月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時12

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何やかんやと言いながら二人の食事は楽しい時間となった。

と言っても日菜太が1人でしゃべって流星が頷く事が多かったのだが、日菜太にとっても流星にとっても何だか居心地の良い時間だった。

猫も…ラルクも日菜太に甘えて離れない。

ごはんを食べた後はピアノの下で過ごすラルクが日菜太の膝の上でまどろみ、日菜太にラルクと呼ばれると、ピコンと耳をそばだてている。

猫は名前が欲しかったのだろうか。

俺が『猫』と呼んでも反応は薄い。

日菜太にラルクって呼べと言われて一度ラルクと読んでみたらピコンと耳を俺の方に向けた。

「ね、ラルクってきっと賢いんだと思う。もう名前覚えてるもんな。」

日菜太に頭を撫でられてグルグルと喉を鳴らす。

「あ、流星どこに行くの?」

「風呂。」

「そっか。じゃ俺ここ片付けておくよ。」

「ああ。」

俺が風呂から上がるとキッチンもリビングもきれいに片付いていた。

「ねえ。このココア飲んでもいい?」

「ああ。ついでに俺にコーヒー入れてくれ。」

「OK‼牛乳も使うよ。流星コーヒーにミルクいれる?」

「ブラックでいい。」

日菜太が飲み物を作っているうちにカバンから今日の課題を出す。

今日の授業の復習をしておこうと思った。

「うわっ。流星課題するのか?やらないとヤバいもんな。俺も横でしていいかな?」

「ああ。」



飲み物をテーブルに置くと二人で課題をする。

難なく解いていく流星と違って日菜太は「あ?」「え?」とブツブツ言いながらちっとも進まない様子だ。

「流星申し訳ないけど、ここ教えてくれないかな?」

チラっと日菜太のノートを見ると、書いては消し、書いては消しで一番初めの課題から躓いている。

このままだと夜中になっても終らない気がする。

そんな日菜太をほって自分だけ寝るわけにはいかないだろうと、流星は日菜太に向き直った。

「どこがわからないんだ。」

「ここ。この因数分解がわからない。」

「まずはXに1を代入するんだ。すると=0になってX-1で割り切れるから(x-1)(x^2-ax+2a)と因数分解出来る。わかるか?」

「んーーー。何となく…。」

「次の問題も同じだ。応用してやってみろ。」

「えと。あ、そうか。わかった。」

「その調子でやれ。わからなくなったら聞けばいい。」

そんな感じで二人の勉強は続いた。

「すごい。俺がこんな時間で課題をやり遂げるなんて‼流星は教え方が上手だな。」

「お前はすぐに答えを導き出そうとするからわからなくなるんだ。高校の数学は解く過程に重きをおいてるんだから、ちゃんと考えれば解ける。お前は理解力はあるんだから苦手意識を持たない事だ。何だ?」

