月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時6

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猫と暮らし始めて思った事。

案外悪くない。

人間よりも裏表なくハッキリしている。

求める時は傍に来て、関心のない時は来ない。

人間みたいに顔色を窺ったり、ご機嫌を取りに来ることもない。

お互いの距離を適当に保って生活している感じだ。

それとこの猫とは音楽の趣味があうと思う。いや勝手に思っているだけなのだけど…。

音楽をかけると傍に来て一緒に聞くように耳をそばだてたり、オーディオをじっと見たりする。

まあ傍に来るのは今の所、ベートーベン限定だ。

他の音楽の時は来たり来なかったり。

ピアノの下に作ってやった猫用のベッドの中で聞いてたり…。

俺がベートーベンを聞くときは感情に揺らぎのある時だから、それを敏感に感じ取って傍に来るのか?まさかな…。

人間も猫みたいならいいのにと思う。

そんな思い通りに行くわけない。今までだって何一つ自分の思うようになった事なんてないんだから。

今日も学校に行かないといけないと思いつつも時計を見れば9時でとっくに授業は始まっている時間だ。

昨日も浅い眠りを繰り返し、眠ったという満足感はなく身体が重い。

今日は休もうかと思ったが、猫のごはんをしなければならないから結局は起きる事になる。

猫がいない時はそのままベッドから出てこない生活だった。

猫のごはんをすると顔を洗って身支度を整え、流星は学校に向かった。

登校するとちょうど1時間目が終わったところで人の波に紛れて教室に入り、自分の席につく。

「おはよう流星。」

横に立っていたのはあいつだった。

猫の事を考えていてすっかり失念していた自分に罵倒したい気分になる。

どうしてコイツの事を忘れていたのか。

あんなに嫌いだ。ウザイと思っていたのに。

いや、嫌いだから自分の頭の中から消去したのかもしれない。

「おはようってば。名前覚えてくれた?」

流星は答える事なく外を見る。答えるつもりなどなかった。

こういう奴は無視するに限る。

そんな流星の様子がわからないわけがない。あらかさまに無視されてるのだ。それがわからないのならよっぽどのバカだ。

「流星ってば。」

すると事もあろうか流星の両頬を手で挟んで自分の顔の方に向けたのだ。

教室にいた生徒もギョッとしたが、そうされた流星は何をされたのかわからずにフリーズする。

「あ、やっとこっち向いてくれた。流星おはよ。」

こいつ…バカだ。耳がないのか、思考能力がないのか…。

「俺に触るな。その手をさっさと引込めろ。」

「流星の頬、冷たいね。俺の手あったかいだろ。」

「さっさと離せ。」

低い声が響くと日菜太は仕方なく手を引込める。

「流星は短気だよな。昨日もだけどすぐに怒るんだから。」

「昨日も言ったよな。俺に触るな。近寄るな。俺はお前に興味はない。」

「酷いな。そんな言い方されると傷つくよ。俺は流星に興味あるよ。」

「俺に何を求めてるんだ?俺に何を求めてるのかしらないが迷惑だ。」

「うーーん。俺、流星が好きなんだよね。だから流星に興味がある。」

は?何言ってるんだこいつ。

俺を好き?

