月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時7

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あれから1週間が経った。

約束通りに日菜太はこの1週間絡んでくることはなく、流星は比較的穏やかに過ごせた。

やっぱり一人でいる方が楽だと思う。

休まずに学校にも出てきており、片桐からの電話に悩まされることもなく平穏な毎日を送っていた。

猫とも相変わらず、お互いの距離を保ちながらの生活だ。

まあこの寒い季節に猫の体温はとても心地よくて夜は一緒に寝るのを密かに楽しみにしてる自分に気が付いて苦笑したが、猫だからいいかと開き直っている。


この1週間の間、日菜太の視線と良くぶつかった。

何となく視線を感じて振り向くと必ず日菜太が見ていた。

何を言うでもなく、でも時には何かを言いたげな瞳。

フイッと目をそらすと途端に悲しそうな顔をする日菜太を目の端にして飼い主にほったらかしにされている子犬みたいだと思った。

だからといって自分の懐にいれるつもりは毛頭ないが…。

さて、どうしたものか…。

待ちきれないと言った目で見ているのに気が付いたけれど、放課後まで何も言わずに放っておいた。

何も言ってこなければこのままうやむやにしようと考えていたのだが、それはやはり甘かったようだ。

授業が終わり、流星がカバンを持ったのを見て、日菜太は流星の所に来た。

「今日で約束の1週間目だよ。」

「そうか?」

「そうだよっ‼もしかしてうやむやにしようとしてない?」

「出来ればそうしたいね。」

「酷いよ流星‼」

「でかい声出すな。」

またクラス中の目を惹きつけている事に舌打ちをする。

どうも日菜太が絡んでくると人目を引いてしまう。

これが津野ならばそんなに見られる事もないのに…。

めんどくさいとは思うが、このまま話もせずに日菜太は引き下がる事はないだろう。

「続きは屋上で。」

小さな声で言うと流星は教室を後にした。

後ろでバタバタという音がしたが、きっと日菜太が慌てて帰る用意でもしてるのだろう。

流星は長い足で悠々と屋上に向かった。




「それで?」

「それでって?」

「何か言いたい事あるんだろう。」

「何か言いたい事って…。俺、この1週間考えた。たくさん考えたよ。」

「で?」

「やっぱり俺の気持ちは変わらない。男だけど流星の事が好き。本当に好きなんだ。」

あーあ。やっぱり変わらないか…。

流星は多分変わらないって日菜太は言うんじゃないかと何となく思っていた。だからうやむやにして聞かないでおきたかった。

「本当にちゃんと考えたのか?」

「考えたよっ。毎日毎日。」

「で、答えがそれか。」

「そうだよ。悪い?」

「ああ。悪いなんてもんじゃないな。最悪。」

「酷いよ。そんな事言わなくてもいいじゃないか。」

「お前はそうやって自分の気持ちを俺に押し付けるけど、それって俺の事ちゃんと考えてくれてるのか?」

「え?」

「俺がそう言われて困るだろうなとか考えた?」

「そりゃ考えたよ。男に告白されたら困るだろうとは思ったけど、この気持ちが溢れすぎて止まらなかった。」

「ふーん。それで?」

「それでって…。」

「お前は俺とどうしたいわけ?」

「俺の事を好きになって欲しいかなあ。」

「好きになったら付き合う?」

「それが一番だけど。」

「ふーん。男同士で付き合うねえ。お前の親は知ってるのか?」

「何を?」

「お前が好きなのは男だって事。そいつと付き合いたいと思ってるって事。」

「そ、そんなの知るわけないじゃないか。言えないよ。」

「言えないのに俺と付き合うのか?」

「うっ…。」

「もし俺と付き合ってる事がばれたらどうするつもりだ?」

「そ、そんなの付き合ってもいないのに考えたことないよ。」

「お前って行き合ったりばったりだな。」

「どういう事?」

「普通は付き合いたいと思うほど好きなら、後の事もちゃんと考えてから言うもんじゃないか?ましてや相手が男なら余計に考えるだろ。相手の迷惑にならないようにとか。多分…。まあ俺もちゃんと付き合った事なんてないし、好きとかわからないから偉そうに言えないけど。」

「それは…。」

「お前と付き合ったら俺、親になんて思われるだろうな。そこまで考えてくれたか?」

「だから付き合うとか考えてなかったからそこまで…。」

「だろうな。結局はお前のエゴの押し付けだろ。俺は迷惑でしかないって言ったよな。今もその気持ちは変わらないから。俺はお前の事が好きじゃない。だから俺なんかより、お前に相応しい奴を探せ。」

「そんな…。でも俺は流星が好きなんだ。」

「悪いが俺は好きじゃない。」

流星は後ろ手にその言葉を日菜太に投げつけると屋上のドアを開けて出ていく。

日菜太は流星に言われた事がよっぽど堪えたのか追ってくる事はなかった。

これで日菜太も俺の事は諦めるだろう。

これで静かな毎日が送れると流星は思っていた。




それから数日、日菜太は何か言いたげに流星を見ていたが流星は知らん顔をしていた。

ここで話しかけると、この間、屋上で話した事は無駄になる。

「なあ流星。日菜太なんか言いたそうにお前を見てるぞ。」

「別に聞くつもりはない。お前も余計な事をあいつに言うな。」

「だって日菜太可愛いじゃないか。お前に構って欲しくて鳴いてる子犬みたい。」

「俺は猫の方がいい。」

「へえ。流星は猫派なんだ。初めて聞いた。」

「俺も意外だった。まあそういう事で犬はいらん。お前が飼ってやればいいだろう。」

「まあそれもありか。」

「お前はあいつが男だってわかって言っているのか?冗談でも笑えないぞ。」

「うーーん。男だってのはわかってるさ。でも、日菜太ならありかなって思う。」

「よくわからん。」

「流星はそうだろうな。というか女でもそんなだろ流星は。」

「さあ。お前も『愛』だのなんだの俺に言うつもりか?」

「流星に『愛』を語っても空しいだけだろ。」

「『愛』なんてないからな。まやかしだ。勝手に自分で思い込んでいるだけだ。幻想だよ幻想。」

「これだもんな。流星が好きになる奴ってどんな奴なんだろうな。案外日菜太なんじゃない?」

「それだけは断じてないな。俺は不毛な事はしない。非現実的過ぎる。」

「あーあ。日菜太可哀想に…。」

「それ以上しつこく言うならお前とも口を聞かん。」

「はいはい。もう言わねーよ。」




『日菜太ならありかな』そう言った津野の言葉が頭に残った。

まあ華奢だし女顔ではあるが、そんな風に思う男もいるんだと。

その日の夕方、帰ろうと体育館を横切った流星の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。

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