「キミと空とネコと」
雪が降る街
雪が降る街4
次の日はアキに起こされて目が覚めた。
案の定、右手は筋肉痛で…。
痛みを堪えながら朝の支度をしてリビングに行くと、涼しい顔をした社長が、コーヒーを飲みながら経済新聞を読んでいた。
「ユウも飲む?」
「甘いカフェオレにしてくれる?」
「いいよ。朝ご飯は?」
「いらない。社長とアキはもう食べたの?」
「当たり前だ。何時だと思ってるんだ?もうすぐ会社に行く時間だぞ。」
「ええっ。もうそんな時間?」
「ね、だから聖夜に送ってもらえって言ったのわかるでしょ。今の時間じゃユウの家からじゃ遅刻だよ。」
「いつもは雪夜に起こしてもらってるんだろ。」
「何でわかるんですか社長。」
「「やっぱり…。」」
「2人してハモらないでくださいよ。」
アキがぬるめに入れてくれたカフェオレをのんでネクタイを締めなおす。
「水野くん用意出来たか?そろそろ行くぞ。」
「はい。社長。じゃ、アキ行って来るね。」
「行ってらっしゃい。帰りは聖夜に送ってもらってね。キッチン勝手に使っていいから。」
「ありがとう。」
「じゃ、アキ行って来る。」
「聖夜行ってらっしゃい。」
2人はボクが傍にいるのに甘いキスをするんだ。
アキの蕩けるような顔。
社長の嬉しそうな顔。
今のボクには羨ましくて眩しいよ。
会社の近くまで送ってもらってそこからは歩いて会社に行った。
仕事をこなし、昼休みに雪夜さんに電話する。今日もアキのところでオムライスの練習だもの。
時間を見ると13時。今なら病院も昼休憩に入ってるかな?
雪夜さんに電話をかけるとすぐに本人に繋がった。
「雪夜さん今大丈夫?」
「ああ。もう休憩してるから大丈夫だよ。どうしたの?」
「あのね、今日もアキのところに泊ってもいいかな?」
「もちろんいいよ。ボクも人と会う約束があって帰るのが遅くなりそうだから、ユウにご飯作ってやれないし。」
2日も泊るのに雪夜さんは何とも思わないんだ。
「2日も家に帰らないのにいいの?」
「どうして?いいに決まってる。アキくんの所だろ。」
ボクに会えなくても平気なんだ。
「そうだけど…。2日も会ってないから…。」
「変なユウだな。いつも一緒にいるんだから2日くらい離れても大丈夫だよ。」
「雪夜さんは平気なんだね。人と会うってボクの知ってる人?」
こんな事聞きたいわけじゃない。ボクは嫌な奴になってる。
「ううん。何でもない。じゃ、ボク休憩終るから電話切るね。」
「おいっ。ユウ…。」
雪夜さんが何か言いかけてたけど電話を切っちゃった。誰と会うのか何となくわかったから。きっとあの女の人だ。
ボクは携帯の電源を落として仕事に戻った。今は何も考えたくない。知りたくない。
その日は社長が「帰るぞ」って声を掛けて来るまで仕事に打ち込んだ。
「水野くん買い物して帰るんだろ。」
「え、ああ。そうですね。スーパーで材料を買って来ないと。」
「じゃ、帰りに寄って行こう。」
社長の運転でスーパーに寄って材料を買う。
「今日は上手く出来たらいいな。水野くん。」
「そうですね。雪夜さんの誕生日明後日ですから、何とかしたいです。」
「水野くんが一生懸命に作ってくれるだけで雪夜は嬉しいと思うよ。」
「だったらいいんですけど…。」
聖夜さんの家に帰ると早速調理を始める。
筋肉痛の腕が痛むけど、それよりも雪夜さんの好きな味に近付きたい。
野菜の大きさは揃うようになってきた。ご飯も少しダマになるけど昨日よりは均等に色も味も付いてると思う。だけど、卵で包むのが上手く出来ない。
何度も何度も作って気が付けば、またテーブルいっぱいにオムライスが並んでいた。
「ごめんなさい。社長。こんなにオムライスばっかり…。」
昨日も今日もオムライスじゃ食べたくないと思う。
シュンとしたボクに社長はイタズラっぽく笑って見せた。
「水野くん。オレだけが協力するわけじゃないよ。」
「え?」
ちょうどインターホンが鳴って、響夜さんとカイくんが入って来る。
「今日はユウがボク達においしいものをご馳走してくれるっていうから来たんだけど。」
「うお~~~っ!!こんなにたくさんのオムライスどうしたんだ?ユウが作ったのか?」
「え?ユウ1人で作ったの?買って来たんじゃなくて?」
