月と太陽がすれ違う時
月と太陽がすれ違う時28
まだ日菜太と関わりを持つようになってそんなに日は経っていないが、こいつがこんな目をする時はガンとして引かない事を知っている。
俺がベッドで寝ると言うまで自分も寝ないだろう。
やっと体調が戻って来た日菜太だが、油断するとまたぶり返すかもしれない。
ラルクと日菜太が二人でじっと見ている。
「わかったよ。本当にお前には負ける。」
「やったー‼今日は3人で寝れるなラルクも嬉しい?」
「ニャーーン。」
日菜太は俺に乱暴された事、わかっているんだろうか?
「俺、流星の事、信じてるから。」
その時日菜太が呟いた。その言葉が何を意味するのか、日菜太ではないから計り知れないが、乱暴した事を俺が罪のように思っている事が分かって言っているのか?
もちろんもうあんな事をするつもりはないが…。
後ろを向いてラルクと遊ぶ日菜太の表情はわからないが、俺を責めるつもりはない事はわかる。
「俺はここを片付けるから、お前は風呂に入ってしっかり温まってこい。」
「うん。」
日菜太の後をラルクがついて行く。
「何?ラルクも入るのか?流星いいの?」
「ああ。ラルクは風呂が好きだからな。」
日菜太とラルクがいなくなると、この部屋が広く見える。
たった数日一緒にいるだけなのに、いなくなると空気が冷たく寒いように感じる。
人って温かいんだな…。
小さく頭を横に振る。
俺に与えられる温もりではない。
期待してはダメだ。
期待しても与えれない事を俺は小さい頃に学んだはずだ。
期待してて与えられなくて泣いていた子供の頃。
初めから期待しなければ泣く事もない。
人の温もりは他の人には温かくても俺には熱すぎる。
火傷してしまうのだ。太陽の陽は…。
俺には月の冷たさが合っている。
洗い物を片付け、ソファーに沈み込んで音楽を聴く。
『ラ・カンパネラ』ニコロ・パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番ロ短調Op.7、第3楽章のロンド『ラ・カンパネッラ』を主題にフランツ・リストがピアノ用に編曲し作り上げた曲。
聞き終えては再生し直して聞く。
「綺麗だけど、何だか悲ししそうに聞こえる。」
いつの間にか上がって来た日菜太がラルクを抱いて傍に立っていた。
「ちゃんと髪の毛を乾かせ。ラルクは俺が拭くから。」
日菜太からラルクを抱きあげると日菜太をソファーに座らせ、新しいタオルを手渡す。
しばらくはお互いに無言で日菜太は髪の毛を、俺はラルクを乾かした。
「あのさ流星…。」
「俺も風呂に入ってくる。お前は先に寝てろ。」
ラルクを日菜太に手渡すと日菜太の返事も聞かずにそこを出る。
日菜太の話は聞きたくない。
きっと俺の心を騒めかせるのもでしかないから。
風呂でも音楽を聴く。
少しでも長くここにいて、上がった時に日菜太が眠ってくれていればいいと思いながら。
しかし、そんな願いも空しく、寝室に入ると本を読んでいた日菜太が顔をあげ嬉しそうに笑った。
「流星は案外長風呂なんだね。先に寝てしまうところだった。」
そうして欲しかったと内心思ったが口にはしなかった。
布団をめくり、ベッドの端に寝る。
「もっとこっちに来ないと落ちるよ。」
「俺の寝相はそんなに悪くない。ここでいい。」
「せっかく一緒に寝るのに。」
「お前は俺に何をされたのか忘れたのか。そんな奴と同じベッドで寝るんだ。もっと警戒しろ。」
「流星はもうあんな事はしないよ。だから警戒なんてしない。俺は傷ついてなんかないよ。俺よりも流星の方が傷ついてる。」
「お前は…。もう寝ろ。電気消すぞ。」
何か言いたそうにする日菜太には何も言わせずに電気を消す。
「おやすみ流星。」
「おやすみ。」
俺達の間は1メートル開いている。
キングサイズのベッドで良かった。
広い部屋に小さいベッドは空間が広すぎて、寒々しかったから大きなベッドに変えた。
日菜太と俺の間にある空間。
それは縮まらない距離だと俺は思っていた。
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