「キミと空とネコと」
やさしいkissをして

やさしいkissをして91

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大きな声が周りに響く。

オレにのしかかっていた下條が慌てたように起き上がる。

「下條そこまでだ。凪から離れろっ‼」

ひときわ大きな声がしてオレはそっちを見る。

だってそれはずっと傍で聞きたかった声だから。

電話越しじゃなく、傍で聞きたかった声。

「達樹…。どうして…。」

下條が捕まるまでは会えないはずだった。

達樹は一番下條に狙われてたから…。

「下條、凪から離れろ。」

「チッ。出て来やがったか。」

達樹と下條が睨み合っているのが後ろからでもわかる。

そこだけ寒々とした怜悧な空気が漂っている。

「ダメだ。達樹危ない。」

「おっと。逃げられると思うなよ。」

起き上がろうとしたオレを後ろ手にすると首筋にナイフを突きつける。

ナイフの先が当たって血が滲む。

そのナイフの先でさえ、薬に侵された身体は反応しようとする。

「うっ…。っ…。」

「何だ凪。痛いのが好きなのか?さっさとここから引き揚げた方がいいな。充、車まで行くぞ。」

「イヤだ。…オレは…行かない。」

力の入らない身体で必死に抗う。

「凪っ‼」

「達樹っ‼」

走って来た達樹に充が体当たりする。

充の小さな身体のどこにそんな力があるのかというほどの力で達樹を抑え込むと達樹は動けなくなる。

「離せっ。下條以外の人間を傷つけたくないんだ。」

「下條様の邪魔をする人は許せません。ここは通しませんよ。下條様今のうちに早く。」

「充、そのままその男を引き留めておけ。さあ凪来るんだ。」

「オレは行かないって言ってるだろ。達樹‼達樹のところに行くんだ。離せっ‼」

無理に動いたせいで下條の持っていたナイフが頬を掠め血が流れる。

「凪っ‼」

血を見た達樹が充を殴り、引きはがすと下條の前に立つ。

「凪を離せ。傷つけるな。」

「凪はもう私の物だ。傷つけようがどうしようが関係ないだろう。それ以上近づくと凪を刺す。いいのか。」

ナイフがキラリと光る。

刃の先はオレの血が付いていた。

「くそっ。」

「凪もだ。これ以上抵抗するなら充にコイツを始末させるぞ。いいのか?」

充を見ると手にナイフを持って達樹を睨みつけている。

その目は殺気を帯びていて、下條の命令で達樹を刺す事など平気で出来るのだと言っているようだった。

達樹を傷つけるのだけは嫌だ。でも下條の元へも行きたくない。

シャツの前ははだけ、ズボンも今にも落ちそうになっている事に気が付いてふと閃く。

「わかった。もう抵抗しない。でもこのまま外を歩いたら、通行人が不審に思って警察を呼ぶぞ。服だけでもちゃんと着させてくれ。」

「凪っダメだ。下條の言いなりになるな。」

「達樹…。オレは達樹を守りたい。」

「さっさと服を直せ。それくらいは待っててやる。」

喉元にナイフを突きつけながら服の乱れを直す。

直しながら達樹を見てそのまま視線を公園の外へと流す。

達樹わかってくれ…。そう思いながら…。

とにかくここから外へ、人目のあるところへ行けば何とか出来るかもしれないと思った。

オレだけじゃなくて達樹も一緒に逃げないといけない。どちらが捕まってもダメだ。

だから二人で逃げなければいけないんだ。そう思って達樹に視線を送った。

あまり見ては下條に感ずかれてしまうから、視線を送ってそれからは達樹を見ていない。

達樹に伝わったと信じるしかない。

オレは一つ深呼吸し、顔を上げる。

「出来たか。行くぞ。」

「誰がお前となんか行くかっ。達樹っ‼」

「おうっ‼」

達樹とオレは一斉に相手を突き飛ばすと公園の外に走り出す。

先に走り出した達樹がオレの手をしっかりと掴んでくれて二人で走った。

「まてっ‼」

後から下條が追いかけて来るが達樹に手を引かれたオレは飛ぶように走った。

すぐそこが公園の外だったはずなのに、反対側に走ったせいでなかなか公園から出られない。

もうすぐ外に出られると言う時にオレの足が悲鳴を上げた。

「っつ…。」

前のめりにこけ、達樹と手が離れる。

「凪っ‼」

「はぁ…はぁ…。ごめ…足が…。」

「大丈夫か。」

「うん。まだ…走れる…。っつ…。」

痛みで顔がゆがむ。

「何だよ。この役立たずの足っ‼達樹、行こう。」

「走るのは無理だ。」

「走れるっ。このままじゃ下條が…。」

「凪をおぶって走る。のれっ。外まですぐそこだ。早くっ。」

迷っている暇はなかった。以前のオレなら一人で逃げろと達樹に言ってただろう。でも今は達樹と二人で逃げるって思える。達樹を頼って二人で。

オレが達樹の背中にしがみつくと満足そうにニッって笑って達樹は走り出す。達樹もオレと同じ気持ちだったのかな?

「凪、また食べてないだろう。軽くなってる。」

「今はそんな事を言ってる場合じゃないだろう。」

「これが片付いたらメシ食いに行くぞ。」

「片付いたらな。」

すぐそこに下條が迫っていた。

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