったところで後藤くんと横田くんと別れる。

担任の先生に病気で休んだ事の報告と、進路について話をしなくちゃいけなくて、ボクは職員室へと向かった。

来年は日本では受験しない事をもう一度きちんと伝えて置くように母さんからも言われていた。その約束で日本に残してもらったんだ。

今回、1人で倒れて入院していた事を後から知った母さんは離れているのが心配でたまらないと泣いた。その時の母さんはいつもよりも小さく見えて…。いつも大きく、明るく見える母さんだけど、母さんも1人でしんどいんだろうなって、異国の地で1人頑張っている母さんを想像して思ったんだ。

だからボクは約束通りに卒業したら母さんの所に行くって決めた。

良太とのことで逃げてるんじゃないかと言われれば否定は出来ない。でもどうしようもないから。ボクの片思い。それも同性だから、知られたらダメなんだ。気持ち悪いなんて思われたら、友達でもなくなってしまう。

「あっ。」

職員室に向かう廊下で前を歩いていた女の子が持ってた荷物を盛大に落としてしまった。ゴロゴロと落ちる荷物。ボクは端に転がった物から拾い集めてその子に手渡した。

「はい。大丈夫?これで全部だと思うよ。」

「あ、ありがとう。」

その子にニコッて笑い掛けてボクは職員室に向かった。

「さっきの人誰?」

「A組の星野くんじゃないかな?」

「星野くんってさ、A組で何か言われてるよね。」

「あー。紀子が言ってた。何か上村くんと高田さんとの邪魔をしてる嫌な奴だとか何とか…。同性が好きなんだとか・・・。」

「ほんとにそうなのかな?」

「だよね。優しい笑顔だったよ。うーーん。」

「うん。嫌な人って感じしないよね。」

「でも同性が好きなんて気持ち悪くない?」

「誰を好きになってもその人の勝手じゃないの?その人の事をあれこれ他人が言えるのかな?」

「わからないね。でも私はあの人の事を同性が好きだからって否定は出来ないな」

廊下でそんな会話をされてる事なんて知らずに、先生と話を終えたボクは教室に戻った。

久し振りの教室は、休む前と変わらなかった。

「おはよう。」

誰に言うとでもなくボクは挨拶をして席に座る。

いつもならここでカバンから文庫本を取り出して読み始めるんだけど…。

「おお、カズサ遅かったな。」

「ちゃんと話してきたのか?」

後藤くんと横田くんが話掛けて来てくれる。席が近いから嬉しい。

「うん。ちゃんと話して来た。」

ニコッと笑いかけると二人も笑顔を向けてくれる。

「ヨシヨシ。今日の昼は学食でランチ奢ってやる。」

後藤くんがボクの頭をワシワシとなでながら言ってくれる。

「後藤やめろ。カズサの綺麗な髪の毛が乱れるだろ。」

横田くんは後藤くんの手を払いのけるとボクの髪の毛を綺麗に整えてくれた。

「すごーーいっ。見た?」

「見た見た。良太くんの次は後藤と横田だって!!」

「誰でもいいんだ。綺麗な顔してやることすごいよね。」

「ほんと。良太くん玲奈のおかげで酷い目に合わなくて良かったよね。」

これ見よがしに女の子の声が聞こえてボクはビクッと固まった。女の子達の間ではボクは同性が好きなんだと決め付けられたようだ。

ほんとの事だけど、誰に言ったわけでのないのに…。直球で言われるとかなり堪える。ここに良太が居ない事が救いかな。

ぎゅっと手を握り締めて俯く。

ボクと居る事で後藤くんや横田くんまで同じように言われてしまう。

後向いてた身体を正面に向け、後藤くんと横田くんから背を向けると、ボクはカバンの中から文庫本を取り出した。

「てめーらブスがカズサの事をそんな風に言う権利はねー。黙りやがれ!!」

「オレも後藤と同じだな。カズサがお前らより綺麗だからって当たるのやめろよな。みっともないぜ。良太と玲奈の事にかまけてカズサを攻撃して本当にお前ら醜い。カズサに清めてもらえ。」

