「新撰組物語」
粉雪

粉雪2

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斎藤2


「貴方はバカですか‼」

いつもは冷静で表情をあまり変える事のない奴が怒ってるのって不思議な感じだ。

怒られているのに、何だか見た事のねえもんを見れたからか俺は笑っていたらしい。

「何を笑ってるんです‼打ちどころが悪かった…?」

真剣に悩みだした姿も慌てている姿も意外でまた笑えてくる。

いつもは表情を崩さない奴が俺の為にいろんな表情をしてくれるってえのは存外嬉しいもんなんだな。

「原田さん本当に医者に行かなくて大丈夫なんですか?」

「ああ。大丈夫だ。笑ってすまねえ。いつもは表情の変わらないお前がいろんな顔を見せてくれるんでな、笑うっつうより嬉しくてにやけちまったんだろうよ。治療してくれてるのに不謹慎ですまねえな。お前が手当てしてくれなくても山崎の所に連れて行ってくれりゃよかったのによ。」

「謝らないで下さい。俺もそう思いましたが山崎くんは今、内偵に出かけています。他の隊士には任せられないし、怪我をしてしまったのは俺を庇ったからだから俺が手当てします。でも何で俺を庇ったんですか。」

「何でって言われてもとっさに身体が動いちまったんだから仕方ねえだろう。まあ俺が庇わなくてもお前なら大丈夫だっただろうなって後から気が付いたんだけどな。」

「それで代わりに自分が怪我するなんて本当にバカです。でも…ありがとうございます。」

「礼を言われる事はしちゃいねえよ。助けるつもりが怪我しちまってカッコ悪いしな。助けるならもっとスマートじゃねえといけねえ。」

「原田さんの美学ですか?」

「そんな大層なもんじゃねえが庇った相手を心配させちゃいけねえよな。」

俺の腕にさらしを巻きながらもう斎藤は何も言わなかった。

しゅるしゅると巻かれて行くさらしの音と静かな息使いしか流れない時間。

日頃、大勢の男たちばかりで過ごす空間にこんな静かな時間は珍しい。

斎藤は見回りに行って帰って来ても、すぐ道場へ行き、隊士達の訓練に明け暮れている。誰に言われてもいない自分から進んで稽古をつけている。でも俺は知っているんだ。それは土方さんの為なのだと…。

少しでも腕の立つ隊士を増やし、新撰組を強くする。そうすれば土方さんも楽になるはずだと斎藤は思っているのだと思う。






「本当なら俺が稽古つけてやらなきゃいけないのに全部斎藤に押しつけちまって悪いな。」

「いいえ。土方さんは他にする事がいくらでもあるんですから、俺に出来る事なら俺がやります。土方さんは気にしないで下さい。」

「ありがとうよ。」




隊士の稽古を見ていた土方さんと斎藤の会話を偶然聞いてしまった。

『ありがとよ』と言った土方さんの言葉に嬉しそうに微笑んでいた斎藤の顔が焼き付いている。きっと誰にも見せた事のない顔だ。土方さんしか知らない斎藤の顔。

そんな顔を俺に向けてくれる事はないが、今日はいろんな斎藤の顔を見れた事に満足する。

怪我は痛いが、斎藤のいろんな表情を見れたことで相殺されたようなもんだ。

今はこの静かな時間を楽しんでいたいと思うがそんな事を思うのは俺くらいのもんで、そろそろうるさいのが来るだろう。ほら来た。

「左之さ~~~~~ん‼怪我したってほんと?」

廊下をバタバタと走って来たのは平助。藤堂 平助だ。後ろには永倉 新八も鼻をほじりながら付いて来ている。新八はは本当にがさつな奴だ。それでいて女好き。なのにがさつさが災いして女に好かれないっつう可哀想な奴だ。見てくれはそんなに悪いわけではないと思うんだけどなあ。

