月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時74

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この辺りのはずなんだが…。

ある日の夕刻前、私は住宅街の真ん中で途方に暮れていた。住所さえわかれば行けるだろうと思っていたのは甘かったようだ。片桐に言われた通りに車で送ってもらえば良かったと後悔し始めていた。

5月の中旬だというのに何て暑いんだ。真夏日のような気温にスーツの中は汗だくになっていた。

私、蒼井 将星はある家を探していた。家というよりもそこに住んでいる人物を人目見たくてこんなところまで一人できてしまった。見たい人物とはもちろん流星と仲良くしてくれているという『日菜太くん』である。片桐は会った事があるらしく、とても素直で優しい愛情にあふれた子だと話していた。

流星はこれまで家にあげるような友達はいなかった。ましてや泊まるのを許すような人物だと聞いて会いたいと思っていたが、一人でこんな風に会いに来るつもりはなかった。流星か片桐に紹介してもらえるだろうと思っていたから自分から会いに行くつもりなどなかったのだ。

しかし…。この間、流星の家で話を聞いた時に流星の様子がおかしかった。「日菜太にもうここへ来るな」と言ったと話す流星がとても傷ついた顔をしていてとても気になったのだ。そしてこの間病室で話してくれた流星の気持ちを聞いて、流星をそんな風に思わせる相手を見て見たくなってしまった。

流星は本当はとても優しい子だ。私の事を恨んでいるだろうにどこか受け入れてくれている。本人は何も言わないが私の存在を拒否しているわけではないと思う。家にあげ、一緒に食事をし、コーヒーを飲みながら他愛のない話に少ない語彙ながらも私を無視する事はない。

流星に父親らしい事は何もして来なかった。今更、父親ぶるつもりもない。流星に父親と認められなくても構わない。ただ、私は流星の幸せだけを祈っている。だから、あんな悲しい顔をする流星を見ていたくないのだ。

私が日菜太くんと会って何が出来るわけではないが、役に立てるのならばと思うのは親バカか。流星の為に動ける時間は残り少ない。どれだけ時間が残っているかわからない。

立ちくらみがして膝を折る。最近眩暈や立ちくらみが増えてきている。時間がない…。

しばらくあっちへ行き、こっちへ行きしている間に自分のしている事を流星が見たらどう思うだろうとふと思う。それまでは自分でこうするのが良いと思っていたのだが、流星に何も言わずに勝手に日菜太くんに会ったら流星は良い気持ちにならないのではないか?反感を買うだけかもしれない。

そう思うとこのまま帰った方が良い気がする。日菜太くんに会えなかったのも会わない方が良いと言う事なのだと思った。

「全く、私は何をしているのだろう。親バカだな。」

そうして帰ろうと思ったが駅への道がわからない。タクシーでも通ればいいのだが、ここは住宅街でタクシーなどさっきから1台も見かけない。

どう来たのかわからずに右往左往していると一人の少年が声をかけて来た。

「どうかされたんですか?」

可愛い男の子だ。男の子に可愛いなんて形容詞はおかしいとは思うが、優しそうな顔と口調。大きな目に愛らしい唇。フワッとした柔らかそうな茶色い毛は可愛いと形容するしかない。

「あ、ああ。道に迷ってしまってね。駅までどう行けばいいのかわからないんだよ。」

「駅ですか?それならここを真っ直ぐ行って、大きな木の公園を左に曲がってすぐの三叉路を右に行って…。」

「申し訳ないがもう一度言ってくれないか。メモするから。」

丁寧に説明してくれるのだが、いかんせんここの土地は知らないし、普段は運転手付きの車だから道など覚えていない。

「おじさん迷子になっちゃいそうだから俺、駅まで送りますよ。ここから10分くらいだし。」

何て優しい子なんだろう。そこまでしてもらわなくてもいいと言わなければならないのだろうが、駅までたどり着く自信のない私はこの少年の行為に甘える事にする。何よりこの少年ともっと話をしたいと思ったのだ。

