月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時76

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今日は土曜日。

片桐に言われたように俺は14時前に駅前に立っていた。

DRの診察…。あのDRはどんな人なのか興味がわいて調べたが片桐が言うように腕は一流らしく、本まで出している。自身が開業しているクリニックも評判もよく、週に何回か大学病院にも勤めているようだ。自分のクリニックだけでは最先端の医術を知るのに出遅れるからと大学病院にも勤めているのだと何かのインタビューで答えていた。

そんな人が片桐の恋人。片桐に心底惚れていると俺の前で惚気るDRに呆れるよりも羨ましいと思った。そこまで思える相手に巡り合えたのだから。

不思議と片桐の恋人だと言われても嫌悪感もなくむしろお似合いだと思ったのには自分でも驚いたが、この二人を見ていれば誰でもそう思うのではないかと思う。

同性同士だからなんだと言うのか、愛した人が同性だっただけだとDRは俺に言った。俺はそう言い放ったDRの事を人間として好ましいと思った。

今日は片桐も一緒だから惚気を聞かされるかもしれない。まあDRが惚気る時の片桐の恥ずかしそうな怒ったような顔は滅多に見られるものではないから楽しみでもあった。

もうすぐ14時になるなと前を向いてドキッとした。

「日菜太…。」

キョロキョロしながら歩いてくる。誰かを探しているようだ。

日菜太が気が付かない間にここから離れようとして日菜太と目が合ってしまった。

「流星…。」

お互いに目が合ったまま視線が逸らせない。その場所から動けない。先に口を聞いたのは日菜太だった。

「誰かと…待ち合わせ?オ、俺は片桐さんとなんだ。」

口早に話すのは俺との間が息苦しいからだろう。それよりも片桐と?おかしい。片桐と約束してるのは俺のはずだ。

「おかしいな。俺も片桐に診察にいくからと14時にここに来るようにいわれたんだが…。」

「え?俺も駅前で14時…。」

そこで気が付いた。片桐の奴、ひっかけやがった。診察なんて口実で日菜太と会わせようとしたに違いない。日菜太もそれに気が付いたようだ。気まずそうに下を向いている。

「すまん。片桐が何を思っているのかわからないが、時間を無駄にさせてしまったようだな。後で片桐に言っておくから。」

「流星はこれからどうするの?」

「せっかくだから本屋にでも寄って帰る。」

そう…。と逡巡する表情をした日菜太が俺を真っ直ぐに見据えた。

「俺も一緒に行っていい?」

俺は真っ直ぐな日菜太の視線にたじろいだ。あんなひどい事をしたのにどうして日菜太はこうして俺に接する事が出来るんだろう。ひどく傷ついているはずだ。そんな日菜太が傍にいて居心地が悪いと思うのに傍にいて欲しいと思ってしまう自分。

「好きにすればいい。本屋は俺の持ち物じゃないからな。」

ひねくれた物言いだと自分でも呆れるが言ってしまったものは仕方がない。表情に出やしないかと思い、顔を隠すかのように日菜太の前を歩く。

パタパタと後ろをついてくる足音に少し口角が上がったのに気が付き指でおろした。

これといって欲しい本があって本屋に行ったわけではないのに、好きな作家が新しい本を出していたのと、読みたかった本を偶然見つけてパラパラとめくっているうちにのめり込んでしまっていた。ハッと気が付くとかなりの時間が経過しており、傍に日菜太はいなかった。

俺は夢中になってしまうと周りの音が聞こえなくなってしまう。一人で過ごす事が多かったからか没頭して時間を過ごす事が多かった。そうしていれば寂しくないし、何より時間が経つのが早かったから自然に身に付いた。今までは買い物でも一人だったから一緒にいる日菜太の事など考えもしなかったのだ。さぞかし退屈だっただろう。先に帰ってしまっても仕方のない事だ。

手の持っていた本を持ち直してカウンターで清算を済ませると店を出る。

「ちょっと待ってよ。流星。」

日菜太が慌てて追いかけて来たから驚いた。

「お前まだいたのか?退屈で帰ったとばかり思っていた。」

「俺、CD見てくるって言った。」

「すまん。聞こえてなかったようだ。」

「やっぱり…。そうじゃないかと思ったんだ。すれ違わなくて良かった。」

こうして会話していると以前のようで少し嬉しいと思った。

「お詫びにコーヒーでも奢るよ。あ、日菜太はコーヒー飲めないか。」

「ひでっ。キャラメルマキアートなら飲める。それ奢って。」

「ふっ。いいぞ。奢ってやる。」

近くに有ったコーヒーショップに入り、日菜太が席を探している間に注文する。土曜日という事もあって店内は混雑していたが、運よく空いた席を日菜太は取る事が出来たようだ。

「俺って運がいいみたい。探してたらすぐに空いたんだ。」

「そうか…。」

荷物を置いて座ると日菜太にキャラメルマキアートを渡す。

ストローに吸い付く口が可愛くてつい見てしまって苦笑する。俺っていったい何なんだ。本当に日菜太に対してだけは自分がわからない。

日菜太の口から目線を外し、落ち着こうと自分のコーヒーを飲む。

「やっぱキャラメルマキアートはおいしい。流星飲む?」

自分の口にしたストローを平気で出してくる日菜太はきっと何も考えていないのだろうなと思う。男同士で飲みあいっこなんて周りからみたらどう映るか…。大胆なのは天然だからだろう。よくこんなで無事でいられたもんだ。まあ本人にも多少の自覚はあるようで一人では人の少ないところには行かないようにしてるみたいだが。

「いらん。そんな甘ったるいもの俺は飲まない。」

「ちぇっ。おいしいのに…。」

ブツブツ言いながらもおいしいと嬉しそうに飲む日菜太を見ていると何だかホッと癒されるような気持ちになった。

その時、ブルブルとスマホが震えているのに気が付き出ると片桐だった。

「お前、どういうつもりだ。」

今日の事を問い詰めてやろうとした時に片桐の声音がいつもと違うのに気が付いた。

「流星様っ。社長が…。」

日菜太に聞かせたくなくて「話してくるから少し離れる」と手振りで伝えると日菜太の顔が少し歪んだように見えた。しかし片桐の様子に只ならぬものを感じて「悪い」と口パクで伝え、店の外に出る。その様子をずっと日菜太が泣きそうな顔で見ていたなんて知ら無かった。

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