月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時39

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まただ。朝起きたら俺は日菜太を抱きしめて、日菜太は俺に抱き付いて寝ている。

ラルクは俺達の頭の上で丸まってクークー言って寝ていた。

どうしてか一緒に寝ると朝はこの体勢になっている。

寝る時は離れていて間にラルクがいたはずなのに…。

でもこうして寝ている時はしっかりと熟睡出来るのだ。

俺は日菜太を抱いていた手を離し、日菜太と距離を取ろうとした。

「離れない…。」

日菜太を離そうにもしっかりと俺に抱き付いているから離す事が出来ない。

無邪気に気持ちよさそうに寝ている日菜太を見ると無理に離すのも可哀想になり諦めてもう一度横になる。

どんな夢を見ているのか、嬉しそうな顔をして…。

昨日の夜は思いがけず日菜太にピアノを聞かれてしまい心配されてしまった。

音にはその時の感情がシンプルに現れる。

今までは一人で弾いてたから誰にもその時の感情を知られる事もなかった。

一昨日のあの人の背中が思い出されて、不可解な感情に取りつかれていた。

憎いだけの人。憎いというのとは違うのか…。

俺の父親だけど父親じゃない人。

俺の手に届かない人。

諦めた人。

なのにあんな風に俺の中にとどまる様な姿を見せたりして…。

本当に何がしたかったんだろう。

気にならない、気にしないというのは無理だ。

現に今もあの姿がちらつく。酷く疲れた背中が…。

「片桐さんに聞いて見たらいい。」

日菜太はそう言った。こともなげに…。

片桐に聞くなんてそんな事考えもしなかった。

自分の事は自分でカタをつけるしかないと思っていたから。

そう俺は人に頼るとかいう観念がない。

だから日菜太に言われてそうなのかと思ったくらいだ。

片桐の仕事が落ち着いて連絡が来たら聞いてみようか。

その時は日菜太にも居てもらおう。俺と片桐じゃ喧嘩になるかもしれないし、思うように言えない気がする。

日菜太がいれば俺が言えない事も言ってくれるだろうし、上手く言えない俺の代わりに聞いてくれたりするだろう。

日菜太は境遇は違うが、親の愛情を欲しがっていた俺の気持ちをわかってくれると思うから。

もしかしたら俺は今でも父親からの愛情を求めているのだろうか…。

「う…ん…。流星起きたの?」

「ああ。少し前にな。起きようと思ったがお前が離してくれないから起きれない。」

「ん?うわっごめん。俺、また流星に抱き付いてるっ。」

「何だ。気が付いてたのか。」

「うん。前に泊まった時流星は寝てて、俺が先に起きてその時に流星に抱き付いてたから…。」

「でも朝はいつもお前は俺に引っ付いてるぞ。離れてたことなんてなかったと思うが?」

「へへ。その時も流星があったかいから引っ付いて寝なおした。」

「温かいのはお前だろう?俺は日菜太みたいな子供体温じゃない。」

「ひっでー。子供体温とか言うな。」

「目が覚めたなら起きるぞ。何か食べるものあったか?」

「なー。今日は二人で遊びに行こうよ。朝どっかハンバーガー屋さんででも食べてさ、そのまま遊びに行こう。俺遊園地行きたい。」

「遊園地だと?男2人でか?」

「いいだろ。遊園地が嫌なら水族館とか。」

「男二人で水族館ね…。」

「何だよ。いいじゃんか。俺は流星とどっかに行きたいんだ。お花見は桜がまだ満開じゃないし、どうせお花見に行くなら弁当持って行きたいしさ。」

「花見か。昨日もそんな事を言っていたな。でも取りあえず起きるぞ。」

二人で布団から出て順番に顔を洗いラルクに朝飯を食べさせる。

日菜太にはココア、俺はエスプレッソを入れて今日はどうするか話をした。

俺は家で静かに過ごしたいのだが、そんなのいつでも出来るだろうと日菜太が譲らない。

「それなら日菜太一人で行けばいいだろう。お前は友達が多いんだから誰でも誘えば喜んで行ってくれるぞ。」

「流星と行きたいって言ってんの。ほかの奴となんか行きたくない。」

「俺は静かに過ごしたい。読みたい本もあるしな。」

別に日菜太と出かけてもいいのだが、日菜太の拗ねる顔が可愛いし、クルクル変わる日菜太の顔を見ていると楽しいので行かないと言ってみる。

「流星と出かけたい~~~!映画でもいいからさ。行こうよ。」

「俺は人ごみは好きじゃない。映画がみたいならDVDを借りてここで見ればいいだろう。プロジェクターもあるし、7.1Chのスピーカー配置だ。臨場感も味わえるぞ。」

「すっげー。ってそんな事じゃなくて…。もういいよ。」

完璧に日菜太が拗ねた。やりすぎたか…。

「仕方ない。付き合ってやる。日菜太はどこに行きたいんだ?」

「ほんとに?じゃ遊園地。映画はここで見る。帰りにDVD借りて帰ろう。」

「お前今日も泊まるつもりか?」

「ダメ?」

「ダメじゃないが、ご両親が心配するだろう。休みだからって外泊続きはどうかと思うぞ。」

「じゃ、流星が家に泊まりに来なよ。母さん達も流星に会いたがってたし。」

「何で俺がお前の家に遊びに行かなくちゃいけないんだ?」

「そうだ。今日は遊園地はやめて俺の家に行こうよ。そうすれば母さん達に流星を紹介出来るしさ。」

「行かない。俺はそういうのは苦手なんだ。」

「大丈夫だよ。母さん達は流星の事好きだから。」

「何で会ってもいないのに好きだとか言えるんだ?」

「俺が家で流星の話ばっかりしてるから。きっと母さん達は俺ぐらい流星の事知ってるかもしれない。」

「はあ~。お前どれだけ俺の話をしてるんだ。恥ずかしい奴だな。」

悪びれる事もなくこともなげに言う日菜太に呆れる。

俺の話ばっかりする日菜太の事を両親はどう思っているのだろうか。

「日菜太これ以上両親に俺の話はするな。きっとご両親は俺の話ばかりするお前の事を心配してるに違いない。」

「心配なんてしてないよ?俺流星の事好きだってこないだカミングアウトしたし…。」

「バッ‼…おまっ…なんて…!?」


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