「カイくんそれ酷いよ。ボクだって少しくらい出来るよ。」
「味の保証は?大丈夫なんだろうな?」
「ああ。なんたって陵耶さんのオムライスだからな。昨日オレも食べたけど、今日のはもっと陵耶さんのオムライスに近いと思う。」
「聖夜が言うなら間違いないな。ユウ食べてもいいか?」
「うん。どうぞ。たくさんあるからいくらでも食べて。」
「じゃボクも。ユウ頂きます。」
2人は黙々とオムライスを食べてくれる。
「うん。ユウおいしいよ。陵耶さんのオムライスに似てるね。」
「おお。マジでうめえよ。もう一つ食べてもいいか?」
「うん。どうぞ。」
おいしいと言って食べてくれる2人の顔が笑顔で嬉しい。
「でも卵がうまく包めないんだ。」
「包むのは難しいもんね。ボクだって失敗するもん。」
「カイくんでも失敗するんだ。」
「でもボクは破れてもそこにソースかけて隠しちゃうけどね。それに響夜は破れたっておいしいって食べてくれるしね。」
「海人の作るもんはどんなでも上手いからな。」
ここにも甘い2人…。
「雪夜さんには一番上手に出来たのを食べて欲しいんだ。」
「そっか。そうだよね。初めてのユウの手料理だもんね。」
「じゃ、練習するしかないなユウ。」
俯いたボクの頭を響夜さんがクシャクシャにする。
「そうだよ。ユウは頑張り屋さんだからきっと大丈夫だよ。」
「うん。頑張るよ。」
それからも包み方をカイくんに教わりながら何度も作った。
「今日はもうこれくらいにしたら?仕事の後だしユウも疲れてるでしょ。」
「余ったオムライスは持って帰ってもいいか?冷凍にしとけばいいってアキが言ってた。海人が疲れてる時とかいない時に食べるから。」
「うん。持って帰ってくれたら嬉しい。アキのとこにもいっぱいあるから。」
2人はたくさんのオムライスを持って帰って行った。
「アキ遅いね。」
「水野くんは疲れたろ。もうお風呂に入って休んだほうがいい。腕も痛むんだろう。」
「はい。じゃ、アキには悪いけどボク先に休ませてもらいます。」
「ああ。お休み。」
お風呂に入って腕をマッサージしてベッドに潜り込むとすぐに眠ってしまった。
次の日も社長に送ってもらって会社に行く。でも帰りは家に帰った。さすがに3日も雪夜さんと離れてるのはボクが辛かった。
「ただいま。」
家に帰っても真っ暗で雪夜さんはまだ帰っていない。
携帯の着歴を見ると何度も雪夜さんから着信があったことを告げている。
雪夜さんに電話をかけると今日は急患があるから病院に泊まるって言われた。
3日雪夜さんに会ってない。
明日は雪夜さんの誕生日だ。雪夜さんはわかってるのかな?
今日は雪夜さんが帰って来ないのは確実で、ガックリしたけど、最後に練習が出来る。
ボクは急いでスーパーに行って材料を買うとオムライスを作り始めた。
何度も作ってやっと破れずに包めた。
「やった!!成功。」
コツを忘れないうちにもう一度作る。今度も成功。これなら大丈夫かもしれない。
あとは陵耶さんに聞いた通りにソースを作ってみる。
それを上手に出来たオムライスにかけると、見た目は陵耶さんのオムライス。
「味はどうかな?」
スプーンで一口すくって口に運ぶ。
「うんっ。おいしい。かなり陵耶さんの味に近い。」
ボクは決心した。
明日の雪夜さんの誕生日にこのオムライスを食べてもらって、あの女の人の事を聞くんだ。
いつものボクらしく、もうウジウジしないでちゃんと本人に聞こう。
雪夜さんに2回目の告白をするんだ。
テーブルの上のたくさんのオムライスを冷凍庫に入れて1人広いベッドで眠った。
でもいつもの温もりがなくて浅い眠りにしかならなかった。
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たとえこの世の終りが来ようとも

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キミが思い出になる前に

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月と太陽がすれ違う時

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