月と太陽がすれ違う時
月と太陽がすれ違う時23
俺は流星が買い物に出かけた事なんて知らずにベッドの上で膝を抱えていた。
どうしたら流星に愛してる事を信じてもらえるんだろう。
流星は頑なに愛を信じようとしない。
何がそうさせているのか…。
確かに施設で出会った時もいつも一人でいたし、子供なのに冷めた目で世界を見ていた。
全てを諦めた瞳。
それでも俺の事を庇って助けてくれた。
あの時の流星はちゃんと感情があって温もりも感じた。だから俺は安心していられたし、流星の事が好きになったんだ。
俺を守ってくれた流星は本当に優しかった。
あの優しさは嘘なんかじゃない。流星の中にある優しさだ。
コンコンとドアをノックする音が聞こえる。
流星はノックなんかしなかったけど、誰だろう…。
「はい。」
ドアから入ってきたのはきれいな顔の男の人だった。
俺より少し高いくらいの身長。
「身体は大丈夫ですか?起きてても?」
「あ、はい。ずっと横になってましたから。」
「そうですか。私、片桐と申します。」
あ、流星が言ってた人だ。たしか秘書とか何とか…。
「えと流星から聞いてます。秘書をされているとか…。」
「流星様が私の事を話したんですか。そう…。あなたにはよく話をしているようですね。」
「そうなのかな?流星はあんまり話をしないから…。俺が1人でしゃべってる感じかな。」
片桐さんが表情を引き締めたのがわかって俺も緊張する。
「それであなたの目的は何です?」
「目的?」
「流星様は蒼井の人間です。蒼井の財産ですか?それともコネ?蒼井に取り入ろうとしているなら無駄ですよ。流星様は蒼井の血が流れていると言っても父親の血のみ。妾の子供ですし、認知はされていますが、財産のほとんどは奥様とそのお子様に分与されます。」
「はあ?何を言ってるんですか?俺は財産も、コネもいらない。何なんだよあんた達は。流星も同じような事を言ってたけど、そんなもん欲しくないよっ。俺は流星の傍にいたいだけだ。」
「それで流星様に足を開いたのですか?」
「な、っ…。」
「流星様が私に隠し事をするとでも?正直にすべて話してくださいましたよ。あなたは流星様をたぶらかしてどうしようというのです?」
「俺は流星をたぶらかしてなんかないっ‼俺は本当に流星の事が好きなんだ。」
片桐さんが滑稽だと言うようにフフンと鼻で笑う。
「何がおかしいんだよっ‼」
「好きが聞いて呆れます。男同士の恋愛ですか?流星様はストレートでした。今までは遊びではわかりませんが、女性としかお付き合いしかなかった。なのにあなたに狂わされた。流星様は蒼井の子会社を引き継いで、普通に結婚し、子供を授かる身なのです。あなたは邪魔でしかない。それともあなたは流星様を幸せに出来ると?愛を信じさせるとでも?バカバカしい。流星様がそんなものを信じるとでも思っているんですか?」
「思ってるよ。悪いか。俺は流星に愛を信じさせる。流星にちゃんと笑って欲しいんだ。」
「それがあなたに出来るとでも?たいした自信ですね。」
この人すごく意地悪だ。
この人を流星は信じてるの?
俺との事を全て話すほど?
そう言えば昨日俺を抱いた時、流星はやり方を知ってるみたいだったし、慣れてる感じだった。
それにボタンのとれたシャツの変わりに出してくれたシャツは俺と大きさが似ていて、流星のサイズじゃなかった。
もしかしてこの人のシャツ?
「あの、貴方は着換えのシャツとかここに置いてるんですか?」
「何ですか急に。まあここに泊まる事もあるので着換え一式は置いています(本当は今まで泊まった事はないんですが…。)それが何か?」
「いいえ。何でもありません。」
片桐さんが流星の相手なのかもしれない。
何でも話せる相手。この部屋に泊まる相手。着換えまで置いておくほどの…。
今まで流星に相手がいるなんて考えてなかった。
勝手に恋人はいないって思い込んでた。だから俺は流星に好きだとか愛してるとか言ってた。
けど、流星が蒼井の人間である事は確かで、俺には蒼井の家がどんな資産家だかわからないけど、この街でも大きな家である事くらいはわかる。
男である俺が流星の邪魔なのは確かだ。
同じ男の相手でもこの人なら蒼井の家の事もわかってるし、流星を傍で支えていたのなら俺よりも役に立つわけで…。
「さっきまでの勢いはどうしました?もう降参ですか?たわいのない…。」
「あなたは流星の事を本当に愛してるんですか?流星を笑顔にしてくれるんですか?」
「何を突然。愛など流星様は求めていませんし、笑顔など必要ありません。」
「そんな事ないよっ‼流星は愛なんて信じないって言ってるけど、本当は誰よりも愛したいと思ってるし、愛されたいんだよ。笑顔だって必要だっ‼」
「流星様は月のような方です。青く冷たい月。ご自分でもわかってらっしゃいます。あなたは太陽のような人だと流星様は仰いました。太陽と月は交わる事はない。違いますか?」
「そんな事はないよっ‼俺が太陽だって言うなら俺が流星を温める。笑顔にするっ‼」
俺は片桐さんを睨みつけ、無言の時間が流れた。
不意にドアが開いて流星が入って来た。
「片桐っ‼お前何をしてるんだっ。日菜太は病人だぞっ‼」
「流星…。」
大きな声を出したから身体がフラフラする。そう言えば何も食べてなかったっけ…。
頭がグルグルまわって俺はそのまま布団にパタリと倒れ込んだ。
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