土曜の雨のジンクス

土曜の雨のジンクス13

 ←土曜の雨のジンクス12 →土曜の雨のジンクス14


もう何杯飲んだかわからなくなっていた。

今日見た鷹之から逃れるように酒を煽っている自分に気が付きながらも杯を止める事は出来なかった。

そう逃れようとしているのに気が付いてたんだ。逃れないと捕まってしまうから必死で逃げてるのに、鷹之は平然とオレの前に立ちふさがる。いくら逃げてもすぐに追いついてくる。そこから逃げるために杯を重ねてしまって、マスターがカウンターに戻って来るまでにオレは座っていることも出来ずにカウンターに突っ伏していた。

「佐々木くん、ちゃんと明日叶を見ておくようにいいましたよね。私がいない10分程の間に明日叶は何杯飲んだんです?
貴方は止めなかったんですか?無理して飲んでるのがわかるでしょうに。」

「止めたんですが、飲ませないと暴れるとか服を脱ぐとか言われまして…。」

「…もういいです。明日叶がこんなになると予想出来なかった私が悪いんです。八つ当たりのように怒ってすいませんでした。」

「いえ。」

「そうですね佐々木君も私も悪くない。悪いのはこんなになってしまった明日叶です。佐々木くんここは私がしますから他のお客様は貴方にお任せしますね。私は明日叶を事務所に連れて行きましょう。こんな姿を他のお客様に見せていては店の品位が問われますから。明日叶起きなさい。ほら捕まって。」

「う…ん…たか…ゆ…き…。」

「切ないですね。明日叶はまだ鷹之くんの事が好きなんだから。」

オレの頬を一筋の涙がつたい、それを指で拭いながら苦しそうな顔をしてマスターが見ていた事は誰も知らない。オレも…。





「で、何で明日叶はこんなになってるんだ?お前が傍に付いていながら。」

「すいません。」

「あ、悪い。お前を責めてるんじゃない。どうせお前が席を離れたすきにコイツが無茶飲みをしたんだろう。久しぶりにコイツのこんな姿を見たからつい責めるような物言いをしてしまった。本当にすまない。」

