月と太陽がすれ違う時
月と太陽がすれ違う時22
「どうしてそんな事を言うの?勝手に決めないでくれるかなっ‼」
日菜太が声を荒げたのでラルクが驚いて部屋から飛び出て行った。
「真実だからそう言ったまでだ。俺に出会わなければお前は俺の事を忘れて普通に恋愛してただろうし、俺に乱暴される事もなかった。」
「それは違うよ。俺は流星の事を忘れるなんてしない。9歳のあの時から俺は流星の事が好きだったんだ。あの頃はそれが愛だとはわからなかったけど、2年前にすれ違って俺は流星の事が好きなんだってわかった。愛してるんだって。」
「愛…。」
「そうだよ。愛してるんだ。」
「何度も言ってるだろう。俺は愛なんて信じない。」
「信じてもらえなくても俺は流星の事を愛してる。」
愛という言葉が俺の中で嘘くさく流れていく。
日菜太に言われたところで信じられる言葉ではない。
「俺は何度そう言われても信じられないんだ。俺の中に愛という言葉はないから。お前が俺を受け入れた事でお前は信じろと言ったが、それでも信じられない。悪いがそれが変わる事はない。」
「そんなのわからない。これから俺が流星に愛を教えていくから。うっとおしがられても教える。」
「もういい。今は身体を治す事を考えろ。大きな声を出したからまた声が掠れてるぞ。熱が上がったらどうする。またDRを呼ぶのか?」
「…これ以上流星に迷惑かけたくない…。」
「じゃあ大人しく寝てろ。晩飯、何か食べたいものあるか?といっても御粥にしろとDRは言ってたが。」
「じゃ御粥食べる。早く元気にならないと。インスタントの御粥がコンビニに売ってる。」
「そんなものお前に食わせられるか。片桐に作らせる。あいつは料理も作れるからな。」
「また片桐…。」
「何か言ったか?」
「何も…。俺横になってる。」
そう言って日菜太は布団にもぐりこんだ。
俺は寝室のドアをパタンと閉める。
俺と日菜太の意見が交わる事はない。
愛を信じてる日菜太と信じない俺が交わる事なんてないのだ。
俺は携帯を取り出すと片桐に電話し、御粥を作ってくれるように頼んだ。
* * *
「しかし見事に器のない家ですね。御粥を紙皿に入れるんですか?熱くて持てませんよ。」
「じゃお前はどうしろっていうんだ。」
「そこのスーパーで買って来てください。」
「はあ?俺が?」
「他に誰がいると?私はあなたに言われて日菜太くんの為に御粥を作らないといけません。御粥の材料は買って来ましたが、器がないなんて知りませんからね。それともあなたは仕事帰りの私にまた買い物に行って、それから御粥を作れと仰るのですか?明日も朝早くから会議があると言うのに…。」
嫌味タラタラに片桐が言う。
ムカつくがレトルトの御粥を日菜太に食べさせたくなかった。
確かに片桐は秘書という仕事があり、俺の事はサービス残業でしかないのだから皮肉も言いたくなるだろう。
「わかったよ。買って来ればいんだな。」
「でしたら、コーヒーカップとか、茶碗、お皿もいろんな大きさのもの、お箸とスプーンも買って来てください。」
「そんなもの俺にわかるわけないだろう。無理だ。」
「そんなに断言なさらないでも…。でも確かに流星様には無理かもしれませんね。日菜太くんが元気になったら彼と行く方がいいでしょう。では今日はお茶碗とお箸を2組買って来てください。」
「2組?」
「ええ。流星様と日菜太くんの分です。」
「俺はいらないだろう。」
「何を言ってるんです。一人で食べる食事がどんなものかあなたは良く知っているでしょう。ましてや日菜太くんは病人です。寂しい思いをさせないで下さい。」
一人で食べる食事がどんなものなのかはよくわかっている。
何を食べてもおいしくない。ただ流し込むだけ。俺はそれでもいいが、日菜太はどうだろう。
あの優しい母親ときっと優しいであろう父親と楽しい会話をしながら食事をしているのだろう事は日菜太と食事をしてみて何となく想像出来る。
「わかった。他に何かいるか?」
「素直でいいですね。それでは果物を。りんごにしましょう。みかんは身体を冷やしますし、お腹を下すかもしれません。りんごをすってデザートにしましょう。後、アイスクリームでも買って来てください。熱が夜に高くなるとも限りませんからね。冷たいものがあるといいでしょう。スポーツドリンクも忘れないで下さいね。あとは梅干しでしょうか。」
「たくさん言いやがって。俺をいじめて楽しいか?」
「楽しいですね。日菜太くんが関わると流星様は人間らしくなられる。それが楽しいです。さあ早く行って来てください。私は日菜太くんの様子を見て来ましょう。身体も拭いてあげないときっと汗で気持ち悪いでしょうから。あとお尻も見ておきましょう。あなたが無体を働いたところもきっと痛いでしょうから。」
「片桐、日菜太に余計な事はするなよ。怖がらせるな。嫌だと言ったらやめろ。わかったな。」
「本当に人間らしい反応です。そんなに心配しなくても日菜太くんの嫌がる事はしませんよ。」
「ならいいが…。」
少し後ろ髪を引かれる思いだが、早く買い物に行かなければいつまでも片桐がここにいる事になる。
流星は財布と携帯を掴むと買い物に出かけて行った。
「さてと、私は流星を人間に戻そうとする日菜太くんを拝みに参りますか…。」
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