月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時57

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あれから日菜太は約束通りに3日に1回夕食を作りに来ている。

でも一緒に食べる事はしない。

日菜太は鍵を持っているのだから、家にいなくてもいいものに俺はそうしないで日菜太を迎える。自分でも意味が分からない。

仕方なく家にあげてはいるが、口はほとんど訊かない。なぜなら日菜太をあげると俺は部屋にこもるからだ。日菜太と対する事が怖いのだ。

日菜太に怪しまれようがそばにいるつもりはなかった。だから話もしない。

日菜太はそれでも構わずに来る。栄養のある夕食を俺に食べさせるために。

その姿は健気なほどだ。

「もういい加減飽きただろう?もう作りに来なくてもいいぞ。」

「飽きる事なんてないよ。俺が作ったものを流星が食べてくれるだけで嬉しいんだ。」

そうなんだ。日菜太の作ったものを捨てる事が出来ないで、きちんと食べている俺…。どうなんだと自分でも思うが、どうしても捨てる事が出来ないのだから仕方がない。

日菜太は俺が好きだと目で訴えかける。俺はその目にイライラするなのに突き放せない。そのうち日菜太を傷つける事をしてしまいそうだ。日菜太の泣くところなんて見たくないのに。

そんな俺の気持ちも知らずに俺の前で無防備に安心している日菜太にイラつく。

この気持ちは日に日に大きくなっていて押さえつける事が難しくなっていた。

「流星、今日は流星の好きなラザニアにしたよ。熱いうちに食べて。俺帰るからさ。」

「別にラザニアが好きなわけじゃない。」

「嘘。こないだ作った時予備に作ったのまで食べてたじゃないか。俺知ってるんだから。」

「何も言ってないのによく俺の事を把握しているな。」

「だって俺流星の事大好きだから。」

この日菜太の言葉にプチッと俺の中のなにかが切れそうになり、あわてて自分の腕を腕組みをしてぎゅっと力を込めた。離すと日菜太に何かしそうで怖かった。

「食べるからお前は帰れ。」

「?変なの。まいいや。じゃ、ちゃんと食べてね。」

日菜太が玄関を出た後、俺はふうっと息を吐いた。

日菜太の「好き」という言葉に過剰反応している時点でヤバイだろう。

もう日菜太といる事は温もりをもらって穏やかでいるなんて次元は通り越して苦しいだけになっている。

片桐や日菜太の言う通りにしていては俺は俺じゃなくなってしまいそうだ。

俺は一人でいなければならないのに、温もりを求めてしまった。それが最大の過ちなのだ。過ちは正さなければならない。そう、今度こそ本当に日菜太から離れなければいけないのだ。

しかし日菜太に近寄るなと言ったところであいつは納得しないだろうし、訳を言えと言って来るだろう。

日菜太の方から離れてくれなければいつまでも同じ事の繰り返しだ。

どうすれば日菜太は俺から離れていく?考えろ。日菜太が罪悪感なく俺から離れられるように…。俺に愛想をつかすように仕向けるんだ。

俺は夜の街をふらつきながら考えた。

「ね、お兄さん。ちょっと付き合わない?」

いつもなら無視して通り過ぎるが、ふと思いついて立ち止まる。そうだ。日菜太に…。

俺はその女に向き直ると話をする事にした。




*  *  *


「流星今日はビーフシチューにするね。」

いつも通りにバタバタと玄関から日菜太がリビングに入って来る。

俺に話しかける日菜太は嬉しそうだ。

「やだ、流星友達?」

そこへシャワーを浴びてバスタオルだけを身体に巻き付けた女が入って来た。

ドサッと物が下に落ちる音がして日菜太が驚いて買ってきたものを物を落としたのがわかる。

「う、そ…。」

「日菜太が来る日だったか。忘れてた。美樹こっちに来い。」

俺は女を横に座らせると、日菜太を挑発するように女にキスをする。深いキスを…。

「あんっ…。友達の前なのにダメだよ。もう流星ったら。」

「流星…。その人…。」

「見ればわかるだろう?やっぱり女はいい。美樹はいい女だと思わないか?顔もいいしスタイルもいい。なんなら日菜太も一緒にSEXするか?美樹もいいだろう?」

日菜太が俺をキッと睨んでつかつかと近寄り、思い切り頬を殴りつけて来た。

「いってぇな。何もグーで殴る事ないだろう?男なら3Pとか興味あるだろうと思って誘ってやったんだ。」

「流星のバカッ‼」

いっぱい涙を溜めていた日菜太の目から涙がほろりと零れ、そのまま出て行ってしまった。

「いってぇ。あいつ思いっきり殴りやがった。」

俺の口の端からは血が滲んでいる。

女がBOXティッシュを俺に手渡す。

「あなた、あの子が好きなのね。」

優しい顔で俺に言う女の顔をじっと見てしまう。この女は何を言ってるんだ?

「違う。好きなんかじゃない。」

「抱く気もないのに私を呼んだりしてあなたバカね。あの子の言った通りだわ。男同士だから?あの子あなたの事好きなんでしょ。見てればわかるわ。諦めさせようとしてこんな事したの?避けられたのにわざと殴られたでしょう。違う事ないじゃない。あなたそれだけ大事なんでしょうあの子の事。それって好きって事よ。」

「…。」

「良く考えたら?じゃあたし帰るわね。」

「金…。」

「いらない。何もしてないし、あなた私の好みだからさっきのキスでチャラにしてあげる。キスするのも本当は嫌だったんじゃないの?ま、私は得した気分だからいいけど。大事にしなさいよ。あの子。可愛い子じゃない。」

女は服に着換えるとバイバイと出て行った。




俺が日菜太の事を好き?

俺が日菜太の事を?そんな…。

好きってどういう感情なんだ?

俺が日菜太に抱いている感情はラルクを好きとかという感情ではないぞ。

日菜太といると苦しいんだ。日菜太を見てると苛立つ。日菜太を見てると壊したくなる。こんな感情が好きだと?そんなわけはない。好きと言う感情はそんな負のものではないはずだ。俺に人を好きになる感情なんてあるわけない。俺は人に好かれるような人間ではないのだから。そんな人間が人を好きになるなんてあるはずがない。

女に言われた事が俺の頭の中をぐるぐるとまわって俺は頭を抱えた。

床には玉ねぎやジャガイモが転がってラルクが転がっている野菜にじゃれついていた。

「これどうする?きっと腐らせるんだろうな…。」

落ちている野菜を見て意味もなく呟いた。


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