月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時34

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日菜太が家に帰ってやっと静かな自分の時間が持てるというのに、何だか忘れ物をしているみたいな気分は何なのだろう。

せっかく作ってくれたハヤシライスも半分ほどで食べる気がしなくなった。

弁当ならそのまま捨てていただろうに、日菜太の作ってくれたものは捨てる気がしなかった。

そのままラップをかけて冷蔵庫にしまう。明日の朝にでも食べようと思った。

一人に戻っただけなのに何だか部屋が広く感じて…。日菜太は数日いただけなのに…。

「ラルクどうやら俺は寂しいと思っているらしい。こんな感情はとうに忘れたはずなのにな。お前も寂しいか?」

「ニャーー。」

ラルクが温もりを求めるように俺の膝をよじ登って来る。

「そうかお前も寂しいか。」

ラルクを日菜太がしていたようにあやしているとインターホンが鳴り片桐が嬉しそうな顔をして立っていた。

「ええっ‼日菜太くん帰っちゃったんですか?彼にと思ってケーキを買って来たのに。まあバウンドケーキだから日持ちはするんですけどね。残念だなあ。彼の笑顔が見れると思っていたのに流星様の仏頂面しか見れないなんて…。」

「じゃあ帰れ。」

「せっかく来たんですからコーヒーでも飲ませて下さい。ん?何だかいい匂いがしますね。」

「ああ。日菜太がハヤシライスを作ってくれたんだ。もっともあいつは親が迎えに来て食べる前に帰ってしまったが…。」

「じゃあ流星様はお一人で召し上がったんですか?」

「半分だけだがな。作ってもらったものでも一人では味気ない物だな。」

「そんな風に流星様が思うなんて…。では二人で食べませんか?」

「お前とか?」

「ええ。日菜太くんでなくて悪いのですが、ちゃんと召し上がって頂きたいので。それに私も御相伴に預かりたいんです。日菜太くんの料理は温かい味でおいしいですから。」

日菜太の料理を認めてもらうと嬉しいと思う。それに一人で食べるより、片桐とでもいっしょの方がおいしく食べれるかもしれないと思った。

俺はさっき食べ残したハヤシライスをレンジで温め、片桐はハヤシライスを温めなおして自分の物を用意し、二人でテーブルをはさむ。

「流星様と食事なんて初めてですね。あなたは冷たい弁当しか食べなないので一緒に食べる気にもなりませんでした。」

「そうだな。人に作ってもらう事がないから。自分で作る気にもならないしな。」

「では頂きましょうか。流星様もちゃんと『頂きます』と言って下さい。前から気になっていたんです。せめて人様とごはんを食べる時はちゃんと言って下さい。」

「いいじゃないかそんな事言わなくても。」

「ダメです。日菜太くんに失礼ですよ。作ってもらった感謝の意味も込めて言って下さい。」

「片桐はいちいちうるさい。わかったよ。いただきます。」

「いただきます。」

いつも一人で食べていたから『いただきます』なんて言う習慣はなかった。そう言えば日菜太はいつもちゃんと両手を合わせて言っていたな。

「おいしいですね。たくさん作ってくれてましたよ日菜太くん。」

「知っている。これじゃ明日もハヤシライスだ。2,3日はあるだろうな。」

「じゃその間は弁当じゃなくなりますね。きっと日菜太くんはそこまで考えてハヤシライスにしたのでしょう。」

「これからも俺の都合のいい時は晩飯を作りに来て一緒に食べると言っていた。」

「本当ですか?それは嬉しいでしょう流星様。」

「何でそこで嬉しいとか言うんだ?」

「日菜太くんがいなくなって少し寂しいとか思われてたのではないですか?」

「だ、誰がそんな事を思うかっ。いなくなって静かになってせいせいする。」

「はいはい。正直じゃありませんね。でもそんな表情が出来るようになっただけよしとしましょう。」

「何だっ。その物言いは。寂しくなどないと言っているだろう。」

「そうですね。流星様は寂しくない。あ、口元にご飯粒が付いてますよ。子供じゃないんだから…。」

「ムッ。どこだ。ここか?」

「嘘です。何もついていません。流星様が可愛げのない事を言うので嘘をつきました。」

「片桐っ‼」

「フフッ。おかわりしてもいいですか?本当においしいです。私の恋人の作る料理にも負けないぐらいです。そうだ、今度ハヤシライスを作ってもらいましょう。うん、それがいい。」

片桐は一人で嬉しそうに鼻歌を歌いながらおかわりをよそいに行く。

「あんまり食べるな。俺のが無くなるだろう。」

「おや。食には関心がないのでは?それとも日菜太くんが作ったものだからですか?」

「うるさい。それは日菜太が俺に作ったものでお前の為に作ったものじゃないんだからな。」

「はいはい。わかってますよ。このハヤシライスには日菜太くんの愛情が溢れていますからね。彼は本当に流星様の事が大好きなんですね。」

「そのうるさい口を閉じろ。それ以上言うと追い出すぞ。」

「本当に流星様は日菜太くんの事になると感情が豊かになられるので私は安心するのですよ。年相応の表情が見れて…。」



慈しむとはこんな目をいうのだろうか?

片桐の目が優しく俺を見つめている。

「俺にもおかわりを入れてくれ。」

そんな片桐の目を見ていられなくて顔をそむけて空になった皿を出す。

「食欲のあるのは良い事です。」

そう言いながら俺の分も新しくよそい二人でおかわりを食べる。

片桐とこんな風に時間を過ごす事は珍しい。

いつも業務的にしか接してこなかったから、ここに来ても確認と連絡事項だけを言って帰っていくのが当たり前だった。

ラルクと日菜太の存在がこんな時間を作るようになったのだ。

こうして片桐といると片桐も俺の事を心配してくれているのだという事がわかる。

俺が気が付いていないだけで、周りの人は俺を見てくれていたのだろうか?

でも…。父親は…。

俺の中で一番愛して欲しかった人だ。

家族の愛が欲しかったんだ。

それは叶わない願いだとわかっていても欲しかったのだと思う。

「父さんは元気なのか?」

俺の口からこぼれた言葉に片桐が驚いているのがわかった。


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