「流星が俺の事をちゃんと見ていてくれて、こんなに言ってくれるなんて思わなくてビックリした。」

流星も自分でらしくないと思っているのでとたんに口をつぐむ。

「もうこんな時間だ。俺はもう寝る。布団持って来てやるからお前ももう寝ろ。」

そう言って日菜太に話す時間も与えずに布団をソファーに置いた。

「流星おやすみ。」

「ああ。」

流星が寝室に入ろうとするといつものようにラルクが入って来た。

「何だ。お前はあいつの所で寝ないのか?」

「ニャーン。」

ラルクは鳴くといつものように布団の中に潜り込んで来た。

ラルクが定位置で丸まったのを確認してからドアを閉めて布団に入る。

「あー。疲れた。1日でこんなに話したのは初めてじゃないか?」

独り言ちて目を閉じる。

しばらく眠りの波を漂い、いつものように2時間ほどで目が覚めた。

「やっぱり熟睡出来ないな。」

喉が乾いている事に気が付いてリビングに戻り静かに冷蔵庫を開ける。

日菜太が起きないようにと気を使っている自分にチッと舌打ちをしたくなる。

だから一人でいたいんだ。自分の家なのに何で日菜太に気を使わないといけないなんて。

ペットボトルを手に寝室に戻ろうとした、その時だった。

「嫌だっ‼離せっ俺に触るなっ‼」

布団をぎゅっと握りしめて大きな声を出す日菜太に驚いて傍に行く。

日菜太は額にびっしょりと汗をかいてうなされていた。

「おい。お前。おい。」

声をかけて身体を揺すっても日菜太は目を覚まさない。

「おいっお前。日菜太起きろっ‼日菜太‼」

名前を呼ばれて日菜太が目を開ける。

「大丈夫か?うなされてたぞ。」

「うっ。流星っ、流星‼」

流星にしっかと抱き付いて日菜太が何度も名前を呼ぶ。

「大丈夫だ。夕方の出来事は何もなかっただろ。もう怖くないからちゃんと目を開けてみろ。ここは俺の家だ。」

「うん。うん…。」

それでも流星にしがみついている手の震えは収まらなくて、夕方の出来事は日菜太に大きな傷を作ったのだと思った。

何も言わないから大丈夫だと思っていたが、眠りの中で無意識の内に傷が開いたのだろう。

日菜太の背中をポンポンと優しく叩く。

そんな自分に驚きながらも日菜太の体温は温かくて胸のあたりがほわっと光をともしたような感じになっていた。

「一人で寝るのが怖いなら、一緒に寝るか?ラルクもいるし温かい。それなら怖い夢なんかみないさ。」

日菜太はしゃべる事なく頷く。

まだ震えも涙も止まっていない。

「ほら。こっちに来い。」

しがみつく日菜太の腕を離して寝室まで手を繋いで連れていく。

「温かいココアでも飲むか?」

「ううん。いらない。俺の傍にいて。」

流星は日菜太に布団をかけるとその横に身を横たえる。

ラルクは日菜太の頬をペロペロと舐めると日菜太の横に引っ付くように丸くなった。

「ごめん。迷惑ばっかりかけて。」

「そうだな。まあ今日は仕方ない。もう大丈夫だから寝ろ。」

「もう少し引っ付いてもいいかな?」

「そうしたら眠れそうなのか?」

「うん。眠れそうな気がする。」

男と添い寝か…。

流星は心の中で大きなため息を漏らし、日菜太を腕の中に抱き込んだ。

「ありがとう流星。おやすみなさい。」

「おやすみ。」

ほどなく日菜太の寝息が聞こえて来る。

腕の中にいるのは日菜太だと言うのに流星は何の違和感も持たなかった。

男が男を抱いて寝るなんてありえないと思いながらも、日菜太に対して嫌悪感は感じなかった。

俺はどうしたんだ?

少し高い日菜太の体温が心地いい。

そのうち流星も日菜太を抱いたまま眠りに落ちていった。

日菜太もうなされる事なく、流星も深い眠りで二人とも朝までぐっすり眠った。

目が覚めたのは日菜太が一足早く、流星の腕の中にいる事に最初はビックリしたものの、胸に顔を寄せてクスリと笑う。

流星がこんな事してくれるなんて思わなかった。

嫌な思いはしたけど、流星とすごく近づけた事が嬉しかった。

「ん。もう朝か。起きたのか?」

「流星おはよ。おかげでぐっすり眠れた。」

寝起きの流星にドキンとする日菜太。

その日菜太の唇を流星の指が撫でる。

「やっぱり腫れてるな。昨日より目立つ。内出血痕も出てる。」

「え?マジで?俺、鏡見て来る。」

洗面所にパタパタ走っていく日菜太の背中を見送り身体が軽い事に気が付く。久し振りにぐっすりと眠れたからだろうか。

「日菜太と添い寝は想定外だったが、まあ眠れたから良しとするか。」

ぼーっとしている流星の所に泣きそうな顔の日菜太が走ってくる。

「流星どうしよう。顔はこんなだし、制服のシャツ、ボタンはじけてないし…。」

「シャツか…。白いカッターシャツなら代用出来るな。シャツは貸してやる。顔は諦めろ。」

片桐が日菜太と同じくらいの身長だから片桐のを貸せばいい。

流星の部屋には何かあった時用にと片桐のシャツやスーツなどが置いてあった。

だからって使った事はないのだが。

日菜太にシャツを渡すと日菜太は微妙な顔をしていた。

「何だ?新しいシャツだから大丈夫だろ?」

「これ誰の?」

「誰のでもいい。お前に関係ない奴のだから気にするな。俺は外に出るから着換えて来い。」

そういうと流星は寝室を出て行った。

「俺に関係のない人だから気にするんじゃないか。流星のバカ。」

日菜太はさっきまでの嬉しかった気持ちがしぼんでいくのを感じていた。

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