「新撰組物語」
粉雪

粉雪3(最終話)

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池田屋事件から総司の体調は思わしくなかった。

ケホケホと乾いた咳をするようになり、小食だった食欲がますます減り、代わりにちびりちびりと酒を飲むようになっていた。

それでも街の見回りに出かけようとして土方さんと押し問答する姿が日課となっていた。



「だから、土方さんは過保護すぎるんですよ。本人が大丈夫だって言ってるんですから大丈夫なんです。自分の体の事は自分が一番わかってますよ。」

「じゃあ、この茶碗一杯の飯を食ってから行け。お前ここ何日もろくに食ってねえだろうが。食えたら見回りに行かせてやる。食えなかったら斎藤、お前の三番組が見回りだ。」

「ちょっと土方さん、一くんの三番組はさっき帰って来たところだよ。無理言っちゃだめだよ。」

「斎藤、俺は無理を言ってるか?」

「いいえ。大丈夫です。先ほどの見回りは何もありませんでしたから、隊士たちもそんなに疲れてはいません。」

「ほら見ろ。総司、食えなかったら三番組が行くってよ。」

「ふん。一くんの裏切者。土方さんの言う事なら何でも聞いちゃうんだから困っちゃうよね。いいですよ食べればいいんでしょ。食べればっ‼」

売り言葉に買い言葉。総司は無理やりに飯をかっこむ。が元々、茶碗一杯も食えないのだ。体調の悪い時に食えるはずがない。

土方さんはわかってて無理難題を総司に押しつける。理由を付けて見回りに行けない様にする為だ。もちろん総司だってそんな事はわかってる。だけど一番組を率いている組長なのだ。見回りに行けませんとは言えない。

斎藤はそんな二人の気持ちをわかっていて嫌な役を引き受けているのだ。土方さんの為に…。

ここで三番組が行けば一番組の隊士は「総司に行かせてやってくれ」と言わなかった斎藤を恨むだろう。それをわかって尚、引き受けようとする斎藤が一途で健気だと思うのは俺だけだろうか?そもそも他の奴はそんな土方さんや斎藤の気持ちをわかっているのだろうか?

げほげほっ…。飯が喉に詰まったのか総司が激しく咳き込む。

「もういい総司。部屋で横になれ。後で薬を持たせる。」

「嫌だよ。僕は見回りに行くんだから。」

「総司、俺を困らせないでくれ。近藤さんも部屋でいて欲しいと思っているんだ。後で部屋に行くと言っていたぞ。」

「え?近藤さんが?わかりましたよ。……僕部屋に戻ります。一くん悪いけど見回り頼むね。今度、替わるからさ。」

「ああ。俺は構わない。それよりちゃんと部屋で休んで風邪を治す事だ。」

「…そう…だよね…。じゃ…。」

総司が大人しく部屋に戻ったのは近藤さんが来るからだろう。総司は近藤さんを兄のように慕っている。あるいは愛情なのか…。




いつの間にか部屋には土方さんと斎藤と俺だけになっていた。

「土方さん、総司は大丈夫なのか?乾いた咳をしていたのが気になる。」

「そうだな。薬は飲ませてるんだがすっきりしないな。昨日の夜も咳が出て眠れなかったようだ。」

「土方さんも寝ておられないのではありませんか?」

「俺はちょっと寝てないくらいは大丈夫だ。総司が苦しんでるのにほっとけねえだろう。医者にも診せてはいるんだが…。」

「京は寒いですからね。江戸育ちの総司にはきついでしょう。」

「ああ、かもしれねえ。どら、ちょっと総司の部屋を覗いてくるとするか。あいつめんどくさがって火もつけてねえかもしれねえからな。斎藤、見回りたのんだぜ。無理言って済まねえがよろしく頼む。」

「土方さん、俺の組が行ってもいいか?斎藤は総司の分まで隊士に稽古つけてるから疲れてる。本人はそんな事ないって言うけどな。」

「原田さん、俺は大丈夫です。見回りは俺が行きます。」

「そうか。原田が行ってくれるなら頼む。この頃斎藤に無理させているのはわかってたんだが、つい頼んでしまってな。斎藤、今日はゆっくりしろ。お前も顔色が悪いぞ。俺は一人しかいねえから総司もお前も看病するわけにはいかねえからな。」

