月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時62

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流星は何をしていても頭から「日菜太の事が好きなんじゃない?」と言われた女の言葉に引っ掛かりを覚えていた。

だから片桐が家にいた事も、自分が倒れて夜中に点滴を受けた事ももちろん記憶がないし、次の日にDRに診察に連れていかれた時もなすがままだった。

本来の流星であれば医者に行くことなど必要ないとでも言っていたかもしれない。

片桐の作ってくれた御粥は、とても優しい味で身体に浸みこむようだった。以前に自分で日菜太に作ったものとは違う感じがして、どうやって作ったのか聞くと、「それぞれの家庭でそれぞれの味があるんじゃないですか?」と言われ、ああ、自分にはないのだなと心の中で苦笑した。

インターホンが来客を告げる。

ここに来客が来ることなどないに等しい。

片桐か日菜太ぐらいのものだ。宅配?こんな時間にか?訝しく思っているとあの人が入って来て、俺は持っていたスプーンを取り落しそうになった。

「父さん…。」

あのコンサート会場で冷たく見られて以来だ。俺の心臓がぎゅっと鷲掴みにされたようで苦しい。いったい何をしにここへ来たんだ?

「社長、コーヒーでよろしいですか?」

「いや、コーヒーはやめておこう。緑茶はあるか?」

「ええ。では緑茶をお入れします。」

俺はと言えば残っていた御粥を食べる事も出来ず、そうそうに箸を置いた。

「ごちそうさま。」

手を合わせて言うとあの人が驚いたように俺を見る。

「何ですか?」

「いや、すまない。流星の口から「ごちそうさま」を聞いたのは初めてな気がして驚いたんだ。」

「社長、流星様はちゃんと「いただきます」も「ありがとう」も言って下さいますよ。」

「そうか。そうか。」

何だか嬉しそうな顔をするあの人がわからない。

この間は俺に冷たくしたくせに…。

「片桐、悪いが薬を飲んだら俺は寝るから。」

薬と水を手渡した片桐に告げると俺は寝室に戻った。

片桐が俺に手を取られているからここに来たのだろうと思っていたのだ。

しばらくしてバタンと玄関のドアが閉まる音がしたのであの人が帰ったのだと思った。

寝室のドアをノックする音が聞こえ入って来たのは片桐ではなく、あの人だった。

「……。」

「流星、もっと身体をいたわってくれ。大事にしてくれ。」

「あなたに言われる筋合いはないんじゃないですか?そもそも俺は蒼井にとっては迷惑な存在でしかないはず。貴方もはやくご家族の元に帰られた方がいいですよ。こんなところにいる事が知られたら貴方の立場が危ういのではないですか?俺はもう平気なのでどうぞ、お帰り下さい。」

目を合わさずに一気に話した。

目を見るのが怖い。あの日のような目で見られていたら一人では立ち直れない。前は日菜太が救ってくれた。でも…。今はその日菜太もいない…。

「流星…。この間はすまなかったな。」

「別にいいです。俺は貴方にとって隠したい存在で、知られたくない存在なんだってわかってますから。」

「それは違うっ‼それは違うんだよ流星。確かにあの時私はお前の事を無視した。周りに蒼井の主だったものが揃っていたからな。」

「だからわかっているって言っているじゃないですか。俺は蒼井を名乗ってるけど蒼井ではない。そんな事もう十分すぎるほどにわかっていますよ。小さなころからね。」

言ってて目に知らずと涙が溢れそうになり慌てて布団に潜り込んだ。

その俺の背中をトントンとあやすように叩く。この人は何をしたいのか…。

「流星は人を好きになった事があるか?」

急に何を言い出すんだ。そんな感情は知らない。誰も俺に教えてくれなかったんだ。

布団の中で身じろぎもせずにいるとその人は俺が聞いてようが聞いてまいがお構いなしに一人で話はじめた。

「あれはいつだったかな。もう遠い昔だ。私はね流星、ピアニストになりたかったんだよ。笑えるだろう?蒼井の息子がだ。それも私は一人っ子だったからそんな事は許されるわけはなかった。趣味としてのピアノは許されていたがね。」

突然の話に驚いた。ピアニストになりたかっただなんて初めて知った。この人も蒼井の為に夢を諦めたのか…。いつの間にか俺は布団から顔を出して、その人をじっと見ていた。俺に向けられている視線は、いつかのコンサートで本妻の息子を見ていた優しい目だった。

「少し冷えるね。流星の体調は思わしくないから何か温かいものを入れて来よう。」

そう言って俺に甘いココアを入れてくる。俺甘いのは苦手なのに…。

「流星が甘いものが苦手なのは知っているが、身体を温めないとね。コーヒーは胃がびっくりするだろう。砂糖はそんなに入れてないから大丈夫だと思うよ。飲んでごらん。」

そう言われて飲むと、少し薄くてそんなに甘くなかった。

「それなら飲めるだろう。身体を冷やさないように何か羽織っておいた方がいいな。」

そして俺に傍にあったカーディガンをかけてくれる。

「このコーヒーは片桐のブレンドだね。どうやら片桐もすっかり流星のものになってしまったな。あれでも会社では一番に優秀なんだよ。私が唯一信頼している部下だ。会社にも蒼井の息のかかった人間がうようよしているからね、自分の好きには動けないんだよ。」

「じゃ、ここにいるのはまずいんじゃないですか?」

「いいんだ。そこは片桐がなんとかしてくれる。そういう意味でも片桐は貴重な存在なんだよ。流星の事を任せておけるくらいね。」

この人にそこまで言わせるなんて片桐って本当はすごいんだ。単に俺にお小言ばかり言ううるさい奴だと思ってて悪かったな。

本当なら、もっとギスギスとした感じになるかと思っていたのに、この人が穏やかに話すからか嫌な雰囲気ではなかった。

「ああ、話がそれてしまったな…。好きになった人の話をしていたんだった。あれは遅かった私の初恋だ。それ以来恋をする事はなかったよ。」

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読んで下さいましてありがとうございます。
ええ。やってしまいました。予約投稿したつもりが下書きになっておりまして0時更新出来ませんでしたorzもし0時に待って下さっていた方本当にごめんなさいですm(。_。;))m ペコペコ…

あと、昨日の15時のあとがきのイラストを可愛いと言って下さったH様ありがとうございました。M様(名前出してもいいのかわからなったのでイニシャルで…。)。達樹がイメージ通りで良かった☆髪型も…(笑)パソの前で悶絶頂いたと聞いてニヤっとした私です。若様もありがとうございました。いつも凪を心配して下さってましたものね。
私は若様のような艶のあるイラストは描けないので、私の中での達樹と凪はあんな感じです。

みなさんに喜んでいただけたら幸いです。まだ見てない。見てもいいよって方は寄って見て下さいませ☆


達樹と凪のイラスト←クリックしてね☆

このお話に出て来た響夜と海人のお話はこちらからどうぞ→『キミと空とネコと』


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