平助は新撰組で最年少で幹部になっただけの腕は立つ。が、何分子供っぽい。俺にとっちゃあまるで弟みたいな奴だ。




「平助うるさい。たいした怪我じゃねえよ。」

「ほら見ろ。だから言ったろ。左之がそんな怪我するわけがねえんだ。女に刺されるってならわかんねえけどな。」

「左之さん女にモテるもんな。どこかの女に恨まれてるかもしれないもんね。」

「だろ。」

「平助も新八も失礼な奴だな。俺は女にそんな酷い真似はしてねえよ。恨み言なんて言われた事もねえ。」

「はいはい。で、今から島原に行くんだけど左之も行くだろ?」

「また行くのか?お前らも好きだね。」

「じゃあ、原田さん、手当ては終わりましたので俺はこれで失礼します。山崎くんが帰って来たらもう一度診てもらって下さい。」

「ああ。ありがとな。」

「一くんも一緒に行かない?」

「いや。遠慮しておく。俺は隊士の稽古を見なくてはいけない。ほどほどにな平助。永倉さんも。」

「ああ。わかってるって。」

斎藤はいつもの感情の読めない顔になって部屋を出て行った。

斎藤は平助と年が近いから下の名前で呼び合っている。平助がそう呼んでくれと煩く斎藤に言いつのったらしい。自分は斎藤の事を勝手に「一くん」と呼んでいる。斎藤をそう呼ぶのは平助と沖田だけだ。斎藤は沖田の事も「総司」と呼んでいる。



「で、左之さん行くだろ?」

「あ、わりい。俺は行かねえ。怪我しちまってるしな。酒飲んだら傷に悪いだろう?」

「うっそ‼いっつも怪我なんざあ酒を飲めば治るって言ってるじゃん。」

「そうだったか?とにかく俺は行かねえからお前らだけで行って来いよ。早く行かねえと土方さんが戻って来るぜ。門限までには帰って来いよ。泊まりの申請してねえんだろ?」

「そうだった。平助早く行くぞ。土方さんが帰った来たら行けなくなっちまう。」

「ほおお。俺が帰って来たらどこにいけないんだ?新八?」

「げっ。土方さん…。」

「平助どこに行くつもりだ?まさか島原とか言わねえよな。」

「い、言わないよっ。な、しんぱっつあん。」

「あ、ああ。さ、斎藤が隊士の稽古付けに行くって言ってたから俺達も行こうかなってな、平助。」

「え?俺に振るなよ。」

「そうかそうか。隊士達に稽古をつけてくれるのか。腕の立つ幹部が稽古をつけてくれるとなりゃ隊士達の士気も上がるってもんだ。俺もちょっとイライラしてるから稽古で汗を流すとするか。そうだ。どうせだから平助、新八、俺が稽古をつけてやる。お前たちの腕が衰えてねえか鬼の副長としては見ておかねえとな。」

「ひぇっ。土方さん目が怖いよっ。」

「鬼の副長とか自分で言うなよ。目が笑ってねえって。」

「男がつべこべ言うな。さっさと道場に行くぞ。原田、夕食が終わったら俺んとこに来い。その怪我についての報告をしろ。山崎が帰って来るのは明日になる。傷が痛むなら医者に行け。」

「手当ては斎藤がしてくれたから大丈夫ですよ土方さん。俺、夕食まで横になるんでこいつら連れて行ってくれませんか?さっきから煩くて傷に響いてしょうがねえ。」

斎藤との静かな時間を邪魔したお返しに新八と平助にちょっと嫌がらせをしてやる。

「うそっ。左之さんひでえ。」

「そうだぞ左之っ。俺達は仲間じゃねえのかよっ‼」

「仲間だったら休ませてやれ。お前達は島原に出かけるほど体力が有り余ってんだろうが。俺が発散させてやる。」

「ひぇっ。バレてるよしんぱっつあん。」

「くそおっ。こうなっちゃあ逃げれねえ。覚悟しろ平助。」

意気揚々と歩き出した土方さんの後を項垂れた新八と平助がついて行くのを見て少し意地悪だったかとも思ったが、静寂が戻ってくるとそんな事も忘れて俺はさっき見た斎藤の色々な表情を思い出していた。

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読んで頂きましてありがとうございます。

1話目が少し短かったので、2話目はいつもより長かったですね。読みにくかったらごめんなさいm(._.*)mペコッ

今日のイラストは一ちゃんです。ちょっと暗い雰囲気になってしまいました。相変わらずスキャンは調子悪いし…。取込んだ画像はキレイのになあ。母親のパソにしかスキャンが反応しなくて(なぜかなんてわからない(> <。))そっちで取り込んだからかなあ。私のパソで取り込めたときはキレイに取り込めたのに…。ちゃんと画像も400くらいにしてるのに…。まあ機械音痴の私のする事ですから…。

明日は最終話です。お立ち寄りくだされば嬉しいなあって思います。

最後まで読んで下さってありがとうございました。

†Rin†


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