「キミと空とネコと」
やさしいkissをして

やさしいkissをして92

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オレをおぶって走る達樹の体温を感じて。ズクンと身体が熱を持つ。

さっきまでは一人で必死で何とかしなくちゃと思ってたけど、今は傍に達樹がいる。

安心して甘えてしまっているのかもしれない。

ずっと欲しかった温もりがここにある。

達樹の匂いがする。

薬が切れたわけじゃないから些細な事でも感じてしまう。

大好きな達樹から与えられる温もり、達樹の匂い全てがおれの五感を震わせるんだ。

「あとちょっとだけだから頑張れ凪。」

「う…ん…。」

達樹の声さえも身体を震わせる。

快感の方へ行きそうな意識を後ろからの気配が押し戻す。

でもオレを背負って走る達樹と、一人で全力疾走している下條とではあっと言うまに差を縮められてしまい下條の気配が近づいて来た。

「クソッ。」

下條に追いつかれて達樹はオレを背中から降ろすと、後ろに隠すようにして下條に対する。

「さあ凪を返しなさい。そうすればキミの事は許してやろう。」

「誰がお前なんかに大事な凪を渡すか。お前が凪にした事は犯罪だ。許せるわけないだろう。」

「犯罪でも何でも凪を手に入れる為なら何でもしますよ。例えあなたを葬ってでもね。」

「そんな事はオレがさせない。達樹はオレが守る。」

「凪…。オレは凪の事を守る。」

しっかりと目を合わせて誓い合う。

「そんな茶番はもうおしまいです。充、お前は彼を葬りなさい。その間に私は凪を連れていく。後は充、お前一人でやったのだと言いなさい。凪の事は他言無用だ。そうすれば凪は永遠に私のもの。充お前の代わりは凪がするから安心しなさい。もう帰って来なくてもいい。」

「え?帰って来なくても…。下條様?ボクは…。」

「私は頭の悪い子は嫌いです。もう要らないと言ったのです。キミの自由になさい。それよりも凪が早く欲しい。」

「し…もじょ…。」

「ええいっ。愚図も嫌いです。さっさと始末なさい。」

「ボクは…ボクはずっとあなたの傍で仕えていたい…。ボクにはあなたが全てなんだ。」

「しつこいっ。お前などもう要らないのだよ。私は凪がいいんだ。」

「うわ~~~~~っ。」

充が大きな声をあげ下條の方へ駆け寄って来る。手にはナイフを握りしめて…。

「充ダメだっ‼」

オレの声は充には届かなくて…。

下條と充の身体が交錯して下條が膝を折った。

地面に血がしたたり落ちる。

達樹もオレも下條が刺されたのだと思った。

でも地面に倒れたのは充だった。

「充っ‼」

思わず大きな声で充を呼ぶ。

「邪魔をしやがって‼この役立たずの愚図がっ‼」

地面に倒れている充を蹴り飛ばしながら下條が罵倒する。

「下條、てめえっ‼」

オレは下條が許せなかった。

充も許せないけど、充は下條を慕っていた。あんな下條だけど充は多分愛してたんだ。だから下條に言われた通りにしてた。好きだから…。たとえそれが間違っていたとしても、歪んでいたとしても…。
最後に要らないと言われて気持ちの行き場をなくしてしまったのだろう。そんな充を下條は足蹴にした。

充を刺しても平気でいる下條が憎くて、オレは下條に体当たりしたんだ。

足が痛いとかそんな事は頭から抜けていて、怒りで頭が沸騰しそうだった。

オレの体当たりをまともに食らった下條はそのまま後ろへ倒れ込みオレはその上に馬乗りになり胸倉をつかんで揺さぶった。

「おまえには人の気持ちがわからないのかっ。充がお前を慕っているのをわかっててお前は要らないなんて言ったのか?充の気持ちを知ってて利用するだけ利用したのか。」

ガクガク揺すぶっても下條はへらへら笑うだけで何も言わない。

「このやろうっ‼」

下條を殴ろうと手を振り上げた時に達樹にその手を掴まれた。

「凪やめろ。こいつに殴る価値はない。そいつを縛るから凪はそいつから離れて救急車を呼べ。充を病院に運ばないと。意識はあるみたいだから早く。」

「あ、ああ。」

オレは充の傍に行くと傷口を確認する。

足を刺されて出血はしているが意識はハッキリしているようだ。

「ボクはバカだ。必要と思われてると思ってたのに…。」

「充…。」

目から涙をこぼし静かに泣いている充にオレは言葉をかける事でも出来ず、傍に座り込んでいた。

「凪くん大丈夫?遅くなってごめん。」

そこに警察官を連れて響夜さんとカイトさんが走って来る。

「警察の人がなかなか来てくれなくて…。証拠のビデオも押収したから。」

「すまん遅くなって。凪くん血が出てる。」

「オレのはかすり傷です。充が下條に足を刺されて…。救急車は呼んだんですけど。」

「止血しないとな。」

響夜さんは自分の着ていたシャツを脱ぐと充の足に当てて傷口を圧迫させる。

そのうちにサイレンの音がして救急車が到着し充はそのまま病院に運ばれていった。

下條もパトカーに乗せられて行く。

「凪大丈夫か?」

「達樹…。」

優しい達樹の声に張りつめていた糸がプツリと切れて意識が遠くなる。

「ごめ…。」

ありがとう達樹って言いたかったのに最後まで言えずにオレは意識を手放した。


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