月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時77

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いつも冷静な片桐が落ち着きを失くしていて、話が要領得ない。落ち着くようになだめるが興奮しているのか俺の声が聞こえていないようだった。

「社長が…」を繰り返すばかりなのだ。あの人に何か有った事だけは確かだが、内容がわからないだけに苛立ちがつのる。

「片桐落ち着け。あの人に何かあったのか?」

電話だというのに大きな声を出してしまい、歩いている人にジロジロと見られてしまったが仕方ない。片桐は俺の声に一瞬ビクッとして黙った。

「お前らしくもない。落ち着け。」

電話の向こうで落ち着こうとしてか何度も深呼吸しているのがわかる。

「失礼しました。社長が仕事中に倒れてしまって今病院で診察を受けています。」

やはりどこか具合が悪かったんのだと思った。食欲がなく最近は少し痩せたような気がしていた。背中が小さくなったような気がしたのは痩せたからかもしれない。どこかでそうじゃないかと思っていたから倒れたと聞いてやっぱりと思った。

「それで具合はどうなんだ?」

「まだ意識は戻っておりません。本家のご家族がもうすぐお見えになります。」

そう言われて俺は病院には行けないんだと悟る。俺は余計者だから行けない。

「教えてくれてありがとう。でも俺はそこには行けないから片桐が代わりに看ててくれ。」

「いえ、私も本家の方が来られましたらここには居られないと思います。本家の方が来る前に流星様にお知らせしたかったんです。」

「そうか。何かあればまた教えてくれ。」

電話を切ってからも何だかザワザワした気持ちで落ち着かなかった。でもはみ出し者である俺には出来る事は何もない。無事を祈るだけだ。

少し時間を食ってしまったとあわてて店内に戻ると、硬い表情をした日菜太が待っていた。

「すまなかった。急用の電話だったんだ。」

「俺といるより重要な人って事?」

「あ?ああ。」

電話の内容が重要だったのかと言われればそうだろう。名前だけでも自分の父親が倒れたという知らせだったのだから。

クシャッと顔を崩した日菜太がカバンからキーケースを取り出し、1つの鍵を乱暴に引き抜いた。

「今の電話「美樹」さんだろ。部屋の鍵返すっ‼恋人じゃないのに持ってるの変だもんな。俺とこんなところで会ってるよりも美樹さんと会えばいいだろ。あんなキス俺の前でするくらいなんだから美樹さんと付き合ってるんだろ。俺に見せつけるみたいにキスしなくても言ってくれたら俺だってバカじゃないんだからわかったのに‼恋人がいるならそう言えばいいじゃないか。俺なんて好きじゃないって言ってくれれば俺だって…。流星なんか大っ嫌い‼」

日菜太は乱暴に鍵をバンッとテーブルに叩き付けるとカバンを持ってその場から走り去った。俺はと言えば、日菜太の言った言葉がウワンウワンと頭の中で響いて動けなかった。

日菜太は片桐からの電話をこの間の女の電話と勘違いしたらしい。そう言えばあの女は「美樹」という名前だったのか。そんな事も覚えていない女が俺の恋人だと思っているのか。でもそう思うように仕向けたのは自分だ。素直な日菜太はその嘘にまんまと引っかかったままなのだ。

くっと苦笑が漏れる。今日は何て日なんだ。片桐に騙され、あの人が倒れ、日菜太に大っ嫌いだと言われた。まさに厄日だ。でも自業自得なのかもしれない。あの人が会いに来てくれる事を少し嬉しいと思うようになっていた。そしてこんな俺が日菜太に癒されたいと欲を持ったから、身分不相応だと罰が与えられたのだ。やはり俺は愛情だとか求めても与えてもらう事は出来ないらしい。

周りのざわめきが不快な雑音に聞こえて席を立つとマンションに戻り、落ち着こうとベートーベンを聴く。それでも胸を占める痛みはちっとも癒される事なくますます大きくなるように感じた。ラルクが俺の傍に来て舐めてくれてもそれは変わらずに、冷たくなった胸を温めて欲しくてラルクを抱えて丸くなった。





どれくらい時間が経ったのかポケットでスマホが震えた。

「流星様、片桐です。社長が気が付かれたと連絡がありました。過労が原因だそうで今晩は様子を見るために入院されるそうです。」

「そうか。良かった。片桐は病院なのか?」

「はい。本家の方は帰られ代わりに私が付いています。流星様来られませんか?」

「……。大丈夫なのだろう?俺が行っても仕方ないと思うが…。」

「社長が流星様に会いたいと言われています。」

「…わかった。今から行く。」

片桐に病院と部屋を教えてもらいタクシーで病院に向かう。

「あれ?この大学病院…。」

この大学病院のHPを最近見た。いつだったろうそう思いながら病室のドアをノックすると「どうぞ」と片桐の声がして静かに中に入る。

少し広めの部屋の真ん中にベッドがあってその人は身体を起こしてベッドもたれかけていた。

「流星、来てくれたのか?」

少し嬉しそうな顔をして俺を見る。

「倒れるほど仕事をするってどうなんですか?体調管理も上に立つ者の仕事だと思いますけど。」

自分でもなんて可愛げのない言い方だとは思うが、そんな言い方しか出来ないのだから仕方ない。

「流星様っ‼」

「良い片桐。その通りだ流星。お前にも心配かけて悪かったな。」

「俺は別に心配なんてしていません。」

「流星様っ‼」

「いいんだ。流星がこうして来てくれただけで嬉しいよ。わざわざありがとう。」

「べ、別に…。」

「あれ~。流星様もいたんだ。」

そこに聞いた事のある声が聞こえて振り返る。

そこには白衣を着て病院のスタッフであるカードを首から下げた片桐の恋人が立っていた。

「どうしてDRがここに?」

「ああ、俺この病院にも勤めてるんだわ。」

どおりでここの病院のHPを見た覚えがあったはずだ。このDRの事を調べててここのHPを見たのだ。

「DRここは病室ですよ。DRがそんな口のきき方でどうするんです。」

はぁーと大きなため息をついてこめかみを押える片桐に、抱き付くようにDRは肩に手をまわす。そのDRの手の甲をぎゅっとひねると、「イタッ」と声をもらしてしぶしぶ片桐の傍から離れた。

「ちなみに俺が担当医です。あ、自分で言うのもなんですがそこいらの医者より腕は確かです。」

「性格に問題がありますけどね。」

DRを睨みつけながら片桐が言うとあの人が「ははは」と笑う。

「相変わらずDRと片桐は仲が良いようで安心したよ。」

「社長‼」

どうやらDRと片桐が付き合っている事を知っているらしい。

「ちょっとDRこっちに。社長、流星様少し席を外します。」

少し頬を赤くした片桐がDRを外へ連れ出すと、俺とあの人と二人になった。

二人になったところでお互いに話ベタなので会話はない。ただ静かな時間だけが流れていく。

昔の自分なら苦痛に感じていただろうに、今の俺はこの静かな時間も嫌ではないと思っている。それが何故かのかはいくら考えてもわからないままだった。


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