土曜の雨のジンクス
土曜の雨のジンクス9
「や、やめてください‼」
顔を見られたくなくて前髪をすくっていた鈴城さんの手を払いのけてしまってからしまったと思う。
手を払いのけられた鈴城さんはあっけにとられたような顔をしていた。払いのけられた手もそのまま宙にある。
「あ、すいません。そんなつもりじゃなかったんです…。」
だんだん小さくなる声…。そこにいるのがいたたまれない。
ただ前髪をあげただけなのにこんな過剰な反応をされて鈴城さんはどう思うだろう。
鈴城さんは仕事の相手なのに…。
少しの間静寂が訪れる。
「すいません。視界をよくしたくないんです。臆病なので他人と目を合わせるのが怖いんです。男なのに情けないんですが…。」
「いえ。僕こそすいませんでした。友達でもないのに馴れ馴れしくした僕が悪いんです。伊藤さんは当たり前の反応をしただけですよ。それより伊藤さんは案外シャイなんですね。そうじゃないかなとは思ってましたけどこんなにもだとは思いませんでした。でもやっぱりもったいないなあ。綺麗な顔してるのに…。」
鈴城さんの視線を感じて居心地が悪い。不躾な視線ではないけどじっと見られるのは嫌だ。
運よくスマホが着信を告げてくれたのでその視線から外れ外に出る。
電話は会社からで確認の電話だったけど、会社から呼び出しがあったとここから帰る事を思いつく。それなら角を立てる事無く帰れるだろう。
「鈴城さんすいません。会社から戻るように言われましたので、今日はこれで失礼します。酒井からまた連絡があると思いますのでよろしくお願いします。今日はお時間を取って頂きましてありがとうございました。」
そう言うとオレはコーヒー代にと1000円をテーブルに置きカバンを持つ。
「残念だなあ。せっかく伊藤さんとランチを食べれると思ったのに…。でも仕事じゃ仕方ないね。ランチはまた今度にしよう。あとこれ要らない。まだコーヒー来てないし…。」
テーブルに置いた1000円を返され、でも…と言うオレに鈴城さんは横に首を振る。こんなところで金の押し付け合いするのもおかしいかと言われた通りに財布にしまい、一礼して店を出た。
コーヒーが運ばれてなくてよかった。きっと鷹之はオレに気が付いていないだろう。
オレの背中を鈴城さんがずっと見てたなんて知らずにオレは急いでこの街を出た。
「あら今の人…。はい鈴城さんお待たせ。ランチとあ、コーヒー遅かった?ごめんなさい。一緒に来た人帰っちゃったのね。」
「電話で切って来いって呼び返されたみたいだから仕方ないよ。それよりすみれちゃんじっと見てたけど知ってるの?伊藤さんの事。」
「伊藤さん…?ああさっき一緒に居た人?何かどっかで見た事がある気がするのよ。どこだったのかしら?」
「似た人を見たんじゃないの?」
「ううん。あの人だったと思う。」
「おーーい。すみれドレッシング忘れてる。鈴城さんすいません。」
「あー思い出した。雨の日にタカにぶつかった人だわ。」
「え?その人がどうかしたのか?」
「さっき鈴城さんと入って来た人がその人だったの。」
「その人は?」
「もうとっくに帰っちゃったわよ。でもどうして知らないふりをしたのかしら?そんなすぐには忘れないと思うんだけど。」
「すみれ、悪いけどレモンが切れちゃったんだ。買って来てくれないか?後、生クリームも。」
「いいわよ。じゃ鈴城さんごゆっくり。」
「何?その人の事が気になるの?」
「そんなんじゃないですよ。鈴城さんのお知り合いなんですか?」
「仕事絡みのね。でも今一番気になる人かな。あ、僕が狙ってるんだからね。菅沼さんは手を出さないでよ。」
「なんでオレが手を出すんです?」
「何だろうね。何となく菅沼さんとライバルになるような予感がして。でもそうだよね。僕の取り越し苦労かな。でも今日は失敗したな。もしかしたら警戒されちゃうかもしれないなあ。もっとゆっくりアプローチしていくつもりだったのになあ。」
「何をしたんです?」
「ん?髪の毛を触っただけだよ。顔を見せるのがほんとに嫌みたいだ。綺麗な顔してるのにな。」