「そんな土方さんに看病などと…。自分の身は自分で面倒みます。土方さんは総司に付いてやってください。」

「まあ忙しくてそんなに見てられねえんだが…。とにかく俺は行くぜ。後は原田、頼んだぞ。」

土方さんが静かに部屋を出て行くのを二人で見送る。

斎藤を見ると切なげな瞳で見えなくなった土方さんの後ろ姿を追いかけていた。その瞳に何だかもやもやしたものが胸にはびこってくる。何だ?これは…。胸に手を当てて考えるが何だかわからない。


「原田さんすいません。本当に見回り変わってもらっていいんでしょうか?」

斎藤が俺を真っ直ぐに見て話しかけただけで、モヤモヤしていたものがなりを潜め、かわりにドキリと心の臓が音をたてる。いったい何なんだ?

「あ、ああ。かまわねえ。俺の組は血の気の多い奴の集まりだからな。部屋にこもってると喧嘩をおっぱじめて土方さんの大目玉が落ちるからよ。」

「そういう原田さんが先頭きって喧嘩をするんですよね。」

さっきまで切なそうにしていた斎藤が小さく笑ったのでホッとする。あんな顔、正直見たくねえ。

「まあ俺が組長だからな仕方ねえ。それより斎藤、本当に顔色が悪いぞ。酷くなる前に休んどけよ。土方さんじゃないが、お前まで倒れられたら新撰組にとって痛手だからな。」

「ありがとうございます。お言葉に甘えて少し休ませてもらう事にします。」

「ああ、そうしな。静かに寝てるのが一番だ。」

斎藤の肩をポンと叩いて見回りの為に部屋を出る。

土方さんは総司の事が気になって仕方ないらしい。小さなころから総司を見てきたからだけとは思えない。それ以上のなにかを感じる。それは斎藤の方がもっと感じているのかもしれない。あの切なげな瞳を土方さんは知っているのだろうか?

斎藤は部屋に帰っても寝る事はないだろう。いつでも土方さんの為に動けるようにと静かに部屋で刀でも磨いている気がする。

きっと斎藤も昨日は眠れていないはず。総司の部屋は斎藤の部屋を通り過ぎたところだから、夜中に土方さんが総司の部屋に行けば足音でわかるはずだ。いくら静かに歩いても軋む音がしないわけではない。

街に見回りに行ったら内緒で酒でも買って来るか。無理にでも斎藤に飲ませて寝かせてやろう。うん、いい考えだ。酒の力を借りてたまっているものを吐き出させてもいい。少しでも斎藤の抱えているものを減らしてやりたい。そう思う事は変なんだろうか?

斎藤は本当にいい奴だ。そいつの為に何かしてやるのは年長者の役目だろう。そう、それだけだ。

俺は十番組の隊士に声をかけ、市中の見回りに出かける。今日も雪が降っている。こんな日の夜は熱燗だなと思いつつ、酒を飲んで眠る斎藤の顔を想像する。

少し笑んで幸せそうに眠る斎藤の顔が見たいと思っている自分になぜか、赤くなる左之だが、その気持ちの正体を知るのはもう少し先の事だった。



Fin

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読んで頂きましてありがとうございます。

中途半端ですか?BLなのにBLらしくないかも…。久しぶりの短編で…難しかったです(-"-;A ...アセアセ
いつかこの続きが書けたらいいなあと思います。土方×沖田編も…。

一ちゃんの健気なさが私的にはキュンなのですが、伝わったかなあ。それに対して男前な左之さん。女好きなはずが一ちゃんが気になっています。いつかまた、それからの二人が書けたらお目にかかれるかな。いつになるかはわかりませんが…。

新連載がはじまります。流星と日菜太が高校生だったので、大人な恋愛が書きたいと思いまして今度は喫茶店のマスターとリーマンのお話です。よかったらお付き合い下さいませ。

最後まで読んで下さってありがとうございました。

†Rin†



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