「キミと空とネコと」
やさしいkissをして

やさしいKissをして82

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その日から2日、オレは部屋から全く出なかった。というより出られなかった。泣きはらした顔、気力の出ない身体。そして絶望と言う文字がオレに纏わりついていた。

空の携帯はオレと同じ。もうここにいるのはオレの抜けガラなんだと思えるようになるまで2日かかった。

オレであってもうオレじゃない。だからもうどうでもいい。

周りの大事な人にさえ害が及ばなければ、オレの事なんてどうでもいい。

実家に帰る事も考えたけど、そうすると今度は両親に害が及ぶかもしれない。兄にも…。兄の家族にも…。そう思うとここから動けるはずもなく諦めた。

「大学だけはちゃんと行かないと父さんや母さんに申し訳ないな。生活費は当分は貯金でなんとかしていくしかない。」

1人でこれからの事を考え、希望も何も見えないんだなと苦笑する。

次の日、大学に行くと、案の定、黎がオレを待ち伏せするかのように門のところに立っていた。講義の時間を知ってるのか、それとも毎日こうして待っていたんだろうか?

「凪さん!!どういう事か説明してください。」

「何を?黎に説明する事なんて何もない。」

「どうしてバイトやめたんですか?どうして携帯に出ないんですか?」

「バイトの事はアキさんから聞いてるだろう。オレもそろそろ就活しないとヤバイんだ。だから辞めた。後、悪いが金輪際オレに話しかけてくれないで欲しい。というより話かけてくるな。話しかけてきてもオレは無視するから。」