「いえ。明日叶、鷹之くんに会ったみたいです。あちらは明日叶だとわからなかったそうですが、女性と一緒に喫茶店をしているそうですよ。」

「そうか…。辛いな明日叶も…。会わなければいつかは忘れると思っていられたろうに。女と一緒の所となると余計にな…。」

「ええ。明日叶は鷹之君の事を忘れたと言っていましたが、この様子ではあの頃と変わってないんでしょうね。明日叶は今でも彼の事が好きだと思います。」

「だろうな。じゃなければこんなにはならないだろう。」

オーナーの手が優しくオレの髪の毛を梳く。マスターはその様子を優しく見守ってくれていた。

「コーヒーでも淹れましょうか?」

「ああ。頼む。こいつを送って行かないといけないから酒は家に帰ってからだな。今日の酒は少しからどうだ。遥斗も付き合えよ。」

「はい。征一郎の気が済むまで付き合いますよ。」

オーナーとマスターがそんな会話をしていたなんて知らずにオレは事務所のソファーで眠っていた。







「おい明日叶、もうすぐマンションに着くぞ。いい加減起きろ。」

「う…ん…。眠い…無理…。」

「こらっ。何で目を開けたのにまた寝るんだ?明日叶起きろ。」

「ん?…オー…ナー?」

「疑問形にしてんじゃない。ちゃんと目を開けろ。全くガキみたいな飲み方しやがって。オレと遥斗じゃなきゃ今頃犯られてるぞ。」

「オーナーとマスターの前意外じゃこんな飲み方しないよ。」

「寝たまましゃべるな。ちゃんと起きろ。マンションの前までしか送らないぞ。」

「ん。…着いたら起こして…。」

「もう着くんだ。寝るなこのバカ。…てもう寝てるよ。仕方ない。着いたら起こすか。」

乱暴そうな言葉使いだけど、オーナーの運転はとても丁寧でブレーキングも身体に負荷がかからないからオレはすぐに深い眠りに落ちる。オーナーなら安心して身を任せられる。



「おい明日叶。マンションに着いたぞ。って熟睡してやがる。起きろって。」

「ん…。連れてって…。」

「甘えるな。ほらっ、マンションの前で誰かいるぞ。こんな姿見られたら恥ずかしいだろうが。」

「いい。連れてって…。」

「こりゃダメだな。来客者の駐車場から抱えて歩くのかよ。今度お前晩飯奢らすからな。遥斗と二人分だ。」

「ん。」

そのまま来客者の駐車場に停めたマスターに抱えられて歩く。といっても力の入らない足は自力で歩いているとは言えず、オーナーに歩かされているようなものだ。

「重いよ。んとにっ‼歩けっつうんだ。」

「ん…。」

ふと征一郎はマンションの前にいた人物がこちらをじっと見ているのに気が付く。それもその視線の先は自分でなく明日叶を見ている。

「最近はストーカーの話は聞いてないけど、またやらかしてんのかお前。」

視線の主は目をそらすことなく明日叶だけを見ている。

「あれヤバイ奴じゃないだろうな。おい明日叶目を開けてあいつを見ろ、知ってるやつか?ってダメだな。仕方ない恋人がいるって思わせておくか。」

征一郎は肩に抱えていた明日叶の手を首に回させると横抱きに抱え上げた。そのまま視線の主の前を通る。もちろん通る時は恋人だと思わせるようにという配慮も怠らない。

「オレの前だからって無防備な姿で煽りやがって。部屋に着いたらお仕置きだな。ほら、ちゃんとつかまっておけよ。」

そう言って明日叶にキスをする。触れるだけのキスだがここまですれば相手に十分にわからせる事は出来ただろう。思惑通りにその人物はその場を走り去って行った。

「何かあいつ見た事がある気がする。どこでだ?」

走去る背中を見ながら呟くがその答えはでない。

「ん…。さむ…。」

「すまん。寒いよな。早く家に帰ろうな。」

征一郎は明日叶を抱え直すと部屋まで振り返る事なく歩いて行く。

明日叶のカバンからキーケースを取り出し鍵を開ける。廊下に座らせていた明日叶が寒さで目を覚ました。

「寒い…。」

「おう、やっと起きたのか。立てるか?」

「ん…。何?オーナーが送ってくれたの?」

「ああ、遥斗は店があるからな。何だ?オレじゃ不足だとか言うつもりか?」

「そんなわけない。今日はオーナーに話を聞いて欲しくて店に行ったんだ。」

「今晩の相手を見繕うつもりじゃなかったのか?」

「それも思ってたけど。もういいかな。」

「お前明日も仕事だろう。今日はさっさと風呂に入って寝てしまえ。話はシラフの時に聞く。そうだな今週の週末に家に来い。遥斗の手料理を食わしてやる。」

「本当に?遥斗さんのご飯美味しいもんな。最近外食ばかりだから楽しみだな。」

「そうそう。明日叶は色気よりも食い気の方がいい。オレ達が心配しなくてもいいからな。しっかり食べてもっと太らないと抱き心地が悪いぞ。」

「バ、バカ。オーナーに抱かれたりなんかしない。そんな事したらマスターに店に来るなって言われちゃうよ。」

「明日叶を抱いたりなんかしないさ。遥斗が一番だからな。お前はガキ臭すぎ。」

「ガキガキ言うなよ。そりゃオーナーに比べたらガキかもしれないけど、オレもう23だよ。会った頃とは違うんだからな。」

「はいはい。もう大丈夫だな。じゃオレは遥斗が待ってるから帰る。あんまり遥斗を心配させるなよ。それと1ヶ月も音沙汰なしはやめろ。ちゃんと連絡して来い。」

「…ごめん。これからはちゃんと連絡する。」

「ああ。じゃあな。おやすみ。」

「おやすみなさい。遥斗さんにもありがとうって言っといて。」

オーナーは手を振って帰って行った。

「あーあ。飲み過ぎたな。風呂入って胃薬飲んで寝よう。」

オレはマンションの前にいた人物の事も知らずに風呂に入ると眠ってしまった。



ランキングに参加しています。ポチッと押してくだされば嬉しいです。いつもありがとうございます・:*(〃・ェ・〃人)*:・

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト





もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ご挨拶
もくじ  3kaku_s_L.png 貴方の腕の中で
総もくじ  3kaku_s_L.png キミと空とネコと
もくじ  3kaku_s_L.png S.S
もくじ  3kaku_s_L.png イラスト
もくじ  3kaku_s_L.png 頂きもの☆
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
総もくじ  3kaku_s_L.png 新撰組物語
  • [土曜の雨のジンクス12]へ
  • [土曜の雨のジンクス14]へ

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • [土曜の雨のジンクス12]へ
  • [土曜の雨のジンクス14]へ