キミが思い出になる前に

キミが思い出になる前に27

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屋上に向かうまでボクは考えていた。

教室でボクをあんなに庇ってくれた後藤くんや横田くんにずっと隠し事が出来るのかと。ボクが同姓しか好きになれない事を黙ったまま、仲良く出来るのか?それって2人を騙してる事になるんじゃないかって…。

ボクの病気の事が縁で仲良くしてくれてる。話をした事はあったけど、こんなに仲良くしてたわけじゃない。こんな事言わなくてもいい事なのかもしれないとはずっと思ってたんだ。だけど、朝の事で2人がどんなにボクを大事に思っていてくれるかわかってしまった。

女の子達の言った『ゲイ』という事を2人は本気では捉えていないと思う。だから庇ってくれたのかもしれない。それならボクが正直に打ち明けたら、ボクの事を蔑む。それも考えたんだ。だけど、蔑まれても騙してるという事よりはいいと思った。たとえ卒業まで1人で過ごす事になったとしてもだ。

屋上のドアを開けたら風が吹き付けてきたけど、それは一瞬の事で、今日は陽だまりがぽかぽかと暖かい。

「カズサこっちに来いよ。」

「うん。」

ボクは覚悟を決めて2人の所に行った。

「ほらカズサの分。」

横田くんが温かいココアを渡してくれる。

「え?いつの間に買ってたの?」

「カズサがずっと下向いてる間に買って来た。気が付かなかったんだ?」

「オレが話し掛けてもずっと考えてるみたいだったもんな。まあ、あんな風に言われたらそうなるわな。」

「ほんとに女って何で集団になるとあんなんなんだろうな。」

「ブスのひがみだ。カズサ気にすんな。」

ボクは缶のココアをぎゅっと握り締める。

「2人に黙ってた事があるんだ…。」

缶コーヒーを飲んでいた2人の視線がボクに向く。

「何だ?」

「……。」

言おうと思ってもなかなか言えなくて…。

横田くんがボクの握り締めていたココアを取るとプルトップを開けてくれる。

「冷めちゃうぞ。はい。」

ココアを一口飲む。

「あったかい。」

「当たり前だ。後藤とオレの気持ちが詰まってるからな。」

後藤くんがそうだと言うようにボクを優しく見てくれる。

もう一口ココアを飲んで大きく息を吐き出す。

「あのね。今まで2人には言わなかったけど女の子達の言った事は本当なんだ。」

「ん?カズサがゲイだとか言ってた事か?」

「そう。ボクは同性しか好きになれないんだ。気持ち悪いよね。」

シーンと静まり返る。聞かされるほうも聞きたくない事だろうなと思う。やっぱり2人も気持ち悪いと思うよね。それが当たり前の事なんだから…。

「ボクの事今まで気にしていてくれてありがとう。ボクは1人でも大丈夫だから…。騙してたみたいでごめんね。後藤くんと横田くんといるのが楽しくて言えなかったんだ。ごめん。」

「知ってたよ。」

横田くんの優しい声色が聞こえてビックリして2人を見る。

「ああ。知ってたっつうか、わかってたっつうかな。カズサ、良太の事好きなんじゃないの?」

「え?…どうして…。」

「やっぱりそうか。カズサは隠してたつもりなんだろうけど、良太といる時のカズサの顔かな。他の奴らは気が付いてないかもしれないと思うけどな。」

「ああ。良太といる時はいっつも嬉しそうな顔してたもんな。」

「ボクが良太の事を好きってわかってて、男の人が好きなんだってわかって気持ち悪くないの?」

「んーーー。何でだろうな。そんな風に思わないんだよ。」

「最初はなんーーーって感じだったけど、ここずっとカズサといるだろ。カズサがいい奴なのはわかったし、それを同性が好きだからってだけで気持ち悪いとか思うってどうなんだ?」

「それにオレ達好きなんだ。笑ってるカズサがさ。だからオレ達がカズサの事守ってやるよ。友達としてな。」

「このまま友達でいてくれるの?」

「カズサのお母さんにもヨロシクって頼まれてるしな。」

「あーあ。泣くなよカズサ。お前に泣かれると弱いンだって。」

優しい二人の言葉に涙がどんどん溢れてくる。あわてて涙を拭いてくれる後藤くんと頭をポンポンしてくれる横田くんにあったかくなる。

ボクが良太の事を好きな事も否定しないで見ていてくれる。そんな存在は母さんだけだったから、傍に強い味方がいてくれるようで嬉しい。

「あーあ。せっかくあったかいココア買って来たのに冷めちゃったな。」

「あんまり外にいるとせっかく治ったカズサの体調が悪くなっちゃうな。そろそろ戻ろうか。」

「だな。ちょうど授業も終ったしな。カズサ大丈夫か?」

「うん。顔洗って行かないとね。」

「ハンカチ持ってるか?」

「持ってないって言ったら貸してやれるのか?」

「あ、いや持ってないけど…。」

「じゃ聞くなよ。オレの貸してやろうか?」

「ありがとう横田くん。ボク持ってるから大丈夫だよ。後藤くんもありがとう。」

「いいんだって。じゃ行くか。」

3人で教室へと戻る。

朝の雰囲気を思い出してちょっと怖かった。そんなボクの気持ちをわかってくれてか2人が大丈夫だって言ってくれた。すごい味方が出来たようでボクはちょっとだけ強くなれた気がした。


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