「ちょっと、後藤も横田もカズサくんに騙されてるのわかんないの?」

「カズサは人を騙したりしません!!お前らとは違うってんだろっ!!」

「ほら、もう騙されてる。カズサくんは男が好きなのよ。わかる?ホモ!!ゲイ!!なのっ。あーー気持ち悪っ!!」

ドクンッて身体が震えた。

確かにそうだ。ボクは自分の性癖を後藤くんと横田くんに隠してる。これを知っても今と変わらずに居てくれるかって言えば否だろう。

「カズサくんってゲイなんだ。」

顔を上げると楽しそうな顔をした玲奈と、ムスッとした顔の良太が教室の入り口に立っていた。

良太にも聞かれた。

ボクの事が気持ち悪くてあんな顔してるんだ。もうここには居られないよ…。 ボクはカバンを持って立とうとした。こんな中で1人で平気でいられるほどボクは強くない。

「てめーらなあ、さっきから聞いてるとカズサばっかいじめやがって。いい加減にしないと女でも許さないぞ。」

「だな。カズサがたとえゲイだったとしてもお前らみたいな女よりずっといいね。オレはお前らとカズサならカズサを選ぶ。」

「オレもだ。これ以上カズサに何か言って見ろ。オレと横田が許さねーからな。」

後藤くんがボクの前に立って女の子達から庇ってくれて、横田くんはボクをあろう事か抱きしめてくれていた。

「横田くん。これはさすがにヤバイと思うけど…。」

「何で?いいだろ。オレがそうしたいと思ったんだから。カズサ迷惑?」

「迷惑とかそんなんじゃなくて、横田くんゲイだと思われるよ。」

「んーーーー。カズサならありかな?」

「あああああっ!!横田、てめー何してるんだよっ。シッシッ!!カズサに触んな。抱きつくなっ!!」

今度は横田くんをベリッと剥して後藤くんがボクを抱きしめる。

「ちょ、後藤くんっ!!」

「何?カズサ。横田はよくてオレはダメなの?」

「だから、そう言う問題じゃなくて…。」

「まっ、そういう事で。オレ達3人こういう事だから。これ以上オレ達のカズサに何かしたらぶっ殺すからな!!」

「ぶっ殺すは言いすぎだけど、ほんとにこれ以上カズサを傷付けたらオレ達何するかわからないから。男とか女関係ないから覚えておいて。」

教室の中はシーンと静まり返っていた。ボクは2人に抱きしめられてカバンを持ったまま身動きも出来ずにいたんだ。

「さて、こんな雰囲気じゃ落ち着かないよな。カズサ久し振りの学校だったのに。」

「そうだな。これで又病気がぶり返したら大変だから早退すっか。」

「え?ダメだよ。後藤くんも横田くんもちゃんと授業受けなくちゃ。ボクなら大丈夫だって。」

「ほんとか?」

「うん。学校終わったら病院に行くつもりだし。」

「そう?でもこの雰囲気だぜ?1限だけふけようか。」

「いつもなら賛成しないけど、今日は後藤に賛成する。」

「て、ことでオレ達抜けるから後ヨロシク。行こうぜ。」

2人に肩を抱かれて教室を出る時に良太と目が合った。少し怒りを含んだ色に怖くなる。

良太はボクの事を怒ってる。友達だと思ってたのに騙されたって思ってるのかな。

良太はその後、後藤くんと横田くんも見てたけど、2人と目が合ったのかどうかはわからない。そのままボク達は屋上へと移動した。



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~ Comment ~

 

やっぱり~~~。
カズサ的には成りゆきの’カムアウト’いいやら悪いやら・・・、だね。
自分の知らない所でいろんな話が独り歩きする気配もあるし(他人ごとながら、むむ)。


そうそう。特に中高生って、『世の中の汚いもの、全部許せない!』時期で、排他的だし。。
そのくせ『世界平和よりラブラブ命!』。
これで礼奈ちゃんがパワーアップ??


そう言えばこちらも山間部では雪が降りました。冬だ・・・・。




Re: タイトルなし 

ますみ様こんばんは☆

寒くなりました。お風邪など召されてませんか?
雪が降る季節になってきたんですね。

CHRISTMASというイベ(私には関係ないけど…さみし(TωT))も近づいておりますね。自分にご褒美でボーナス払いでめちゃかわいいコートを購入。妹に年を考えろと言われちゃいました(笑)

さてカズサは成り行きカムアでも、まだカズサは何も言ってないんですけどね(苦笑)

中高生というか思春期はねえ。汚いもの、お父さんもそうですよね。嫌いでしたね。さすがにお父さんのパンツと一緒に洗わないでとは言わなかったけど…。てか、未だに父とはあまり口を聞きません。未だに思春期な私。元彼と別れる時に最後に話したのが父で、わけわからないくせに勝手に別れる事を承知した経緯があって嫌いです。あ、こんな事書いていいのか?読んで気を悪くさせたらごめんなさいです。

ますみ様コメありがとうございました☆
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