駅まで送ってもらいお礼がしたいと食事に誘ったがそんなつもりはないからとやんわり断られた。じゃコーヒーだけでも付き合ってくれないかというと「それくらいなら」とうなずいてくれたのでいつものホテルのラウンジに行こうとしたら、ホテルよりもスタバのコーヒーが良いと言う。

コーヒーショップなど入った事のない私は好奇心がわきその少年について店に入った。

「ご注文は何に致しましょう」

そう言われても何がいいのか、なんと注文すればいいのかわからずに困ってその少年を見ると代わりに注文してくれた。

「最近はこんなコーヒーショップが人気なんだね。私は初めて来たよ。君はよく来るの?注文が手馴れてた。」

「俺もそんなに来ないですよ。だって高校生が飲むには高いですから。おごってくれるって言われたのでここにしたんです。すいません。」

「ははは。キミは欲がないね。それなら尚更ホテルのコーヒーがよかったんじゃないのか?ここよりももっと高いよ。」

「ホテルなんて堅苦しいじゃないですか。きっと飲んだ味もわからないだろうし、ここみたいにキャラメルマキアートとか甘いのないでしょ。俺コーヒーは苦くて飲めないから。」

少し顔を赤くして正直に話す少年を見て、この子は愛されて大事に育てられてきたんだろうなという事がわかる。いい子だ。

「どうかしたんですか?俺の顔に何か付いてます?」

「私にも高校生の息子がいるんだけど父親らしい事は一つもしてないんだ。何かしてやりたいんだけど、離れすぎてて息子の気持ちがわからなくてね。情けない話だけど。やっと少しは打ち解けてくれるようになったとは思うんだけどね。」

「そうなんだ。息子さんは大事?」

「ああ、すごく大事に思っている。息子はもう亡くなったあれの母親にそっくりでね。私は彼女の事を本当に愛してた。私には妻と子供がいるが、彼女ほど愛した人はいない。息子の事も愛してるんだ。」

「ちゃんと話をしていれば伝わりますよ。離れているなら自分から歩み寄ればいいと思います。それが難しいんですけどね。」

「そうかもしれないね。私はどうも言葉足らずなようでね。まあ息子もそこは私に似ているのかもしれん。顔は彼女に似てるんだけどね。君と話していると息子とも上手く話せるような気がしてくるよ。」

「そうなら良かったです。俺は愛されたくない人間なんていないと思う。」

「君と話しているともっと話していたいと思ってしまうね。息子と同じ年だからかな。息子に聞けない事も君になら聞けそうだよ。」

その時少年の携帯が着信を告げる。

「日菜太っ。どこにいるの?もう夕飯よ。今日はお父さんが早く帰って来るから3人で食べましょうって約束してたでしょ。」

「ああ‼母さんごめん。すっかり忘れてた。急いで帰るから。」

日菜太?今日菜太って呼んでいたように思ったが…。

「君の名前は日菜太って言うのかい?」

「あ、聞こえちゃいましたか?母さん声大きいからなあ。そうです俺、高野 日菜太って言うんです。じゃコーヒーごちそうさまでした。」

「ああ。こちらこそありがとう。気を付けて。」

「はい。おじさんももう道に迷わないでね。」

少年はカバンを抱えると走って帰って行った。

「そうか。あの子が日菜太くんか。」

思いがけず出会えた事に口元が緩んでしまう。なんだ、すごくいい子じゃないか。

今度は私の携帯が着信を告げる。

「社長、今どこにいらっしゃるんですか?」

「スタバだ。すぐに迎えに来てくれ。」

「は?スタバってコーヒーショップの?」

「それ以外にどんなスタバがあるんだい?流星のマンションの近くのスタバだぞ。」

「…。は、はい。すぐにお迎えに上がります。」

片桐が驚いている顔が目に浮かんでほくそ笑む。私だって何も高級なところが好きなわけではない。

そんな事より…。

流星に日菜太くんは必要だろう。日菜太くんに流星のそばにいて欲しいと思うのは私のエゴだろうか。流星は日菜太くんの事が好きなようだ。日菜太くんはどうなのか。

片桐に相談してみようか。親バカだと笑われるだろうか。いや、笑われても流星の為ならなんでもしてやりたい。

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