月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時29

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眩しい朝日の光を浴びて目が覚める。

何だか温かい…。

ラルクかと思って見ると日菜太が胸のところで俺に抱き付いて眠っている。

信じられない事に俺も日菜太を抱きしめていた。

気持ちよさそうに眠っている日菜太を起こさないように身体を離す。

昨日の夜、眠った時は離れていたはず。

いつの間に抱き合っていたのか。

そう言えば昨日は夢を見る事もなく深い眠りの中に落ちて、温かさに安心していたような気がする。

日菜太が俺に引っ付いていたから?

俺が日菜太を抱きしめたのか?

とにかく先に起きて良かった。日菜太が先に起きていたら何を言われるかわからない。

あまつも片桐に言われたりしたら何を言われるか。

「あれ?おはよう流星。」

「あ、ああ。おはよう。」

ギクリとした事を感ずかれていないだろうか。

「流星起きるの早いね。学校に行くまでに1時間以上あるよ。」

「昨日寝るのが早かったからな。身体大丈夫か?」

「うん。平気。俺、朝食作るよ。」

朝飯なんて食べないからいいと言おうとして、やたらと日菜太が嬉しそうに何を作ろうか考えているのを見て言えなくなった。

日菜太は顔を洗って制服に着替えると料理を始める。

「そんな恰好で料理したら制服が汚れる。上にこれはおっとけ。」

日菜太にジャージの上を渡す。

「ありがとう。エプロンがいるね。今日帰りに買って来よう。」

「そんなにここで料理を作るわけでもないだろう。」

「家でも使えるし。そうだ学校の帰りにスーパーに寄って帰るけど晩は何が食べたい?食器ももう少し買って来よう。調味料も欲しいし、お味噌汁飲みたいからお味噌もいるね。」

日菜太の話を聞いてるととても一人で持てる量ではない。

「お前ひとりでそんなに持てるのか?」

「無理…かな?」

「無理だろう、どう考えても。」

「じゃ、2回行けばいいじゃん。うん。そうしよう。」

日菜太は言うだけの物を買うつもりらしい。

「流星自転車持ってる?貸してくれたらもっと楽なんだけど。」

「自転車ぐらいある。」

病み上がりに荷物をたくさん持たせたのを片桐が知ったら何て言うだろう。

片桐の冷たく言い放つ姿を想像してうんざりした。

「俺も買い物に付き合う。俺の家の荷物になるんだろう。」

「え?いいの。二人で買い物なんて嫌じゃない?」

「お前ひとりで買い物に行かせたら片桐に何を言われるかわからない。そっちの方がごめんだな」

そんな話をしながらも日菜太は器用に朝飯を作る。

残り物で作ったから大した物は作れないと言いながらも、オムレツとから揚げの衣をはがして細かく裂いたものとネギでスープを作っていた。

「ごはんと合わないかもしれない。ほんとはパンがあればよかったんだけど。」

「十分だ。から揚げもこうすれば違うものになるんだな。」

朝陽の入り込む部屋で温かい食事を取る。俺の前には日菜太がいて、テーブルの下ではラルクが食べている。

慣れない雰囲気だが、不思議と嫌な気持ちにはならない。

「お前先に学校に行け。俺は後から行く。一緒に登校すると何か言って来る奴もいるからな。」

「一緒に行きたかったのにな。まあ、いいや。帰りはスーパーで待ち合わせ?」

「ああ。学校でも話かけてくるなよ。津野が興味津々だからな。」

「俺は平気なのに。でも流星が嫌なら話しかけない。」

朝飯の片付けをし、二人別々に登校する。

約束通りに日菜太は話しかけてくる事はなかった。

まあ時々俺と目が合うと嬉しそうにニコッと笑いかけてきたが…。

放課後、日菜太はチャイムが鳴るとすぐに教室を出て行った。

そんなに張り切らなくても…。

教室を出て行く時に俺の方を振り向いて「先に行ってる」と口パクで伝えて来た時の顔が嬉しそうで何がそんなに嬉しいのかと思う。ただの夕食の買い物なのに。

俺がスーパーにつくと日菜太は入口で待っていた。

「流星、何食べたいか考えた?」

「別に。何でも…。俺は弁当でいい。」

「そんなのダメだよ。俺がいるんだからちゃんと作る。ただでさえ食生活ぐちゃぐちゃなんだから。朝用にパンも買おう。ラルクのごはんはまだある?」

「ああ。大丈夫だ。」

スーパーに入りながらそんな会話をする。

ここのスーパーはとても大きくて品揃えがいいんだと日菜太が嬉しそうに言いながら、まずは食器を買おうとカートを引きずる。

そのカートに次々と入れていく日菜太。

「このマグカップ買おうよ。」

それは色違いのマグカップで、青地にオレンジ色のラインの入ったものと、黄色のラインの入ったもの。

「俺は黄色。流星はオレンジね。」

「勝手に決めるな。」

「流星はどんなのでも気にしないでしょ。俺これが気に入ったからこれにしよう。あ、片桐さんにも買う?」

「片桐用のものなんかいらん。」

「そんな事言わない。片桐さんのは水色のにしよう。」

俺の意見なんか聞くつもりもないようで、一人で納得するとカートに入れる。その後もいろんな種類の皿が次々と入れられていく。

「お前はどんだけ買うつもりだ?まだ食材買ってないんだぞ。」

「あーーー。土鍋も欲しい。流星買おうよ。ねっ。ねっ。お鍋つつこうよ。」

そう言うと俺の返事も聞かずに土鍋もカートに積まれた。

これは二人でも絶対に持って帰れないぞ。

「なんか新婚さんみたいだね流星。」

「お前はバカか。」

もはや呆れて何も言えない。

それでも楽しそうにしてる日菜太を見れば、小さなため息は心の中だけに吐き出された。

「今日はお鍋にして片桐さんも呼ぼうよ。」

「何で片桐まで…。」

「せっかく土鍋買ったし、お鍋は多い方がおいしいだろ。」

「片桐は秘書だから忙しい。急に言っても無理だ。」

「俺、メールしてみる。」

「ほんとにお前は俺の話を聞かないな。」

俺の言葉を聞いてるのか聞いてないのかメールを打ち込むと送信する。

仕事中だろうにすぐに返信メールが帰って来る。

「わーい。片桐さんOKだって。何鍋にしようか?」

俺と食事なんてした事もないのに、日菜太が呼ぶと来るのか。

まあ苦虫をかみつぶしたような顔の片桐を見るよりはいいかと諦めた。

片桐を手なずけた日菜太に少し妬みつつだが…。

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