月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時42

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日菜太の家に行く途中で手土産を買うからと片桐が車を停めて出て行く。

車に残された俺達は、日菜太の腕の中でクークーと眠るラルクを見ていた。

ネコというものはこんなに度胸の据わった動物なのか?

普通は車に乗るのを嫌がったり、車の中をウロウロして落ち着きがなかったりするもんじゃないのか?

ラルクは車に乗せた時こそ窓から外を見たりしたものの、すぐに日菜太の膝の上で丸まり寝始めたのだ。

「ラルクはネコだろう?ネコというものは普通は警戒心の強い動物ではないのか?ラルクは風呂に入れた時もそうだが、度胸が据わっているというのか、何に対しても嫌がるとか、怖がるという事が少ないような気がする。」

「そう言えばそうだね。でもそれくらいじゃないと流星と一緒にいれないよ。普通のネコじゃないから流星の傍にいてくれてるんだよ。」

「どういう意味だ。お前はラルクの事がわかっているかのように言う。」

「だって一番最初にラルクを見つけたのは俺なんだ。」

「一番最初に見つけた?どういう事だ?」

そう言えば、あの雨の日にラルクを見つけた時にラルクが濡れないように傘が立てかけてあった。あれは日菜太?

「ラルクの傍に立てかけてた傘は日菜太のか?」

「うん。俺拾ってやりたかったんだけど、最近飼ってた犬が死んだばかりで拾ってやれなくて…。母さん悲しんでたから。でも雨も降ってるしほっとけなくて傘さしかけて誰か拾ってくれないかって見てたんだ。」

日菜太があの時傍で見てたなんて気が付きもしなかった。

「みんなラルクを見て触るくせに、拾ってはくれなかった。でも流星は足元に縋り付いたラルクを抱いてくれた。抱いてくれたのは流星だけだったんだ。流星はラルクを抱いたまま来た道を戻って行って…。」

「よく俺だってわかったな。別れてから何年も経ってるのに…。」

「流星は小さい頃から変わらないよ。いつも凛としてて、強いまなざしをしてる。誰にも負けないってオーラが取り巻いてるからすぐにわかるよ。」

「誰にも負けないか…。」

確かにいつも他人に負けないように自我を保っていないと、騙されたり、利用されたりするかもしれないと思っていた。事実、騙された事も利用された事もある。

蒼井の性になってからは特にそう思うようになった。こちらが弱気に出れば相手はつけあがるんだという事を知ったのも蒼井を名乗りだしてからだ。

「やっぱり流星は変わらない。優しいって思った。」

「俺は優しくなんかないと何度言えばわかるんだお前は…。」

「流星がそう思ってるだけだよ。」

ラルクは自分の話をされているんのがわかるのか、時折ピクピクと耳を動かしている。

ラルクとの出会いは日菜太との出会いでもあったんだな。

ラルクが日菜太と出会わせてくれたのか?

日菜太と俺の架け橋。

「流星、今更だけどラルクを拾ってくれてありがとう。」

「何で日菜太が礼を言うんだ?」

「本当なら俺が見つけたんだから俺が責任を持って飼い主を探さなきゃいけないのに、俺は遠くから見てるだけだった。」

見てるだけだったと言う事に罪悪感を感じているのか?

普通なら捨て猫に傘を立てかける事もしないだろう。知らないふりで通り過ぎていると思う。それが日菜太には出来なかった。傘を立てかけても立ち去る事が出来ずにずっと見ていた。

「日菜太が罪悪感を感じる事はない。もし俺が通らなかったら、最後は日菜太はきっとラルクを連れ帰ったと思うぞ。お前はそういう奴だ。今回はたまたま俺がラルクを連れ帰っただけの事だ。もう気にするな。ラルクも気にしちゃいないさ。」

「そうかな…。」

「落ち込むなんて日菜太らしくないだろう。それよりも家にラルクを連れて行ってもいいのか?犬の事があるのに…。」

「大丈夫だよ。もともとみんな動物が好きなんだ。1日だけだし喜ぶと思う。」

「ならいいが、お母さんが嫌がったら帰るから。ラルクも嫌がったら帰る。」

「それは仕方ないね。」

両方が気に入るなんてあるんだろうか?もともとネコは家につくって言うくらいだから…。

「遅くなって申し訳ありません。」

両手に紙袋をぶら下げた片桐が戻って来た。

「どうして紙袋2つなんだ?会社にでも持って帰るのか?」

「いいえ。これは焼き菓子なんですが手土産に。こっちは日菜太くんにです。」

「え?俺?」

「ええ。いつも我儘で不遜な流星様と仲良くしてくれている日菜太くんに私からのありがとうの気持ちです。」

「うわ~~。何?何?」

「いろんなショートケーキを入れてあります。夕食の後にでも皆さんで召し上がって下さい。流星様でも食べれるようなフルーツカップのゼリーも入れてありますので一緒に召し上がって下さい。流星様一人が要らないと言うと皆さんが遠慮なさいますので、ちゃんとご一緒に召し上がって下さいね。」

「日菜太の為なんだったら何でもしそうな勢いだな片桐。」

「いえいえ、流星様が円滑に周りの方たちとも交流出来るようにですよ。」

「もういい。そう言う事にしておいてやる。早く車を出せ。遅くなる。」

「わかりました。」

それ以上言う事もなく片桐は車を発進させ、ほどなく日菜太の家に到着した。

「俺先に行って母さんに知らせてくるから荷物出しておいて。」

「ラルクは置いて行け。いきなりネコを連れて行って驚かせたら悪いし、ダメならこのまま帰る。」

「大丈夫だって。じゃ俺の荷物持って行くね。」

日菜太はそう言って家の中に入って行った。

片桐と俺の荷物やラルクの荷物を取り出していると、玄関から誰かが出て来た。

「まあ、かわいいにゃんこちゃん。この子がラルクちゃん?」

少女のようなその人は日菜太のように目をくりくりさせて車の中のラルクを見ていた。

「母さん、流星が驚いてるよ。何で流星通り越してラルクなんだよ。失礼だろ。」

「あら。ごめんなさい。流星くん?日菜太の母親の千夏です。今日はよくいらっしゃいました。お会いできて嬉しいわ。ウフッ。やっぱりカッコいいわね。日菜太の言う通りだわ。」

「初めまして。日菜太にはよくしてもらってます。蒼井 流星です。今日は甘えてしまってすいません。」

「いいのいいの。お父さんも楽しみにしてるのよ。今日は残業しないでまっすぐ帰るってさっきメールが来たのよ。あら、この方は?」

「申し遅れました。私、流星様のお父様の会社で秘書をしております片桐と申します。このたびは流星様がお世話になると聞きまして送って参りました。これからも流星様の事をよろしくお願い致します。」

名刺を渡し、片桐が挨拶をする。

「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ日菜太をよろしくお願いします。ところで片桐さんはこの後は?」

「会社に戻ります。まだ仕事が残っておりますので。」

「そうなんですか。良ければご一緒に夕食でもと思いましたのに。たいしたものは出来ないんですけど。」

「ありがとうございます。嬉しいです。また機会がありましたら。」

「ええ。その時はぜひ。」

「では私はこれで失礼します。」

綺麗にお辞儀をすると片桐は会社に戻って行った。

「さあ、家に入りましょう。ラルクちゃんお母さんにも抱かせてね。」

「ね、流星大丈夫だったでしょ。」

「お世話になります。」

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