月と太陽がすれ違う時

月と太陽がすれ違う時80

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おじさんの話はとても長かった。流星の事を思ってした事が流星を一人にさせてしまったと。後悔しても遅いが、あの時はそうする事が愛する家族を守ることになるんだと思っていたと。引き取ってからどれだけ会いに行きたかったか。でも蒼井の手から守るには会いに行けない。流星の傍に付かせているものに報告をさせるだけしか出来なかった。頑なになっていく流星を抱きしめたかった。

おじさんは今でも後悔し続けている。苦しんでいる。全ての話を聞いて俺は全部おじさんが悪いとは思えなかった。おじさんなりに愛しい者を守るために必死だったんだ。

もしかしたら他に方法があったのかもしれない。あったとしてももう過去には戻れない。悲しい行き違いが流星とおじさんの間に溝を作ってしまって、流星は頑なに愛を信じようとしなくなった。他人に甘える事も知らない。心を許す事もしない。他人を拒絶する事でしか自分を守れなかったんだ。

俺はそんな流星をすごく抱きしめたいと思った。でも、それは俺の役目じゃない。それが悲しかった。流星には彼女がいるんだから…。

「すまない。やはり君に聞かせるべきではなかったのかな。」

「え?」

「いや、酷く辛そうな顔をしているから。」

「いえ、聞かせて頂いて良かったと思っています。でも俺が流星の為に何か出来るのかって考えたら…。もしかしたら流星は俺に傍にいて欲しくないかもしれないし…。」

流星の家の鍵を投げつけるようにして『大嫌い』と言ったままだ。学校でも目を合わす事も話す事もない。流星の声を聞く事もないんだ。流星の為に力になりたい。だけどあんな態度を取った俺を流星が許してくれるだろうか?



「日菜太くんは流星の為によく食事を作ってくれたんだってね。」

「はい。流星はいつもスーパーで買った弁当を温めもせずに食べてたから。」

「でも最近は流星の家には行ってないみたいだね。喧嘩でもした?」

「……。」

「私は日菜太くんに本当に感謝してるんだよ。今は時々だけど時間を作れるときは流星の家に行って私が料理をしているんだ。そして二人で食べている。流星にちゃんとどうして一人にしてしまったのかとか、流星の母親の話とかをしてから少しだけど流星は私を受け入れてくれるようになったんだよ。」

「本当に?」

流星とおじさんが二人で食事をする風景は想像出来なかったけど、少しずつ二人の距離が縮まって行っているのなら嬉しい。

「まあ会話は私が話す事が多いんだけどね。」

「流星はあんまり話さないから…。俺といた時も俺が一人でしゃべってるような感じでしたよ。でもちゃんと話は聞いてくれてる。」

「そうだね。日菜太くんは私よりも流星の事に詳しいし、流星をわかってくれているんだね。」

「そんな事はないと思いますけど。」

会話に少しの間が訪れる。二人でコーヒーを口に入れた時におじさんの携帯が着信を伝える。

「どうぞ。」

「片桐からだ。すまない。」

そう言えば、まだ夕方なのにこんなところで俺と話しててもいいのか?ふと疑問に思っておじさんを見るともう話は終わったようで携帯をしまっているところだった。

「どうやら仕事をサボっているのがバレたようだ。」

茶目っ気たっぷりの笑顔を見せるおじさんは俺と話した事でスッキリしたように見えた。

「日菜太くん、流星は自分の気持ちを話すのが苦手な子だけどこれからも友達でいてやってくれるかい?流星は日菜太くんになら気持ちを話せるんだと思うんだ。今まで誰一人友達なんて作らなかった流星が受け入れた唯一の人だからね。ゆっくりと流星を見守ってやって欲しい。君が流星の傍にいてくれたなら私はすごく安心出来る。」

「でも流星はそう思うかどうか…。」

「君が思っているより流星は君の事を大切にしていると思うよ。君といると何だか温かい気持ちになる。太陽みたいだって流星は言っていたがその通りだと今日話してみてわかったよ。君が太陽なら流星は月だ。月を照らしてくれるのは太陽だろう?だから大丈夫。喧嘩してお互いに気持ちをぶつけあって理解して行けばいいじゃないか。何もせずに後悔するより行動する方が良くないかい?」


おじさんにそう言われて、グジグジと悩んでいる自分は自分らしくないと言われている気がして、背中を押してもらって足が一歩前に出た気がした。後悔なんてしたくない。

「そうですね。俺も今日おじさんと話して良かった。流星が愛されている事がわかったし、おじさんを先入観だけで見てたから。」

「じゃ、たまには私とこうして話をしてくれるかい?私の知らない流星の事を教えてくれるかい?」

「もちろんです。でも仕事をサボるのはダメですよ。片桐さんが可哀想ですから。」

「そうだな。片桐には本当によくしてもらっている。私の唯一の味方だ。おっと片桐を待たせてしまう。」

俺とおじさんは携帯のアドレスの交換をしてまた会う事を約束した。

おじさんが店を出た後も俺は椅子に座り込んで氷が解けてしまったキャラメルマキアートを飲みながらおじさんとの会話を思い起こしていた。

少しずつだけどおじさんを受け入れている流星。愛されていたんだってわかったのかな?そうだったらいいな。

ちょっとだけ気分が軽くなって家に帰った。でもだからって次の日から流星と普通に話せるかと言えば出来なかった。流星が俺を避けているのがありありとわかって、せっかく芽生えた勇気もしなびてしまう。でも頑張らなくちゃなとは思うんだけど…。

一度離れてしまうと前は自然と出来ていた事が出来なくなる。

ただ一言『おはよう』と言うことさえ出来ない…。


流星とは話を出来ないでいるのとは対照的に、おじさんとはあれからも何度か会っている。

会って何をするわけでもないけど、今時の高校生のする事を教えて欲しいと言われ、カラオケに行ったり、ゲームセンターに行ったりして2時間ほどを一緒に過ごす。その中で流星の話をしたり、学校での様子を話したりするとおじさんはとても喜んだ。

おじさんもその代わりにと、最近の流星の様子を聞かせてくれたり、一緒に住んでた頃の流星の話を聞かせてくれた。

まだ仲直りをしていない事を責められるかと思ったけど、「お互いに必要だと思ってるんだから焦る事はない。きっと仲直り出来るよ」っていつも励ましてくれる。まだ、仲直りは出来てないけど、前に比べると流星を目で追っている自分がいて、ほんの時々なんだけど視線が重なる時もある。なのにどうしても美樹さんの事が気になって素直に流星に話しかけられない。

流星はきっと俺が大嫌いって言っちゃったから自分からは話しかけてくれる事はないと思う。『大嫌い』って言葉も流星を傷つけたはず。あの時の流星の悲しそうな顔が頭の中に浮かぶ。

ああ、俺ってほんとにダメだ。こんなじゃ友達としても流星のそばにいられない。でも友達として傍にいる事が耐えられるかどうかも自信がない。だってやっぱりまだ流星の事が好きなんだ。好きだからこそ流星の力になるんだろっていう自分と、幸せそうにしている流星を傍で見ていられるのかっていう自分がせめぎ合っている。それも仲直り出来ない原因なのかもしれない。

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