月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時67

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日菜太は流星が許せないでいた。

流星の連れていた女の人はとても大人で綺麗な人だった。バスタオルから除く身体はバランスよく整い、二つの胸のふくらみは日菜太にはないもの…。

そして何より流星の隣が似合っていた。まさに美男美女。それだけでも衝撃で胸が痛くなったのに、目の前で交わされた二人の淫靡なキス。その先をにおわせるキスに日菜太は吐き気を覚えた。それを必死で堪えた時に日菜太に向って言った流星の言葉。


『「見ればわかるだろう?やっぱり女はいい。美樹はいい女だと思わないか?顔もいいしスタイルもいい。なんなら日菜太も一緒にSEXするか?美樹もいいだろう?』


それを聞いたとたんに流星の頬を殴っていた。殴った右手が痛くて涙が出そうでそのまま部屋を飛び出した。

右手が痛いんじゃない、日菜太の心が痛くて悲鳴を上げていた。

「っう…うう…っ…。」

涙が溢れて止まらない。

本気で流星の事が好きな事を知っているくせに、流星はわざと日菜太に見せつけたのだ。俺は女が好きなんだと。そう思った。

「俺を好きになれないならハッキリ言えばいいじゃないか。あんな事しなくても言われたら俺だって…。」

最近は前に比べて避けられているとは思っていた。でも日菜太を完全に拒否する事はなく日菜太を家に入れてくれたし、日菜太の作った料理も食べていてくれた。家の鍵も返せとは言われていない。流星が日菜太を嫌いになったとは思えなかった。

今は避けていても俺がいつも通りに流星に接していたら、前みたいに仲良く出来る。日菜太はそう信じ、避けられているのは寂しかったけど、流星と離れる事なんて考えもしなかった。

帰ってから部屋に閉じこもり枕に顔をうずめて声を殺して泣いた。おかげで次の日は目は真っ赤で腫れていたけど休むと流星に負けた気がして休まなかった。

流星に対して怒っている気持ちは抑えられず、顔を見たら何を言ってしまうかわからないから流星を見ないようにした。もちろん口も聞かない。

日菜太にはたくさんの友達がいたから学校で一人になる事はない。真っ赤な目をからかわれたりはしたが「クレヨンしんちゃんの映画見て泣いた。」と言ったら深く聞くような友達はいなかった。細かく追及しない友人達に感謝する。

友達の影から流星を見たら、流星は一人で机に伏せて外を見ていた。口元に絆創膏が貼られている。昨日日菜太が殴った時に切れたのだろう。でもその顔に表情は読み取れなかった。ツキンと胸が痛んだけど、俺は流星に怒ってるんだからな。

なのに流星がいない…。

昔みたいに学校に来るのがめんどくさくなったのか、あの日会った女の人と過ごしているからなのか…。そう思うと腹が立つ。ムカムカする。胸の中が黒く澱んでいく。

なのに…。あんな事をされたのに完全に嫌いになれない。

「俺ってバカだよな。どうしようもない。でもずっと流星の事が好きだったんだ。そんなに簡単に嫌いになれるわけないじゃないか。」

空いている流星の机を見て切なくなる。流星のした事は日菜太の心に大きな傷を作っていた。





それから流星は学校に来なくなった。

居ればいたで、居なければいないで流星は日菜太の心を揺さぶるのだ。気になって仕方がない。

放課後、誰もいない教室で一人、流星の机をじっと見ていたら傍に津野がやって来た。

「日菜太、流星と喧嘩でもしてんの?」

「何で?」

「流星と話さなかっただろ。お前は目も合わせようとしなかった。流星がしないならわかるけど、日菜太が流星を見ないって今までなかったからさ。」

「……。」

「気になってるんだろ流星の事。仲直りしろよ。流星さ、日菜太と仲良くなってからいろんな顔するようになっただろ。いつも冷めた顔してた流星がさ。俺には流星にあんな顔をさせる事は出来なかった。流星には日菜太が必要なんじゃないかって思うんだよ。数少ない流星の友達の俺が言うんだから間違いないって。」

それだけ言って津野は日菜太の頭をクシャっと撫でると帰って行った。

これって喧嘩なのかな?

もし喧嘩と言うのなら日菜太が流星に折れない限りは仲直り出来ない。流星が日菜太に謝るなんて考えられないから。流星は悪気無くした事なんだろうか?でも俺の気持ちを知ってるんだからやっぱり酷いと思う。

でも…。




もしこのまま流星が学校に来なくなったらどうする?一緒に進級出来なかったら、学年が違えば、流星と会う事なんて出来ないかもしれない。学校にいるならまだいい。もし学校を辞めてしまったら?

流星が自分の前からいなくなる。やっと会えて、一緒の時間を過ごせるようになったのに…。そして今会えなくなればもう流星は日菜太から完全に離れてしまうだろう。

「イヤだ。それはイヤ。流星と離れるなんてイヤだ。」

流星と離れるという事はもう友達でもいられなくなる事。恋愛としての日菜太を流星は受け入れてはくれてないけれど、友達としては受け入れてくれていたのだ。それさえなくなってしまう。

流星の中の日菜太が消えてしまう。流星はきっといつか日菜太を忘れてしまう。それが怖くなった。受け入れてもらえなかったとしても流星の中に自分がいた事を覚えていてほしい。

日菜太は震える手で携帯を取り出し、流星に電話をかける。



『この電話は現在電波の届かない…』



無機質な音声が聞こえる。それは10分経っても1時間経っても3時間経っても繰り返されるばかりで…。

流星の部屋の合鍵は持っている。だけど部屋に行ってあの女の人と流星がいるところは見たくない。

考えても考えてもどうしていいのかわからなくなって日菜太は片桐に電話する。胸が痛くて苦しくなって涙が出て来た。

「日菜太くん?」

「っ…。かた、っぎりっさ…。俺…。」

優しい片桐の声に日菜太は嗚咽が止まらなくなってしまった。

「日菜太くん今どこ?迎えに行くから場所を言って。」

「うっ…。ひっ…。ううっ…。」

片桐の優しい声に安心して場所さえロクに言えなくて情けない。「ゆっくりでいいから」と言われて何とか場所を言うとすぐに片桐が迎えに来てくれまだ泣いている俺をあやすようにポンポンと背中を叩く。

「大丈夫だからね。車に乗って。」

そして優しく俺の背中を押して助手席に座らせると、車は静かに街中を走りだした。


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読んで頂きましてありがとうございます。
流星の揺れ動く心。両親に愛されていたと知った事で流星の中でも大きな変化が起こっています。愛を知りたいでも知りたくない。知ってしまうのが怖い…。自分の中の変化を流星も感じています。

『やさしいkissをして』の最終話でもお知らせしましたように、明日からは週末も『月と太陽がすれ違う時』を更新します。(あくまで予定なので変わる時もあります)

どうぞ明日も流星に会いに来てやってくださいませ。


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