月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時41

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部屋では日菜太が喜々として俺の”お泊りセット”を用意している。

最初は俺が日菜太に聞きながら用意していたのだが、俺が用意するものはダメだとか、あっちがいいだとか、他のはないのとかとにかくいちいち文句を言うので日菜太の好きなようにしろと投げ出したのだ。

まったく母親か嫁のようだ。

といっても俺は母親を良く知らないし、嫁というものがどんなものなのかも知らないのだが…。

それに日菜太は男だから、母親でも嫁でもないか。

て何をバカな事を考えているのだ。

俺は日菜太と関わりだしてからすごくバカな事を考えるようになった気がする。

「あ、日菜太。俺はお前の家には泊まれない。ラルクがいるから無理だ。」

ラルクを一人で留守番させるのは嫌だと思った。

こんな広い部屋で独りぼっちだなんて寂しすぎるだろう。

「ラルクも連れてきたらいいよ。みんな動物好きだから。家には何もいないけど。」

「しかしトイレとかも持って行かないといけないんだぞ。荷物が多すぎるし、何よりラルクが初めての家や人になれるかわからないだろう。ラルクが嫌がる様な事はしたくないんだ。」

「う~~~ん。そうだね。じゃ家に連れて行ってダメなら帰ってくれば?その時は俺がここに泊まってもいい?」

「お前なあ。自分の家で寝ろ。俺の所に入りびたりになるな。もしラルクが嫌がったら俺とラルクは戻るが、お前は自分の家で過ごせ。日中に遊びに来ればいいだろう。毎回泊まる事を考えるな。」

「チェーーッ。流星のケチ。」

「ケ、ケチって…。」

お前は子供か…。

俺は家族が離れているのが嫌なんだ。

例え実の両親でなくても今の両親と日菜太が離れて過ごすのが当たり前なるような事はしたくない。日菜太の家族は見ていて幸せな家族だろうと思うから。

社会に出たら日菜太も独立するだろう。それまでは出来るだけ一緒に過ごす時間も必要なんじゃないかと思う。

「これで流星の用意はOK。あとはラルクの用意だ。」

日菜太は今度はラルクのお泊りセットを用意しだした。

俺はそんな日菜太の様子をコーヒーを飲みながら見物する。

そんな風に時間を過ごしていると片桐がやって来た。

「流星様お久しぶりです。元気そうで何より。で日菜太くんは?」

日菜太は片桐は日菜太の事よりも俺の事を気にかけていると言っていたが、それは日菜太の勘違いだと思う。現に今、俺への挨拶をしながらも目は日菜太を探してたぞ。

「仕事が忙しいんじゃないのか?別に送ってくれなくてもいいんだが。」

「だから忙しかったけど落ち着いたって電話で言いませんでしたか?」

「やっと落ち着いたのならゆっくりしたいだろうと思って言っている。」

「流星様がお友達の家に行くなどという時にのんびりはしてられません。」

「おまえは爺やか。」

早く日菜太に会いたいのか少しうずうずしだした片桐を見て笑いがこみあげる。

「フッ。早くあがれ。日菜太に会いたいのだろう?」

「ええ。ラルクにも会いたいですよ。ではお邪魔します。日菜太くんこんにちは。」

「片桐さんだ。いらっしゃい。」

俺があとからリビングに戻ると片桐と日菜太は抱き合っていた。

「日菜太くんに会いたかったんです。お元気でしたか?」

「俺は元気だよ。片桐さんは忙しかったんでしょ。疲れてない?」

「日菜太くんは優しいですね。流星様はそんな言葉かけてくれませんでした。」

はいはい。俺は二人の再会劇を尻目に日菜太のココアを入れ直し、片桐にはエスプレッソを入れる。

今、あの二人の間に入っていけるのはラルクくらいのものだ。

一人で住んでいる時は片桐に飲み物を出した事もなかった。自分の飲み物でさえめんどくさくて、ミネラルウオーターばかり飲んでいた。

なのに今は日菜太にココアを、片桐と自分にはエスプレッソを入れている。

こうしてお茶を飲む時間が出来た事で、一人の時でもゆっくりとエスプレッソの香りを楽しむ心の余裕が出来た。

今までの単調な生活に少し彩りが出来たような気がする。

「いつまで話しているつもりだ。このままでは夕食の時間を回ってしまうぞ。」

いつまでも話し続けそうな二人に釘をさす。

「ほんとだ。いつの間にこんなに時間が過ぎたんだろう。片桐さんと話してると時間が経つのが早いな。」

「私もです。日菜太くんと話してるとあっという間に時間が過ぎてしまいます。さあ、これ以上時間が遅くなっては失礼ですから参りましょう。流星様ご自分の荷物はご自分でお持ちくださいね。」

「当たり前だ。俺はちゃんとラルクの用意も持っている。日菜太早くしろ。片桐は日菜太の荷物を持て。日菜太はラルクが逃げないようにちゃんと抱いてろよ。」

二人の返事を待たずに玄関に向かうとドタドタと慌てて日菜太が追いかけてくるのでクックッと笑いが漏れた。ラルクが急に抱かれたので驚いて日菜太の顔を前足で押さえつけていたからだ。

「ラルク俺の家にお出かけするんだって。暴れないで大人しくしてくれよ。」

「日菜太くんラルクが逃げないようにしてくださいね。」

「玄関閉めるぞ。」

バタバタと大きな荷物を持ちながら移動し、車に乗り込む。

「そう言えば片桐、手土産はどうした?」

「注文してあります。日菜太くんの家に行く時に寄って行きますがよろしいですか?」

「ああ。で、結局何にしたんだ?」

「高杉の洋菓子にしました。会社の女の子たちに聞いたらここのがいいって言われまして。」

「洋菓子か。片桐の事だから老舗の羊羹か何かかと思ったが、案外普通だな。」

「日菜太くんのお家は普通のご家庭ですからね。あんまり高級なものは喜ばれないかと思いまして…。」

「え?高杉の洋菓子?俺、大好き。この間、片桐さんが持ってきてくれたケーキも高杉?」

「あれはニッタです。私が好きなケーキなんです。」

「あれもおいしかったな。」

「よくそんな甘い物の話をしてられるな。聞いてるだけで胸焼けしそうだ。」

「甘いものが嫌いだなんて流星は絶対に損してる。」

「日菜太くんの言う通りです。」

この二人にかかるとたまったもんじゃない。それから俺は日菜太の家に着くまでしゃべるのをやめた。


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