「納得いきませんよ。達樹さんはどうなんですか?何も言わないんですか?」

「うるさいな。達樹とはもう別れた。オレはちゃんと就職したいんだ。男と付き合ってるなんてばれたら受かるものも受からないだろう。もう話す事はない。じゃあな。」

「待って凪さん!!」

手を掴む黎を振り返り、力任せに手を払う。

「いい加減にしてくれ。もうお前とは友達でも何でもない。言った筈だ。金輪際オレに話かけるな。」

思い切り払った手が、オレの胸が痛くて仕方なかった。

「ゴメン。黎…。」

遠く離れてから呟く。

達樹は卒論があるからそんなにここにはこないだろう。

あの別れ文句は達樹を酷く傷付けたから、本当に嫌われたかもしれない。その方がいいんだけど、心が悲鳴をあげる。

オレはバカか。ここにいるオレはもうオレじゃないんだから、そんな事考えなくてもいいんだ。

それからは、誰もオレの傍に寄せ付けないようにして生活する。

大学で講義を受けている時だけが穏やかな時間で、後は抜け殻の生活。

いつ寝て、何を食べているのか覚えてない。

そんな生活を2週間ほど続けた頃、奴から電話がかかってきた。

「こんばんは。いい子にしてるみたいだね。黎の手を振り払った姿、ちゃんと記録しておいたよ。ほんとにキミはいい子だ。」

「言う通りにしている。もう誰もオレの傍には来ない。」

「それでいい。いい子だから会ってあげるよ。明日、21時にシェラトンの2110においで。時間厳守だよ。ボクは待たされるのが大嫌いだからね。」

「わかった。」

「明日会えるのが楽しみだよボクの凪。」

またプツリと一方的に切られる。

明日、奴に会う。会えばどうなるのかなんてわからない。

とにかく奴の正体を知らないままよりは知ってる方が少しは気分がマシになる。


次の日、大学の講義を終え、約束の時間に遅れないようにホテルに向かう。

21時2110号室。

時間きっかりにインターホンを鳴らすと、ドアが開けられた。

「時間に正確だね。いい事だ。さあ中に入ってソファーに座って。」

部屋の中は薄暗くてよく見えない。

オレは逆らう事もなく言われた通りにソファーに腰掛ける。

「何か飲むかい?」

「いいえ。」

飲み物の中に何か入れられてたらと思い飲む事も食べる事もしないと決めていた。

「じゃあ、ボクは勝手にシャンパンでも飲ませてもらうよ。」

相手の顔がはっきり見えなくて、相手の感情のない話し方にうすら寒いものを感じた。

「さて、どうしようか。このまますぐにキミを手に入れるのでは面白くない。そうだな。しばらくはボクの言う通りにしてもらおうかな。」

「今でも言う通りにしているだろう。」

「そんなんじゃ足りない。キミのせいでボクは立場が悪くなったんだよ。」

「オレのせいで?会った事あるのか?」

「ああ、ライトが暗すぎてボクの顔がわかりませんか。じゃ明るくしましょう。」

一気に明るくされて目が追いつかない。

「まぶし…。」

シャンパンを飲み込む喉の音が聞こえる。

「目を開けてボクを見なさい凪。」

目が慣れてきて、瞼を開けるとそこで見た顔は、滝くんの店でオレを襲おうとした男だった。

「え?」

あの時のアイツはこんな話し方をするような奴ではなかった。

でも何度かの電話で豹変したようなしゃべり方はアイツに似ている。

「思い出しましたか?凪はボクの事なんてすっかり忘れていたでしょうね。あの後ボクは大変だったんですよ。ボクはこれでもある会社の社長の息子で、役職についてたんです。なのにあの事が会社にというより父親に報告されてしまった。父親はボクの行動を監視していたようです。ボクは凪に誘惑された被害者だというのに、ボクを会社から排除して、子会社に飛ばしたんですよ。この優秀なボクを。」

「オレは誘惑なんてしていない。襲ってきたのはお前だろ。」

「凪が誘ってきたんでしょ。」

バシッと頬を殴られる。

理不尽さにキッと睨み付けると、そいつはニタッと笑った。

「いい表情です。そんな顔されるとすごく泣かせたくなりますね。ボクの中のもう1人が暴れて出てきそうです。でも今夜はボクが楽しむ番だ。」

睨み付けているオレの傍に来ると、持っていたシャンパンをオレの顔にかける。ポタポタと雫が伝うのを楽しそうに見ている。

「ボクの手の中にはキミの大事なものがある事を忘れてはいないでしょうね。キミはボクが飽きるまでボクのオモチャです。ボクならまだかわいいものです。もう1人のボクはキミが良く知ってるでしょう。きっとキミの身体がボロボロになるまで弄ぶと思いますよ。言葉と行動には気をつけることです。ボクでいて欲しいならね。」

こいつは2重人格なのか?どちらにしても酷い事をされるのは想像がつく。

あえていうならコイツは心を、もう1人は身体を壊すって事か。コイツがオレに飽きるまで…。

「このシャンパンは高いんですよ。ああ、だからって支払えとは言いません。キミはバイトもなくしてお金がないでしょうから。フフフ。さあ凪、キミからキスをしてもらいましょうか。代金がキスだなんて罰にもなりませんが、今日は久しぶりの再会でボクも嬉しいから、それでよしとしましょう。さあ。」

コイツにキスなんて嫌だと言う自分がまだいることに抜け殻になりきれてない事を実感する。

キスの一つや二つが何だっていうんだ。心の伴わないキスなんてキスのうちにも入らない。

そんなもんでよければくれてやる。

オレはそいつに近付くと唇を重ねる。

「ダメですね。」

そう言ってまた頬を叩かれた。

「もっと媚びるようにねだるようなキスをしなさい。ボクはご主人様で、凪は下僕なんですよ。出来るようになるまで何度もしなさい。出来ないたびに罰を与えますよ。ボク好みの下僕に仕上げなくてはね。」

唇がわなわなと震えるけどいう事を聞くしかない。

オレはオレじゃない。プライドも何ももうない。守るためならそんなもの捨ててやる。

その日は奴の気に入るキスをするまでその部屋から開放される事はなかった。

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読んでくださいましてありがとうございます。
『やさしいKissをして』を休載したのが11/3からでした。それから3か月経ってやっと再開しようという気持ちになりました。どうなるかは未定ですが…。待って下さっていると言って下さった皆様ありがとうございます。そんな皆様の優しいお声のおかげで書く事が出来そうです。本当にありがとうございます。『キミが思い出になる前に』を待たれていた皆様にはごめんなさい。今日はどうしてもこちらを再開したかったのです。週末は『やさしいKissをして』を平日は『キミが思い出になる前に』をUPする予定です。その時の状況によって変わる事がありますのでご了承くださいませペコリ(o_ _)o))


