月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時49

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日菜太からの連絡はないままで…。

どうしようかとさんざん悩んだあげく俺は一人でコンサートの会場にいた。

日菜太を待っていても来ないとわかっているのに、会場の中に入る事も出来ずに一人ロビーで椅子に座って人の流れが途切れずに続いていくのを見ていた。

なかなかチケットの取れないピアニストだけに、一般客の他に招待客もいるようで、一般客の入場口とは別に来賓用の入り口が設けられている。

きらびやかに着飾った人や正装した人が通り過ぎて行く。

別に見るつもりはなかった。 何気なく視線をさまよわせた先に偶然あの人を見つけてしまった。

「父さん…。」

俺の座っている椅子の斜め前にその人は中学生くらいの男の子と二人でいた。

あわてて下を向いて顔を見られないようにする。

「蒼井様お待ちいたしておりました。今回はスポンサーになって頂きまして本当にありがとうございます。」

このコンサートの責任者だろうか、何人もの正装をした男があの人の周りを取り囲んでいる。

そう言えばこのコンサートのスポンサーに「蒼井」の名前があった事をポスターを見て知った。

立ち止まって話をしていないで早くどこかに行ってくれ。

ここで俺が立ち上がれば否応なしにあの人の目に留まるから俺からは動けない。

「お父さんはボクがこのピアニストのピアノを聴きたいって言ったからスポンサーになってくれたの?」

「そうだな。それもあるかもしれない。」

「さすが蒼井様の息子さんですな。良いものを知っておられる。奥様の教育がいいのでしょう。今日は奥様は?」

「家内は今日は別の集まりがありましてそちらに行っております。、皆さんによろしくと言っておりました。」

「蒼井様の奥様はどこででも人気者ですからな。もう一人のご子息はお見えではないのですか?」

「兄さんは受験勉強で忙しいんだって。一緒に来ればよかったのにね。」

下を向いてても、子供があの人の腕につかまりながら甘えて話す様子がわかった。

正妻には2人の子供がある。

いまそこに居るのは弟の方だろう。

俺はあの人に触れる事もないのに、正妻の息子と言うだけで一緒に出掛けたり甘えたり出来る。

そしてあの人もそれを受け入れるんだ。

同じようにあの人の血を受け継いでいるのに俺とそいつとでは大違いだ。

膝の上に置いていた手を握りしめ、唇を噛みしめる。

俺はその一向が動き出したのに気が付かずに離れようと立ち上がり、あの人の息子にぶつかってしまった。

ぶつかった拍子に彼の持っていたパンフレットが床に落ちる。

「君、失礼じゃないか。」

周りにいた男がパンフレットを拾い「大丈夫ですか?」と声をかけている。

「すいません。」 俺は抑揚のない声で言い、顔を上げた。

あの人と、目が合う。

何か言われると思った。

あの人の息子も俺を見ている。

「貴也(タカヤ)行くぞ。」

「あ、待ってお父さん。」

そこに居た者はぞろぞろとあの人の後に続いて行き、ポツンと俺一人が取り残された。

オレは 開演のブザーが鳴ってもそこから動けなかった。

何も声をかけてもらえなかった。

それだけじゃない、冷たい目で見られ、無視された。

俺に気が付いたのに、無視したんだ。

別に声をかけて欲しかったわけじゃない。

だけどあんな冷たい目で見なくてもいいじゃないか…。

頭では血の繋がりはあっても他人だと割り切っていたつもりだった。

あの人と会う事はあっても、あの人の息子と二人でいるあの人に会った事はない。

当然のように俺は無視された。

正妻の子ではないというだけで…。

思っている以上にショックを受けている自分がいる。

頭で思っているのと現実とは違って俺は考えていた以上に傷ついた。

こんなに心が痛いなんて…。

俺はそのまま会場の外に出た。

ここにいたくない。

外はいつの間にか雨がザーザーと降っていて、傘なんて持ってない俺は濡れるのも構わずに雨の中を歩いた。

強い雨が俺の身体に打ち付けすぐにびしょ濡れになった。

いっそ何もかも冷たくなって何も考えられなくなればいい。

身体中冷えて、心も氷のように冷えて何も感じなくなればいい。

何も考えずに歩き、気が付けば家の近くの公園に来ていた。

雨の公園には誰一人としていない。

家に帰る気にもならず、電燈の下のブランコに腰掛ける。

暗い公園の中、そこだけが明るかった。

昔、母親と公園でブランコに乗って遊んだのを思い出す。

俺がブランコに乗って母親が背中を優しく押してくれた。

母親も俺も嬉しそうに誰かに向って笑ってたっけ…。

そう二人で誰かを呼んで笑ってたんだ。

もう遠すぎる思い出。

それからどれくらい雨に打たれていたのか…。

すっかり身体は冷え切って、指の感覚もなくなっていた。

ふとザーザーと俺の身体に振っていた雨が止んだ。

正確には俺の周りだけ雨が止んだ。

顔を上げると日菜太が俺に傘を差し掛けていた。

「日菜太…。」



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