月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時32

 ←やさしいkissをして91 →日菜太とラルクのイラスト頂きました☆
しばらく参考書と睨み続けて切りのいいところまで進めてペンを置いた。

この先の事はわからないが学はあった方がいい。

大学に行けない事も踏まえている。

俺の自由に出来る金なんてない。

この裕福らしい生活も、高校も父親が金を出してくれているから出来る事であってそれが未来永劫続くなんて考えてもいない。もしかしたら明日にでもなくなってしまうかもしれない。

実はそれはずっと前から持っている不安だった。

だから密かに株の勉強をしている。

今は高校生で取引が出来ないので勉強どまりだが、損する事なく儲かっている計算だ。まあいつも儲かるとは言えないが…。

新規の事業についても考えていた。ただこれには少し元手がいるからやはりまずは株だろう。
流星は蒼井の会社を継ぐだとか、蒼井に養ってもらう事は考えてもいなかった。
早く自立したいと思っていた。

バイトをする事も考えたが、蒼井は許さなかった。
蒼井の名のつくものがアルバイトなどする必要がないと言われたのだ。

それを無理に押し通したとしても、片桐に迷惑をかけるだけだし、きっとアルバイト先に圧力をかけて辞めさせられる事はわかっている。

結局のところ流星が嫌がっても蒼井に縛られているのだ。逃げる事の出来ない籠の中の鳥なのだ。

でもそれは流星側の事であって、蒼井からすればいつでも捨てられる駒である事には変わりはない。正妻の子供ではないのだから。

会った事もないが正妻には男の子が二人いるらしい。その子供が蒼井を継ぐのは確実だろう。流星が入る場所などないのだ。

そこまで考えて流星は小さくため息をこぼす。

日菜太みたいな家だったら俺は幸せになれたのだろうか?

愛される事を信じられたのだろうか?

オーディオの傍でレコードを取り出す。

CDの音も美しいと思うが流星はレコードの音が好きだった。

針が溝を滑る時に時々聞こえるノイズが機械音ではないと思えて…。何だか人間臭いような気がして時々聞いていた。

「流星それレコード?」

いつの間にか起きた日菜太が傍に立っていた。

「ああ。今じゃもう珍しい。」

「一緒に聴いてもいい?」

「ああ。」

二人でソファーに座りその音に耳を傾ける。

二人の間には一人分の距離がある。

「きれいな音だね。俺はクラッシックなんて聴かないけど流星はよく聴いてるよね。」

「旋律が綺麗だからな。どうも他の音楽は騒々しくて苦手だ。」

「そう。クラッシックって自分の心を揺さぶるね。その曲、子供の頃に聞いた事がある。昔の事とか思い出しちゃうよ。」

そう言った日菜太の肩が少し震えているのに気が付いた。

「どうかしたのか?震えてる。」

「これ、小さい頃に父さんと母さんと聞いた事がある。流星…。俺は自分の両親を殺したんだ。」

突然の日菜太の告白に驚いたが、日菜太の震えは一層ひどくなって抱えているものの重さに潰れてしまいそうに見えた。



「実際に自分で殺したんじゃないけど、俺が殺したようなものなんだ。」

目にいっぱいの涙を浮かべながら日菜太がボツボツと話し出す。

俺が聞く事で日菜太は救われるのだろうか?ふとそんな事を思った。



「あの日、家族で近くのテーマパークまで出かけたんだ。俺の誕生日で俺が行きたいって言って。」

ぽつぽつと話し出した日菜太の顔色は見た事もない程青ざめていた。

日菜太の話では行ったときは天気だったのに夕方から夕立が酷く降り始めたんだそうだ。高速道路で後部座席に座っていた日菜太が後ろから運転する父親に話しかけて注意が日菜太にいってしまいハンドル操作を誤って中央分離帯に激突した。

車のフロントは無残に凹み、父親は即死だったのか呼びかけにも声を出すことはなかったらしい。

日菜太は後部座席に投げ出されたが、テーマパークで買ったたくさんの大きなぬいぐるみがクッションになりまた、日菜太の隣に座っていた母親に庇われてそれほどの傷は追わなかった。

ただ母親も日菜太を庇ってシートの間に挟まれ日菜太を抱きながら冷たくなっていった。

「母さん、自分の方が痛いし苦しいはずなのに俺の事ばっかり心配するんだ。『日菜太大丈夫?母さんが守ってあげるからね。』って。俺が悪いのに、俺さえ父さんに話しかけなければ事故になんてならなかったんだ。母さんもそのうちしゃべらなくなって、身体が冷たくなっていって…。レスキューが助けてくれた時には…もう…。」

日菜太は涙を浮かべてはいるものの泣いてはいなかった。ただ顔色は色がないほど白くなっていた。身体の震えは止まらない。

「父さんと母さんは駆け落ちだって言ったよね。だから俺は両親が亡くなっても行くところがなかった。俺は父さんと母さんを殺してしまったから誰からも必要とされない。愛される資格はないってあの頃は思ってた。」

涙をいっぱいに貯めた目で俺を見る日菜太が儚く消えそうで思わず抱きしめた。

日菜太の身体が一瞬ビクンと跳ねる。

身体が冷たく、特に手先は氷のように冷え切っていた。

「行くところがなくて施設に入れられた時、自分は生きている価値がない、愛してくれる人はいないと思ってたから下を向く事しか出来なかった。苛められても仕方のない人間なんだって思ってた。」

そうだ。あの頃の日菜太はいっつも下を向いていた。だから日菜太だったってわからなかった。

「なのに…。」

日菜太が俺の顔を見上げる。少し顔色が差している。

「流星はいつも俺を助けてくれた。嫌で嫌でたまらない時に流星を見たら頑張れたんだ。だって流星はいつも一人でそれでも顔を上げていろんな事から闘っていたから。」

「そんないいもんじゃない。俺は舐められたくなかっただけだ。それに日菜太を助けたのもそいつに俺がいじめられたことがあるからだと言っただろう。」

「それでもあの頃の俺は流星がいたおかげで生きる事が出来た。流星のように強くなりたいと思った。流星は優しかったよ。」

「優しくなどない。お前が勝手にそう思っているだけだ。」

「今も優しい。こうして俺を抱きしめていてくれる。流星がいれば俺は強くなれるんだ。」

日菜太の震えは止まっていた。身体も温まって来たようだ。なのに涙がとめどなく溢れている。

「あれっ?おかしいな。涙が止まらない。父さんと母さんの話をする時は泣く資格なんてないと思ってたから泣く事なんてなかったのに…。」

「それだけ自分が悪いと追い込んでいたんじゃないのか?泣く事も出来ないくらいに…。」

「そう…なのかな…俺泣いてもいいのかな?…父さんや母さんは俺の事恨んでるだろうな…。」

「どうしてそう思うんだ?お前の両親はお前を守ろうとした。自分の命を引き換えにしても。その時の事故の事は俺にはわからないが、父親がハンドルを正面に切ったのは後部座席の母親とお前を守るためじゃないか?ハンドルを右に切って正面からぶつかるのは意識的にしないと無理だろう。人間はまず自分が助かろうと本能が働くからな。」

「父さんはわざとハンドルを?…。そんな…。そんな事考えもしなかった。」

「母親もお前を守ろうと自分の身体で盾になったんだ。お前はちゃんと愛されている。恨まれてなんかない。生きて欲しいと両親が願ったから今のお前がここにいるんだろう。」

「流星…流星…。」

俺は胸にしがみつい泣きじゃくる日菜太の頭を何度も撫でていた。


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