さて、本編ですが、いきなりな場面からのスタートで申し訳ないです。今回は凌辱等のシーンはないです。酷いシーンではありますが比較的抑えています。実はこの『やさしいKissをして』も終盤ではあります。無事にこの危機を乗り越えて甘い二人に戻れるように進めて参ります。助っ人が登場しますのでお楽しみに☆

どんな話だっけ?という方へ…
『やさしいKissをして』→初回
『やさしいKissをして』→81話


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~ Comment ~

凪君! 

どうなっちゃうのか超気になってた〜〜
から再開してくれて嬉しい☆

やっぱり。。。(>_<) 

Rinさん。こんばんわ。

待ちに待ってた「やさしいkissをして」の再開ありがとうございます☆
やはり、あいつでしたか。。。Σ(゚д゚lll)

どんなに酷い目にあっても心までは奪われない・・
本当に美しい人間はこんな事で汚れたりしない・・
そう信じています!!!

今後の展開を楽しみにお待ちしていますね♪

Rinさん。再開してくださってありがとうございました~ヽ(*´∀`)ノ

Mill

 

おお〜、凪が帰ってきた 待ってました。


トコトン嫌な奴ね、この男。(嫌悪)
凪も早く幸せの方角を見つけられますように

凪を守って~ 

やさしいKiss・・・ありがとうございます。
凪と達樹の幸せな姿を早く見たくて 再開をとても楽しみにしてました。
あと、もうちょっとですよね たぶん。

凪を苦しめていた奴、やっぱりアイツだったんだ。
ほんと最低な奴 逆恨みじゃないですか
「ギャフン!」と言わせてやってください!!!

きみが思い出に・・・
良太との再会に「ほっ!」。
カズサもノート見て素直になって 良太と楽しい時間過ごしてほしい。
カズサが笑顔になると 私も癒される~。

Re: 凪君! 

うみ様こんばんは☆

ご訪問ありがとうございます。

気にしてくだっさっててありがとうございます。
いろいろありましたが、やっと書ける心境になりました。

週末だけになりますが(多分)完結に向けて書き上げますので読んで頂けたら嬉しいです。

うみ様コメありがとうございました☆

Re: やっぱり。。。(>_<) 

Mill様こんばんは☆

こちらにもありがとうございます。

すごくお待たせしてしまいました。ごめんなさいね。

>待ちに待ってた「やさしいkissをして」の再開ありがとうございます☆

いえいえこちらこそ待ってて下さってありがとうございます。
凪は一人で頑張ってますが、凪の周りには凪を見守る人達がちゃんといますから。

もうすぐ春ですもの。きっと凪にもね☆

Mill様本当にありがとうございます。感謝☆

Re: タイトルなし 

優様ありがとうございます。

やっと完結するべく再開しました。
やっぱり中途半端なままではダメだと思って…。

下條(嫌な奴の名前です)は壊れてるんですね。お金持ちで苦労しらずのボンボンですから、今までは何をしても許されていた。まあ親がお金で解決させていたって感じですかね。

凪も幸せに向けて少し嫌な思いはしますが、周りの人達が黙ってるわけないですから。
もうすぐです。

優様コメありがとうございました☆

Re: 凪を守って~ 

chie様こんばんは☆

再開を楽しみにしてくださってありがとうございます。
私の気持ちがなかなか書こうという気持ちになれずグダグダと月日だけが過ぎて気が付いたら3か月も経っていました。

それまでは書けないと思っていましたが、書き出すと思ったよりも書けたのでこの3か月という時間は必要だったのでと思います。とはいえ、ずいぶんなシーンからのスタートになってしまいましたが(苦笑)

奴をギャフンと言わせますのでご安心を☆

上総も笑顔になりますからね。みんなが幸せなのが一番☆

chie様ありがとうございました☆
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