月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時79

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「そんなに警戒しないでくれないかな?」

目尻を下げ、困ったように言われても、警戒心が解けるわけがない。流星に酷い事をしてきた人。その事がグルグルと頭の中を回っている。

「この間みたいにはやっぱり無理かな?」

「この間はわざと道に迷ったふりして俺に近づいたんですか?」

どうしても棘のある言い方になってしまう。

「そうじゃないんだ。あの時はただ流星が仲良くしているという友人を見てみたいと思って、でも途中でこんな事をしたら流星を怒らせるだけだと帰ろうとして道に迷ってしまったところを偶然君が助けてくれたんだ。君のお母さんからの電話で名前が聞こえて君だとわかったんだよ。」

嘘かもしれないと思ったが、話す目は真剣で濁りがない。だからと言って全部信用出来るわけじゃない。

「君は私の事を酷い人間だろうと思っているだろうね。」

その質問には「当たり前だろ」と言う気持ちを込めて無視して答えなかった。色々と言いたい事はある。だけど流星がいないところで俺が言うのは違うと思って何も聞かないつもりでだった。一緒にいる事で流星を傷つけるかもしれない。そう思ったらここにいるのが息苦しくなって、席を立って帰ろうと思った。

「俺、話す事ないんで失礼します。流星がいないのに貴方と会ってたら流星が嫌な気分になるかもしれない。そんなの俺嫌だから。」

奢られるのも嫌で財布からドリンク代を出そうとしたら流星のお父さんが突然咳き込んで苦しそうな息をする。

「だ、大丈夫ですか?」

顔色も悪く額には薄っすらと汗が滲んでいる。

「す…まない…水を…。」

流星のお父さんがポケットから何かの薬を取り出そうとして手から落ちる。俺はそれを拾って手に乗せると、定員に水を持ってきてほしいと頼んだ。苦しそうな様子を見た定員はすぐに水を持ってきてくれ俺はコップを支えて薬を口の中に入れた。

しばらくは荒い息をして項垂れていたけど、薬が効いてきたようで顔色に赤身がさして来る。呼吸も穏やかになり大丈夫だとその人は弱弱しく笑う。俺はすっかり帰るタイミングを逃してしまい出て行けなくなってしまった。

「…。驚かせてすまないね。ありがとう。」

「どこか悪いんですか?帰って横になるとか、病院に行った方がいいんじゃないですか?」

「大丈夫だよ。薬さえ飲めば収まるんだ。病院も通院してるから問題ない。」

心配そうに見ていた店の定員にも「迷惑をかけてすまなかった」と丁寧に謝る姿を見て、何だか聞いていた印象と違うと戸惑う。

「君は私の事を酷い親だと思っているだろうね。確かに酷い父親だ。流星にも何一つ父親らしい事をしてやれない。」

悲しそうにそれでいて苦しそうに話す姿に何も言えなかった。

「私はね、流星の事を本当に愛してるんだ。流星の母親は私の中で生涯でただ一人の愛しい人だった。そんな彼女と私の間に生まれた流星を愛さないわけはない。でも結局は流星を一人にしてしまった。私には流星以外にも家族がいる。大事だとは思うし、大切にしなければとも思う。でもそれ以上に流星は愛しいんだ。君には私の勝手な言い訳にしか聞こえないだろうね。」

切実な告白は嘘ではないとわかる。嘘じゃない証拠に俺の目から視線をそらすことなく話していて、その瞳は真実を話していると物語っていたから。

「じゃあどうして流星を一人にしたんですか?流星は貴方の愛を求めていたのに…。」

同じように親から離れ施設で過ごした流星と俺だけど、俺には愛してくれる両親が傍にいてくれた。そして本当にわが子のように愛してくれて優しい愛情をたくさんもらって生きて来た。

でも流星は血の繋がった親に引き取られたのに愛情をかけてもらえず、小さい時から一人で過ごして来たんだ。愛される事も忘れ、愛する事も知らずに生きている。小さな流星が一人で膝を抱えている姿が浮かんできてポトリと涙が落ちた。

「君は本当に流星の事を大切に思ってくれるんだね。流星という一人の人間を…。君になら話してもいいだろうか。聞いた事で重荷になるかもしれない。もしかしたら流星は君に聞かせたくない話かもしれない。だけど、私は君に流星の事を本当に理解して欲しい。流星の力になってやって欲しいんだ。」

返事も出来ずに静かに泣く俺にハンカチを手渡してくれる。俺は素直にそれを受け取り涙を拭った。流星の力になれるのなら何でもする。流星に傷つけられた傷は痛んでるけど、それよりも流星の為に俺に出来る事があるのなら何でもやりたい。それで流星が救われるのなら…。流星が笑顔になれるのなら…。流星が幸せになれるのなら…。

「俺で流星の力になれるなら…。例え重荷に感じたとしても流星の為なら大丈夫です。だから話して下さい。」

「ありがとう。やっぱり君はいい子だね。片桐や流星の言ってた通りだ。真っ直ぐで純粋で優しい…。君が流星の友達でいてくれる事が私には嬉しい。」

「流星が俺の事をそんな風に話したんですか?」

「ああ。とてもいい子だと。自分にはもったいないと言っていた。」

俺に酷い事をした流星とお父さんに話をした流星は全然違う。どっちが本当の流星の気持ち?俺は流星の言葉をうのみにしてしまったけど、あれは流星の本音?

この間の電話も勝手に美樹さんだって決めつけて流星の話を聞こうともしなかった。もしかして違う電話だったとしたら?

「日菜太くん?」

「あ、すいません。」

今は大事な話を聞かなくちゃいけない。おじさんは流星の事を本当に愛してるのに一緒にいない理由も、流星が愛を信じなくなったわけもそこにある様な気がした。

気持ちを落ち着かせようとキャラメルマキアートを一口飲んで真っ直ぐにおじさんを見た。おじさんも一口コーヒーを飲んでから、静かに懐かしむように流星のお母さんの事や「蒼井」の家の事、今までのいきさつを話してくれた。

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