「鈴城さんパスタ冷めてしまいます。ゆっくりして行ってください。」
「ありがとう。今度また彼を連れてくるからね。僕の恋人としてさ。」
「はい。楽しみにしていますよ。」
「僕は本気だからね伊藤さん。」
オレが帰った後でそんな会話がされている事など知る由もなかった。
それから何事もなく1週間が過ぎ、鷹之の事を考える時間が少なくなってきている事にホッとしていた。そうやって忘れて行くのだと少し寂しい気分になりつつも安堵感の方が大きかった。
「おい伊藤。この間鈴城さんと会った時にランチ一緒に食わなかったのか?」
「どうしてそんな事を聞くんです?」
「今日、鈴城さんに会った時にお前の話が出てさ。鈴城さん残念がってたぞ。」
「そうですか。でも担当は酒井さんじゃないですか。酒井さんと食べるならまだしも、数回しか会ってないオレと食べても仕方ないでしょう。酒井さんがお相手して下さい。」
「まあ企画のお前とじゃあまり接点はないはなあ。でも鈴城さんはえらくお前を気に入ってるみたいだし、円滑に仕事を運ぶためだからさ。という事で今日は鈴城さんとこと合コンです。伊藤も必ず参加するように。これは業務命令だ。わかったな。」
人睨みされれば頷くしかない。酒井さんにはいろいろと世話になっているのだ。
了承を得たとばかりに子供の様に喜ぶ酒井さんを見ているとまあいいかと思う。合コンは苦手だけど、たまにはこうして普通の人と同じように女の人とも接しておかないとばれてしまうかもしれない。
ふりでもしておけばオレのマイノリティーを知られる可能性は低くなる。あらぬ噂をたてられては仕事が出来ない。
「最初だけ参加してればいいかな。酒井さんに言って早く帰らせてもらおう。」
その合コンでまた鷹之と会う事になるなどとは思いもしないオレだった。
*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚・*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*゚¨゚゚*:..。♡*゚¨゚゚・*:..。♡*
読んで頂きましてありがとうございます(o*。_。)oペコッ
ずっと読んで下さっている皆様。初めてお越しくださいました皆様。本当にありがとうございます。
鷹之と明日叶の恋は始まったばかりでなかなか鷹之が出て来ませんが、次回から本格的に絡んできます。鈴城さんもですが…。今日で9話。中編でという事は4,50話で終わらないといけないですよね。長くならない様に気をつけなくちゃ…。
ところで今日は土曜日ですね。やっと週末です。今日はアニメイト天王寺に行って来ます。「世界一初恋」のアニメイトカフェに遊びに行くんです。きっと何かGoodsを買ってしまうだろうなあ(笑)
アニメイトに行く事が決まってるので3月に入ってからマンガを我慢してました。本屋に行くと絶対に買ってしまうので本屋にも行かず…。やっとマンガが買えます(笑)重くなりそう…。でも楽しみです☆
ランキングに参加しています。ポチッと押してくだされば嬉しいです。いつもありがとうございます・:*(〃・ェ・〃人)*:・



にほんブログ村
- 関連記事
-
- 土曜の雨のジンクス11
- 土曜の雨のジンクス10
- 土曜の雨のジンクス9
- 土曜の雨のジンクス8
- 土曜の雨のジンクス7
スポンサーサイト
もくじ
未分類

もくじ
✽✽✽目次✽✽✽

もくじ
ご挨拶

もくじ
貴方の腕の中で

もくじ
たとえこの世の終りが来ようとも

もくじ
キミが思い出になる前に

もくじ
月と太陽がすれ違う時

もくじ
S.S

もくじ
イラスト

もくじ
頂きもの☆

もくじ
雑記

もくじ
土曜の雨のジンクス

もくじ
さよならが言えなくて。

~ Trackback ~
卜ラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)