月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時8

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この声…日菜太?

別にそのまま通り過ぎればいい。俺には関係ない。

そう思って歩き出した時にバーンと壁に人がぶち当たったような音が聞こえて足を止める。

あまりいい雰囲気ではないようだな。

争うような声も聞こえる。

流星は大きなため息をもらすと、体育館の裏へと足を向けた。

自分でも意外だと思いながら、何だか嫌な予感がしたのだから仕方ない。

案の定、近くに来ると争っている声がよく聞こえて来る。

日菜太と複数の声?

「や、やめろよっ‼離せっ‼」

日菜太の必死な声が聞こえる。

喧嘩か…。

しかし流星が次に見た光景は喧嘩ではなかった。

日菜太の唇の端から血が流れている。

制服の前がはだけて、白い肌が見えていた。

「大人しくしねーから怪我すんだぜ。いいから大人しくヤラれてろ。どんだけ喧嘩が強くても3人は無理だったな。よくも暴れてくれやがって。そのお返しはたっぷりしてやるよ。3人でな。」

「てめー。離せっ‼」

日菜太の両腕は制服のネクタイで縛りあげられている。

その腕を振り回そうとする日菜太を別の男が押えていた。

日菜太に話している男が日菜太のズボンと下着を一気に抜き取る。

「いやだっ‼」

日菜太の目から涙がほろりとこぼれた。

それを見た流星の身体は自分でも知らない内に自然に前に出ていた。何だか腹ただしい気持ちが溢れ、自然と声が低く、剣を含んだ声色になる。

「嫌だと言っているぞ。無理やりにすれば強姦だな。それでもするなら通報するが?先生を呼ぶか?俺と喧嘩でもするか?」

突然低い声が聞こえて男たちは怯む。

「流星っ‼」

日菜太がオレの名前を叫ぶ。

「流星って『蒼井 流星』か。ヤバいぜ。こいつめちゃくちゃ喧嘩に強いらしい。それに蒼井に目をつけられたら…。おい行くぞっ。」

3人の男達はあわてて日菜太から離れて流星の横を走って逃げて行った。

流星は無言で日菜太のズボンと下着を拾うと日菜太に投げた。

「ありがとう。ついでにこのネクタイも外してくれないかな。」

チッと舌打ちをして流星はそのネクタイをほどくとその場を離れようとした。

「待って。流星お願いだから待って。」

そのまま行こうとしたが、その声があまりにも逼迫しているのと涙声だったので立ち止ってしまった。

日菜太は下着をはこうとしているのだがなかなかはけずにモタモタしている。

「まったく…。早く着換えろ。」

仕方なく日菜太の傍に行くと着換えようとしている日菜太の手が震えているのに気が付いた。

目からは涙がこぼれ、唇をぎゅっと噛んでいた。

男が男に襲われるってキツイんだろうとふと思う。

悔しいのだろう。

唇に指を当てる。

「そんなに噛んでるからここも血が滲んでるぞ。」

そういいながら日菜太に下着をはかせる。

白い肌は土がついて汚れていた。

華奢な身体とそこらへんの女よりもきれいな顔だから男も欲情するのかもしれない。

そんな事を思いながらズボンもはかせる。


「災難だったな。」

「うん。…でもたまにこういうのあるから…。一人にならないように気を付けてたんだけど…。今までは相手が一人ならなんとか逃げてたんだ。今回は複数で敵わなかった。」

思い出したのか縛られてた手首をつかんでまたぎゅっと唇を噛みしめる日菜太。

「ほらまた噛んでるぞ。早くここを出た方がいい。」

「うん…。」

はだけた制服の前をぎゅっと握って日菜太は歩き出そうとしたがフラッとよろけそうになる。

「危ないっ。」

気が付くと流星は日菜太の身体を支えていた。

「あ、ありがとう流星。」

日菜太の額からは汗がにじんでいる。

「保健室に行くか?」

「嫌だ行きたくない。こんな姿見られたくない。」

顔は涙と血でぐしょぐしょ。身体は土がついて汚れてる。

こんな姿を見られたら、どうしたのか聞かれるだろう。

俺でも嫌だな。

流星は日菜太を気の毒に思った。

こんな感情を引き出されたのは久し振りの事だ。

「仕方ない。俺の家に来るか。それくらいの傷なら俺の家でも処置出来るだろう。」

何でこんな事を言っているのか?

そう思いながらも日菜太があらかさまにホッとした顔をしているのを見て誰でもこうするだろうと自分に言い訳をする。

流星は自分のコートを脱ぐと日菜太にかけた。

「それ着ておけ。前を掴んでたら自然とそこに目がいくし、寒いだろう。注目を浴びたかったら別だが?」

「やっぱり流星は優しいね。ありがとう借りるよ。」

「俺の事を優しいなんていうのはお前くらいのものだ。本当にお前は変な奴だな。」

俺の事を好きだという日菜太。

俺のどこがいいのか疑問に思う。

そのうえ俺が優しいと言う。

どこが優しいのか。

日菜太に言われるまで言われた事のない形容詞だ。

最も俺に相応しくない言葉だと思う。

少し時間を置いたからなのか日菜太は落ち着きを取り戻し、流星の後をついて歩いている。

帰る時に襲われたらしく、カバンもあったのでそのまま家に帰る事にした。

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