月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時35

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「父さんは元気なのか?」

俺の口から出た言葉に片桐が驚いている。

俺も自分でなぜこんな言葉が出たのかと思ったが、それは日菜太の告白が要因しているのだと気が付いた。

日菜太の苦しみ。実の親を自分が殺してしまったのだと言った時の話が俺の心を揺さぶったのだ。

日菜太はもう本当の両親には会いたくても会えない。

自分を許せなくて、愛される事も愛する事も放棄しそうになり、それでも俺が救ってくれたのだと、今の自分があるのは俺がいたからだと言った日菜太。

今の日菜太は誰からも愛されて、俺を愛してると言った。

俺は愛されている?

愛を信じようとする気持ちが目覚めているのかもしれないが、それを否定しようとしている自分がいる。

それは父親に愛されなかった幼い頃の自分だ。

父親に愛されていたなら俺は愛を信じただろう。

会えなかったとしても父親を愛していられたと思う。

でも俺は父親に愛してもらえなかった。

やさしい言葉もかけてもらえなかった。

寂しい時にいてもらえなかった。

あんなに愛される事を渇望していたのに、少しの愛情ももらえなかったのだ。

それでも俺の父親だ。

あの人がいなかったらこの世に俺はいなかった。

一時期は生まれてきたことを恨んだりもしたが、母親が俺が生まれてきて嬉しかったと言っていた事を思い出してこんな俺でも母親にとっては救いだったのだろうと思うようにした。

母親が喜べたのなら俺にも存在理由があったという事だと。

ただ、母親のいない今の俺に存在理由があるのかがわからない。

「社長はお元気ですよ。精力的に仕事をこなしてらっしゃいます。どうです?たまには社長と一緒にお食事でもなされては?」

「いや。それはあの人が嫌がるだろう。それに家族とか仕事の邪魔にはなりたくない。」

「流星様も社長の家族ですよ。」

「俺は家族なんかじゃない。あの人のお荷物だよ。いなくても困らないさ。」

「そんな事‼社長は流星様の事を気にかけておいでです。だから私を流星様の傍においているんです。」

「俺が羽目を外さないようにだろ。安心しろ。もうバカな事はしない。ちゃんと学校にも行ってる。俺は…いつかは蒼井から離れるつもりだ。それがいいと思う。」

「そんなっ‼そんな事を社長は望みません。」

「あの人が望む望まないは関係ないんだ。俺はあの人のお荷物でいるのは嫌なんだ。今はこうして蒼井に庇護されているけど、どれがいつまで続くかわからない。怯えているのはもうたくさんだ。それなら一人でやっていく。名前だって蒼井じゃなくて母さんの旧姓だっていい。」

「とにかく早まらないで下さい。」

「ああ。すぐの話じゃない。俺には自分で自由に出来る金もないしな。」

片桐を驚かせるような事を言ってすまないとは思うが、いつかは言おうと思っていた。

片桐はよくしてくれてはいるが、それとこれは別だ。

片桐もいつかは俺の元からいなくなる人間なのだから。

日菜太もそうだ。所詮いつかは離れていく人間。

冷える心。俺は人の気持ちが信用出来ない。

今はそうでも心は変わっていくものだから。俺は他人を信じる事の出来ない臆病者なのだ。

暗い空気が部屋の中を覆い、片桐が片付けをして帰って行った。

片桐もいたたまれなくなったのだろう。



布団の中で今日も浅い眠りの中でたゆたう。

お前は何を求めているのだと闇の中で囁く声は聞こえる。

何も求めてはいない。俺は無なのだと言っても同じように問いかけてくる。

求めて答えてもらえないからお前は悩むのだろうと声が言う。

そうなのかもしれない。

では俺は何を求めているのか?

自問自答しても答えは出てこなかった。




次の日学校に行くと日菜太が俺の机の傍にやって来た。

「流星おはよう。昨日はごめんね。母さんが流星にありがとうって言ってた。」

「ああ。別にお礼を言われるような事はしてない。」

「あれ?怒らないの?」

「何を?」

「だって学校では話しかけてくるなって言ってたから。」

「ああ。そうだったな。日菜太の好きにしろ。言ったところでお前は話しかけてくるだろう?」

「ほんとに?やった‼」

「でもしつこかったら怒るぞ。」

「わかった。で、昨日のハヤシライスどうだった?」

「うまかった。片桐が来ておかわりまでして帰ったからあんまり残っていない。2,3日は食べれると思っていたのに。そうそうに弁当になりそうだ。」

「じゃ、あさってごはん作りに行ってもいい?母さんから流星にお土産あるから渡したいし。」

「別に構わないが、お前も用事があるだろう。友達との約束とか。そういうのをキャンセルまでして俺のところに来なくていいから。」

「あさっては約束してないから大丈夫。じゃあさっては一緒に食べようね。」

「ああ。」

こうして日菜太と食事をする機会が増えていった。

時には片桐が混ざる事もあり。俺の夕食はいつの間にか一人じゃなくなる事が増えていって、反対に一人の時は寂しく思えるほどだった。

でも一人の時も弁当を食べる事はない。

前日に日菜太が作って冷蔵庫に入れてくれていたから。

それに千切り大根とかひじきとか日持ちのするものが冷蔵庫に常備されるようにもなっていた。

これでは一人でいる事がしんどくなってしまう。そう思い始めた頃にあの人が突然家にやって来たのだ。

「流星久し振りだな。」

「父さん…。」


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