「聞こえてる?俺、流星が好きなの。」

教室中がザワザワする。

「どういう意味で言ってんだ?」

「意味って言われても好きは好きだよ。」

「俺に寄って来ても何の得もないぞ。蒼井の名前に惹かれてるのかもしれないが俺は蒼井に関係ない。」

「蒼井?蒼井が何?流星の言ってる意味が分からないよ…。俺は流星が好きだって言ってるだけなんだけど…。」

教室中が固唾をのんで二人見ている視線を感じる。

「ちょっとお前こっちに来い。」

このまま教室で話すのは危険だと思い、近くの空き教室に移動した。




「ここならいいか…。」

「何?」

「お前いい加減にしろよ。何がしたいんだ。俺を好きとか。俺を困らせたいのか?誰かに頼まれたのか?」

「何言ってんの?誰に頼まれるんだよ。流星を困らせたいわけないだろ。」

「好きってどういう意味だ?」

「流星の事が好き。それ以上でもそれ以下の意味もないよ。」

「はあ?俺、男だぞ。男相手に好きとか…。ああ、友情の好きか…。」

「違うよ。恋愛の意味の好きだよ。俺、流星の事を愛してるんだ。」

カーーッと血がのぼる。

侮辱されているんだと思った。

「いい加減にしろよ。俺を愛してるだと?俺は男だって言ってるだろう。男が男を好きっておかしくないか?そんなに俺を侮辱したいのか!」

「どうしてそんな風に怒るの?侮辱なんかしてない。俺も男だけど流星の事を好きなんだから仕方ないじゃないか。他にどう言えば良いんだよ。」

流星は頭が真っ白になった。

どうやらコイツは俺を侮辱しているわけではないらしい。本気で俺の事を好き?いやいや、それはありえないだろう。だって男同士だぜ?それに会ったのは俺が登校してきた日のはず。それでどうして愛してるなんて思うんだ?



「悪いが迷惑でしかない。俺は男を好きになる趣味はない。というより人を好きになる事はない。愛する?そんなもの気の迷いだ。見えもしないものを信じられるわけないだろう。」

「どうして?どうして流星は愛を信じないの?愛はあるよ。気の迷いなんかじゃない。愛しいって気持ち流星にもわかるでしょ?」

「そんなものわからないね。愛しい?そんな感情いらない。信じられるかそんなもの。」

「いるよ。愛しいって感情は必要だよ。流星が信じられないって言うなら、俺が信じさせてあげるよ。」

「結構。そんな事してもらわなくていい。言っただろ。お前は迷惑でしかない。俺に金輪際纏わりつくな‼」

「嫌だ。迷惑だって言われても俺は流星が信じてくれるまで流星の傍にいる‼」

お互いを睨み合う。

平行線の意見が重なる事はない。

どんなに時間をかけて話しても平行線のままだと流星は思った。

「お前は勘違いしてるだけだ。俺を愛してるとな。愛なんてまやかしだ。頭を冷やせ。冷静になれば勘違いしてる事に気が付く。今は何を言っても煽るだけだから言わないが、冷静になって考えてみろ。1週間やる。その間に考えろ。その1週間は俺に話しかけたり、傍に来たりするな。傍にいると冷静に見れないだろう。わかったか?」

「流星が意見を曲げる気持ちがないのはわかったよ。1週間は流星に話しかけたり、傍にはいかない。でも1週間経って、冷静になっても気持ちが変わらなかったら?」

「そんな事はないと思うがな。まあ変わらなかったら…。」

「変わらなかったら?」

「それはその時に考える。」

「何だよ。それ。なんか納得出来ないなあ。」

「納得出来ようが出来まいが、この提案を受け入れられないなら別に構わない。金輪際お前と話をしないってだけだ。」

「そんな。…。わかったよ。言う通りにする。でもさ俺が流星の言う事を聞くんだから俺の言う事も聞いてよ。それで対等だろ。」

「めんどくさいな。何だよ。」

「俺の事を名前で呼んで。一回でいいから。」

「はあ?何でお前の名前を呼ばないといけないんだ?嫌だ。」

「じゃ、呼んでくれるまで俺、今日はずっと流星に張り付いてるぞ。」

こいつなら本気でやりかねない。

小さな子犬のふりしてるけど目の中の強い光が意志が固い頑固者だと言っている。

「わかったよ日菜太。これでいいだろ。じゃ1週間後に…。」

そう言って流星はそこを離れ教室に戻ると自分の席に座った。

いちいちめんどくさいやつだ。

俺を好きとかありえないだろ。男だぜお互いに。

恋愛って男と女がするもんだろう?

まあ俺にはよくわからない感情だけど世間一般はそうなはずだ。

とにかくこれで1週間は俺の周りは静かになる。

それでもアイツの気持ちが変わらなかったら?

……。

そんな事はないと思うが、その時はその時で考えればいい。

とにかく朝から疲れた…。

そのあと遅れて戻って来た日菜太の顔が赤いのに気が付いた。

何で顔赤いんだ?俺が名前を呼んだから?まさかな…。

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