月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時14

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日菜太にもう来るなと言った時に見せたクシャっと歪んだ顔が流星の胸にツキンと小さな痛みを与える。

何でそんな事を言うのかと目が流星に訴えて来る。

いきなり自分の中に入り込んできた日菜太をもしかしたら流星は怖いと思ったのかもしれない。

それくらい日菜太と一緒にいると自分が変わってしまう気がしたのだ。

一人でいるのが寂しくなりそうな気がした。

今なら、一人でいる方がいいと言っていられる。

1人になっても大丈夫。そんなに傷は深くない。

そう思っている時点でもう流星は変わって来てしまっているのだが、本人は気が付かない。

もう日菜太に変えられてしまっている。

「もう一度言う。俺は一人でいたい。これ以上深入りしてくるな。」

「嫌だよ。せっかく流星と友達になれたのに。」

「友達?笑わせるな。俺はお前と友達になったつもりはない。」

「流星はそうでも俺は友達だと思っている。」

「は?お前は俺の事が好きなんじゃなかったのか?それで友達?」

「確かに俺は流星の事が好きだけど、それを置いておいても友達になりたいと思う。流星は俺の事気持ち悪い?」

「気持ち悪いとかそんな事じゃない。俺を好きだと言う気持ちだって一時のものだし、本当かもわからないだろう。」

「気持ち悪いとは思わないんだね。良かった。さすがに気持ち悪いと思われてたら凹む。でも流星を好きな気持ちは本当だ。」

「口では何とでも言える。もういい加減にして欲しい。俺は静かな生活に戻りたいんだよ。」

「静かだけど誰も周りにいない生活に戻りたいの?」

「ああ。誰もいなくても生きていける。静かで心が乱されることもない。」

「そんなの寂しいだけだよ。流星には俺がいるよ。傍に俺がいる。」

流星の苛立ちは日菜太の言葉によって加速していく。

『傍にいる』なんて嘘ばっかりだ。

そんな事を言ってみんないなくなる。

母親も、付き合った女も、かつて友達だと言った奴も。

裏切られるくらいなら、初めから一人でいればいい。そうすれば裏切られる事もない。

「傍にいるなんて簡単に口にするな。いつまで傍にいるんだ?明日か?明後日か?1ヶ月?半年?1年?」

「期間なんてないよ。ずっと一緒にいる。」

「フッ。お前は本当に甘いな。人の気持ちなんて変わっていくんだ。ずっとなんて有り得ない。」

「あるよ。俺はずっと流星の傍にいたいと思ってる。愛してるんだ。」

「は?愛?そんなもんありゃしないね。少なくとも俺にはない。そんなもん信じない。」

「どうして信じてくれないんだ。流星だって愛を知らないわけじゃないだろ。」

「知らないね。少なくとも6歳から今までは見たことも感じたこともない。6歳前の記憶は定かじゃないから知らないがな。」

「そんな…。」

「俺はお前みたいに親に大切にしてもらったわけじゃない。俺は不要な子供だから疎ましいとは思っても傍にいたいとは思わないだろうな。」

何でこんな事を日菜太に話しているのか?

今まで誰にも話した事なんてないのに。

そう思うと苛立ちが増してくる。

「流星の両親て…。」

「教えてやるよ。母親は父親の愛人で俺が6歳の時に死んだ。それから3年施設で過ごして父親に引き取られたが、俺は愛人の子だからな。別宅の家でメイドに囲まれて育ったのさ。父親なんて数回しか来ないような家でな。そんな家でどんな愛とやらがもらえると思う?身体が大人になれば『蒼井』の名前につられてくるような奴ばかり。メイドでさえ身体と引き換えにおこぼれをもらおうとするんだぞ。俺を好きで近づいてくる奴なんていなかった。」

言ってて昔の事が蘇って苦い気持ちになった。

そう子供のころは愛を信じてたと思う。

施設では0歳から18歳までの子供が様々な理由で預けられていた。

そこの施設の職員はやる気があるのかないのかあまり子供達と深く関わりを持とうとせず、見て見ぬふりをする職員が多く、そうなると子供達の間でも大人に見えないように陰湿ないじめがあったりした。

相談しても助けてくれない。

中学や高校に行ってるやつはそんな事に関心はなく、いじめはもっぱら小学生の中で行われてて、流星はよく的にされた。

「お前なんかいらない人間なんだよ。愛人の子どもだろう。捨てられたんだ。」

愛人の子。この言葉が流星に与えたショックは並大抵の事じゃなかった。

母親はそんな事を教えてくれなかった。

ただ父親の事をとても愛してるんだとか、優しい人だとか良い事しか流星に聞かせていなかった。

母親も流星を愛してると大切だと言い続けて来た。

それまで信じて来た気持ちがガラガラと音をたてて崩れていったのは施設に入ってからだった。

愛人の子という言葉にキレて何度も喧嘩した。

喧嘩している時はまだ愛を信じていたのかもしれない。

そのうち愛人の子という言葉にも何とも思わなくなった。

愛を信じなくなったから。

結局、俺は不要の子どもなのだと思うようになった。

母親にしか愛されなかったのだと。

それも愛かどうかわからない。

母親を捨てた父親を俺を通して憎んでいたのかもしれない。

俺は父親にそっくりだと言っていたから。

日に日に父親の面影を残す俺を憎んでいた…。

父親を愛してる、優しいと言った母親は愛されていた頃に縋っていたのかもしれない。

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