月と太陽がすれ違う時
月と太陽がすれ違う時13
一緒に通学するといろいろと言われそうだから先に行けと日菜太は先に登校させた。
一緒に歩いて通学なんてとんでもない。
流星は日菜太を泊まらせたけれども、仕方なくであって日菜太と友達になるつもりは毛頭なかった。
一方の日菜太は友達になれたんだと思っているのだが、そんな風に日菜太が思っている事など流星が気が付くはずもない。
冷蔵庫の食材がなくなるまでは家に来ても仕方ないが、それ以降は家にあげるつもりはなかった。
流星の中の基本は自分一人なのだ。そこには何人たりもいれるつもりはなかった。
教室に入ると日菜太はクラスメイトに囲まれ、顔のケガについての質問攻めに合っているところだった。
友達に囲まれて笑っている日菜太を見て、こいつは俺といるより友達といる方が幸せだろうと思う。
ふとそれが寂しいと思う自分にうろたえる。
どうしたっていうんだ。寂しいとか有り得ない。
どうも日菜太に関しては思い通りにならない展開になる事に苛立ちを覚えた。
その苛立ちが日菜太と関わりを持つようになってから積み重なっていってる事に流星は気が付いていなかった。
日菜太には学校では話しかけるなと言ってある。
今まで津野としか話をしなかったのに日菜太もとなると、他の奴も話しかけて来そうで嫌なんだと話した。自信過剰でもなんでもなく、津野と話し出した時もそうだった。それが煩わしくて学校に行かなくなったのだ。
その時は津野が間に入って流星に話しかけてくる人間はいなくなったのだが、今回は日菜太だ。日菜太が津野のように出来るとは思えない。だから最初に釘をさしておいた。
その代りとして携帯のアドレス交換はしたが、連絡があっても無視するつもりだった。その内諦めるだろうと…。
今日も夕飯は日菜太が作る。
流星としては早く食材がなくなって日菜太が来なくなる事を望んでいる。
何日かあけて日菜太が来るより、さっさと終わらせたかったので連続してくる方を選んだ。
今日の買い物は日菜太がして帰ってくる約束だ。
買い物と言っても食材はあるので調味料などを買うんだと日菜太は言っていた。
今日は泊めるつもりはない。
日菜太の親も2日も家を空けたらきっと心配するだろうと思った。
流星が先に家に帰るとしばらくして日菜太が帰ってくる。
「やっぱりここに入る時はドキドキする。マンションは高層だし、エントランスは大理石だし、俺には場違いみたい。」
「そう思うなら来なくていい。」
「そんな事言わなくてもいいじゃないか。流星は俺が来るの嫌なの?」
「ああ。俺はお前だからとか言うのじゃなくて、他人が傍にいるのが嫌なんだ。煩わしいと思う。」
「でも流星は優しいから俺を追い出したり出来ないんだよね。」
「優しいとは思わないが?」
「流星は優しいよ。俺は優しいと思う。」
「お前は本当に変な奴だ。何度も言うが俺は優しくない。」
「お前って言わないで日菜太って呼んでって何度も言ってるのに、読んでくれたの数回じゃない?」
「名前で呼ぶ必要性がないだろ。お前で十分だ。それより俺はお前と話をするためにお前を家にあげたわけじゃない。さっさと作って食べて家に帰れ。今日は泊めないからな。何を言ってもそれは譲らない。お前の親も2日も家を空けたら心配するだろう。その顔は仕方ない。喧嘩をしたとでも言っておけ。」
「流星…。今日も泊まっちゃダメ?」
「ダメだ。それ以上言うなら追い出すぞ。」
「チェッ。わかったよ。じゃ夕飯作る。」
「ああ。出来たら言ってくれ。俺は本を読んでるから。」
「OK‼」
それから日菜太はキッチンにこもって料理を始め、流星はその音を聞きながら本を読み始めた。
日菜太の作る料理の音は雑音に聞こえない。
むしろ心地よいとさえ感じる。
しばらくするとスパイシーな香りがリビングにも漂い始める。
この匂いはカレーか…。そう言えばカレーも何年と食べていないな。
テーブルに並べられたのはやはりカレーで、サラダも並んでいた。
日菜太が小さい紙皿にサラダを取り分ける。
「ちゃんとサラダも食べてね。」
「ああ。」
「いただきます。」
やはり手を合わせて挨拶する日菜太をちょっと見てからカレーを食べる。
やっぱり上手い。
このカレーも日菜太らしい味だ。辛いけどどこか温かくて懐かしい味。
「どう?おいしい?」
「ああ。上手いな。」
心配そうに流星の顔を見ていた日菜太の顔がぱあっと笑顔になる。
「良かった。材料的にカレーかシチューにしようと思って悩んだんだけど、カレーにして良かったよ。」
「食材はまだあるのか?」
「もうないよ。その代りカレーたくさん出来ちゃった。明日も明後日もカレーになるかも。」
「何を食べても同じだと言ったろ。俺は同じメニューが続いても構わない。」
「そうなんだ。でも同じカレーでもカツカレーとかエビフライカレーとか、カレーうどんにしたら違うもんね。カレーピラフにしてもいいし、カレードリアも有りだよね。明日は何カレーにする?」
「お前明日も来るつもりか?」
「え?そうだけど?」
「もういいだろう。俺は一人でいたいって言った。これ以上は深入りしてくるな。」
日菜太に言いながら流星は自分自身にも言っていた。
これ以上日菜太に深入りするなと…。
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