月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時19

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昼過ぎになっても日菜太の熱は下がる様子もなく、日菜太は荒い呼吸を繰り返している。

何か食べた方がいいだろうと食べたいものを日菜太に聞いても欲しくないからいいと繰り返すばかりで…。

ネットで調べたけど病人に何を食べさせればいいのかもわからないし、そもそも病人をほったらかして買い物に行くのも心配だ。

朝、スポーツドリンクと冷却材を買って来た時に何か買っておけばよかったと後悔したが、今更どうしようもない。

病院に連れて行った方がいいかとも思うが、保険証がない。

水分だけは摂らせているがそれでいいのかもわからない。

自分が熱の時は寝ていれば治ると気にもしないが、日菜太の熱は自分が酷い事をしたからだ。

優しそうな日菜太の母親に何だか申し訳ない。

日菜太は寝ていれば大丈夫だと言うがしんどそうだ。

「日菜太…。」

やっぱり病院に行った方がいい。

そう思って近くの病院を探そうとした時だった。

流星の携帯が着信を伝える。

片桐だった。

「流星様。何をしてらっしゃるんです?学校休みましたね。真面目に行ってらっしゃったのにどうしたんですか?」

そうだ。片桐なら何とかしてくれるかもしれない。

「片桐ちょうどいいところに電話をくれた。俺のクラスメイトがここにいるんだが、熱が高いんだ。病院に行くにも保険証がない。何とかならないか?」

「は?流星様の家に友人?え?そこにいらっしゃる?え?流星様のクラスメイト?」

「何をオウムのように繰り返してる。何とかなるのか。熱でとてもしんどそうなんだ。熱が出たのは俺のせいだ。何とかしてくれ。」

「流星様が私に何とかしてくれとは…。わかりました。会社のDRを行かせましょう。私もともに参ります。その方は女の方ですか?男の方ですか?」

「男だ。」

「わかりました。あと20分お待ちください。至急参ります。」

「すまない片桐。」

「流星様からそんなお言葉を聞くとは…。あ、失礼しました。では後ほど…。」

「頼む。」

酷く片桐に驚かれたのが腑に落ちないが、とにかく日菜太を診てもらえる事にホッとする。

「日菜太もうすぐ医者が来るから頑張れ。」

目が覚めたのか俺の言葉にニコッと微笑む。

その笑顔は俺には眩しすぎた。

目を合わせていられなくて視線をそらす。

日菜太は俺には眩しすぎるんだ。

どうしてあんなに前を向いて俺に向かってくるのか。向って来れるのかわからない。

怖くないのだろうか?

あんな事をした俺に笑顔を見せるなんて。

身体だけじゃなく、心も傷ついたはずなのに。

そう考えてまた日菜太にイラつく。

お前はいったい何なんだよ。

そして15分ほどで片桐とDRが家に到着した。

DRを日菜太のところに案内すると、俺と片桐は診察が終わるまでリビングで待つ事となる。

「コーヒーか紅茶かココア飲むか?」

「この家に水以外のものが⁉流星様が私に入れて下さるんですか?」

「飲まないならいい。俺が飲もうかと思ったからついでにと思っただけだ。」

「今日は驚かされる事ばかりです。コーヒーを頂きます。ついでに先生のも入れて下さいますか?」

「わかった。上手くなくても文句は言うな。」

「もちろんです。」

片桐が俺の様子をじっと見ているのが不快だったが、気にしないようにしてコーヒーを入れてテーブルにおいた。

「洒落たカップじゃなくて悪いが、家にはそれしかない。」

「いいですよ。紙コップじゃないだけましです。今度、おいしいコーヒー豆を持って来ましょう。」

「豆を持ってこられても挽くものがない。」

「コーヒーミルも持ってきます。あ、コーヒーメーカーもいりますね。エスプレッソマシンも持って来ましょうか?流星様はエスプレッソお好きでしたよね。」

「好きだがめんどくさいからいらん。」

「こんなに広いキッチンなのですから置いてても邪魔にはならないでしょう。」

「フンッ。好きにしろ。」

片桐もコーヒー好きだから、ここに来た時に飲もうと思っているのだろう。

今までは水しかなかったから嬉しいようだ。

「あ。猫ちゃん。元気でしたか?」

ラルクを見つけた片桐が嬉しそうに抱き上げる。

「そう言えば、名前は付けましたか?今度来るまでにつけておくように私言いましたよね。」

「ラルク。」

「は?」

「ラルクだ。そいつの名前。」

「へぇーーー。ちゃんと考えたんですね。ラルクですか。いい名前です。この子にお似合いだ。」

「俺が付けたわけじゃない。日菜太が付けたんだ。」

片桐が一瞬?な顔をする。

「日菜太?」

「ああ、今DRに診てもらってる奴の事だ。」

「ああ。彼は日菜太くんと仰るんですか?彼は良くここに来るんですか?しばらく見ない間にこの部屋というか、キッチンに生活の匂いがするようになってますね。」

「日菜太が泊まって料理を作ったからな。」

「何だか興味深いお話ですね。それに日菜太くんが熱を出したのは流星様のせいだと言いましたね。ちゃんと詳しく聞かせて頂きましょうか?会社のDRを私用で診察させているのですからちゃんと理由はお聞きしないと。社長にも報告する義務がありますので。」

社長という言葉がでたら、片桐は納得するまで話を掘り下げていく。

嘘をついたところですぐにばれてしまうから嘘は付けない。

俺は正直に日菜太と知り合った時から今日までの事を話した。

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