月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時20

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ふぅーっと片桐が大きなため息をつき、こめかみに指を当てて考え込んだ。

今までも俺はロクな事をしてこなかったから片桐には迷惑をかけている。

俺の事を見捨てないのは父親の秘書というポストを捨てたくないからだという事はわかっているのに、俺が頼れるのは片桐しかいないのだ。悔しいがそれが本当だ。

片桐が俺の事を疎ましく思っていることもわかっている。

今まで俺の尻拭いを散々やらされているのだからそう思うのも仕方のない事だ。

俺を突き放してくれと思う気持ちと、これでも突き放さないでいてくれるのかと片桐の事を試していた。

でも日菜太との事は今までの事とは違う。

今までは相手の事などどうでも良かった。ただ片桐の忠誠を試していただけだから。

でも今回は日菜太の事が気にかかっている。

冷めてしまったコーヒーと口に含んで片桐が口を開くのを待った。

「流星様。あなたがこのような事をするなんて…。まあ以前にも似たような事を女性になさりましたが、あの時はお金でカタがつきました。」

「あれは女もそれを狙ってたんだろ。金が入った途端に嬉しそうに消えたからな。」

「そのお金は貴方のお父様のお金なんですよ。あなたのお金じゃありません。」

「あの人はそれくらいしか父親らしいことをしてくれないからいいじゃないか。」

「何てことを言うんです。あの方はあなたの事をどれだけっ……。」

片桐がこぶしをぎゅっと握りしめ、泣き出しそうな表情になる。いつもは感情を表に出さない片桐だけに驚いた。

『あの方がどれだけっ…。』ってどういう事なんだろう…。

「言っても仕方ない事でした。話を元に戻しますよ。あなたは日菜太くんの事を好きなのですか?」

「は?俺が日菜太を?バカか。そんな事あるわけないだろう。日菜太が勝手に俺に近寄って来ただけで俺はそんなつもりは毛頭ない。」

「でもあなたは日菜太くんを抱いたのでしょう?」

「それは日菜太の目を覚まさせるためだ。男と男が愛し合うなんておかしいだろう。日菜太は勘違いしているだけだ。だから抱いた。俺は人に愛されるような人間じゃない。これで日菜太も目を覚ますさ。」

「でも日菜太くんはあなたを受け止めた。あなたを恨むような事は一言も言ってませんよね。日菜太くんは本当に流星様の事を愛してるんだと思いますよ。そしてあなたも気が付いてないだけじゃないですか?好きでもない相手をそれも同性の相手を抱くことなんて出来ないと私は思いますが。」

「うるさいっ。愛してるとか絵空事だと言っているだろう。俺の前で口にするな。それに男は誰とでも出来る生き物だ。勃てば誰とでも出来る。勃つ要素さえあれば出来るんだ。」

「…どうしてあなたはそんなに頑ななんでしょうね。そこに陽だまりがあるのに、わざわざ影を選ぼうとする。日菜太くんはあなたにとって太陽なんだと思うんですが…。」

日菜太が太陽なのはわかっている。そこにいるだけで暖かくなるからみんなに愛される。だから俺の太陽なんかじゃない。片桐にそう言おうとした時に寝室からDRが出て来た。

「日菜太はどうなんだ?」

「熱が高いようでしたが、点滴で落ちついたようです。何度も流星様の名前を呼ばれていましたよ。心細かったようです。リビングにいる事を伝えますと安心されたようです。今日はこのまま安静にして下さい。明日になれば身体を起こせると思います。水分だけはしっかりと摂って下さい。おなかがすいたら御粥から食べるように。」

そして薬を処方してDRは片桐と帰っていった。

片桐との話は中途半端で終わったままだったが、それよりも日菜太が気になっていた。

ラルクも同じようで、DRがいる間は隠れていたのに今は出てきて寝室の前でドアをカリカリとかいていいる。

「お前も日菜太が心配なのか?」

「ニャーー。」

寝室のドアを開けると少し消毒の匂いがした。

ベッドで眠る日菜太は落ち着きスースーと規則的な呼吸音が聞こえる。

目元はまだうっすらと赤い。

「愛…か…。」

日菜太の前髪を梳きながら愛って何だろうと考える。

でもそれは流星にとってははるか昔の記憶のない事で考えてもわからなかった。

それからも日菜太は眠り続け、起きたのは夕方になってからだった。

「目が覚めたか?」

「流星?俺…。」

「熱が出たんだ。DRに診てもらって点滴してもらったの覚えてるか?」

「ん…何となく…。」

「熱は少し下がったようだな。水分をしっかり摂れと言われている。飲めるか?」

「ん。喉乾いた。」

スポーツドリンクを差し出すとゴクゴクとすごい勢いで飲み干す。よほど喉が渇いてたのだろう。

「流星ごめん。俺迷惑かけて…。医者代払うよ。」

「何でお前が謝るんだ?お前が悪いんじゃないだろう。医者代なんていらない。父親の会社のDRだから片桐が何とかするだろう。」

「片桐?」

「俺のお目付け役だ。父親の秘書だよ。」

「その人はここによく来るの?」

「たまに俺の様子を見に来る程度だ。今回は片桐に頼るしかなかったからな。俺ではどうしようもなかった。ああそうだ。悪いと思ったがお前の携帯見たぞ。家に電話しておかないと親が心配するだろうと思って、昨日泊まる事を電話した。今日も安静にしておかないといけないからここに泊まれ。嫌なら家まで送るが。」

「泊まらせてくれると嬉しい。何だか身体に力が入らないし、身体が痛くて…。特にお尻…。」

真っ赤な顔をして言う日菜太に昨日の行為をまた思い出して胸が痛む。

「昨日は悪かった。いくらでもここにいていい。もうあんな事はしないから安心しろ。」

「え?俺、大丈夫だから。痛かったけど流星と一つになれて嬉しかった。」

「バカかお前は。あんな乱暴されて嬉しいとか言うな。あんな身体を繋げただけの行為に意味はない。」

「俺には意味があったよ。初めてが流星で良かった。」

日菜太は本気でそう思っているのか?あんな欲望を満たすだけのSEXだったのに。

それでも俺と一つになれて良かったと?俺が初めてで良かったと?

俺の中でわけのわからない感情が沸き起こって来そうで無理やり蓋をする。

「もうその話は終わりだ。ここに泊まるなら親に電話しとけ。」

「うん。そうするよ。」

日菜太に携帯を渡すと流星は寝室を出た。

ソファーに座り込み顔を両手で覆った。

日菜太は何であんなに笑っていられるんだ?

俺は日菜太とは反対に気分が落ち込んでいると言うのに。

しばらくして電話を終えたのか寝室からラルクと日菜太が顔を覗かせた。

「バカ。起き上がるな。呼べば行く。」

「ごめん。大きな声出されるの嫌かなって思ったんだ。」

確かに大きな声は不快だ。なんで日菜太はわかったんだ?俺が騒々しいのは嫌いだという事を。

「そっちに行くからベッドに戻れ。」

「うん。」

日菜太の後をラルクが追い、その後で俺が寝室に入った。

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