土曜の雨のジンクス

土曜の雨のジンクス23

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征一郎さんと遥斗さんと3人で飲んでしばらくしてからオレは鈴城さんをcriminal mindに誘った。いつも鈴城さんに誘われているばかりでオレから誘う事がなかったし、征一郎さんと遥斗さんに連れてくるように言われてたこともあって声をかけたんだけど、鈴城さんは初めて誘ってもらったとすごく喜んでいた。やっぱり誘われない事が引っかかってたのかな。何だか鈴城さんに申し訳ない事をしてたような気がして少し胸が痛くなる。これからはもっとオレからも誘うようにしないといけないんだろうな。

遥斗さんに鈴城さんと二人で行く事を伝えて会社帰りに寄ると鈴城さんはまだ来ていなかった。

「先に鈴城さん来てるかと思ってたのにまだなんだ。」

「ええ。この間明日叶に声をかけてきた人ですよね。顔を覚えているので来たらすぐにわかります。」

「おかしいなあ。約束の時間過ぎてる。急に残業を言われたのかな。時間に遅れるような人じゃないから。」

「そのうち来るでしょう。それまでに潰れない様にしてくださいね。帰りを征一郎に送らせるわけにはいかないですからね。」

「どうして?」

「どうしてって…。鈴城さんは明日叶の事を好きなんですよ。明日叶も二人で出かけたりしてる。酔った明日叶を征一郎が送ると言ったら鈴城さんはいい気分じゃありませんよね。」

「そんなもん?」

「そんなもんです。明日叶はそう言うところ鈍感ですよね。ちゃんと深く考えずに言ったり、行動したりするから周りの人間は明日叶に振り回されてしまうんですよ。」

「そんな事言われた事ないけど…。それにそんなんじゃ仕事出来ない奴じゃないか。」

「そうなんですよ。不思議と仕事ではそれが無いんですよね。プライベートだけに発動するから困るんです。征一郎も私も明日叶に振り回されてばかり。鈴城さんもお気の毒です。」

「マスター酷い。オレそんなに振り回してないって。」

「征一郎が一番の被害者だと思いますよ。」

「マスターっ‼」

確かに征一郎さんに甘えてるなあとは思ってるけど、そこまで振り回してるつもりはない。けどそこまで言われると不安になる。この二人以外に甘えられる人なんていないからつい甘えてしまうんだよな。

遥斗さんは案外厳しい人だから必然的に甘い征一郎さんへと矛先が向かってしまうのは仕方ない事だと思う。征一郎さんはいつでもオレを甘えさせてくれる。オレの最終的な逃げ場になってくれてるんだ。

それからもあーでもないこーでもないって遥斗さんとしゃべっているとやっと鈴城さんが店に入って来た。

「ごめん。せっかく伊藤さんが誘ってくれたのに遅れちゃって。」

「いいですよ。知らない店じゃないしマスターとずっとしゃべってたから待ったって感じがしないし。残業でも入りましたか?」

「そうじゃないんだ。待ち合わせの時間まで時間を潰そうと菅沼さんの店に行ったんだよね。オレあそこのコーヒーを1日1杯は飲まないとダメでさ。」

鷹之の店って聞くだけで言い知れない気持ちになって言葉が出て来ない。マスターは鈴城さんにおしぼりを出してオーダーを取りながらオレの顔を見て大丈夫かと気遣ってくれる。

無言で小さく頷いた事に鈴城さんは気が付かずにそのまま話し続ける。

「菅沼さんオレにコーヒーを淹れてくれた後、どこかにコーヒーを持って行かないとって出て行っちゃってすみれちゃんと話してたんだ。オレしか客いなかったからさ二人で話し込んでたら、急にすみれちゃんお腹押えて蹲っちゃってさ。冷や汗かいてるし、尋常じゃない感じで救急車呼んで病院に連きそって行ったんだ。それで遅くなった。」

「え?すみれさん病気?」

「違う違う。おめでただってさ。もうほんとにビックリしたよ。今日朝から寒の戻りで冷え込んだだろ。すみれちゃん薄着だったからお腹が冷えちゃったみたいでさ大事に至らなくて良かったよ。なにせすごく子供欲しがっててなかなか出来なかったからさ。そういえば最近よくお腹に手を置いてたんだよな。お腹に赤ん坊がいたからそんな仕草をしてたんだな。」

すみれさんがおめでた?お腹に赤ちゃんがいるって事だよな?鷹之の子供がすみれさんのお腹にいる?

二人が結婚してるなら当たり前の事。なのにオレはすごいショックを受けていた。鷹之と結ばれる事はないと思っていたはずなのに、どこかですみれさんと別れればオレにもチャンスがあると思っていたのかもしれない。

諦めるなんて言いながら、どこかで期待してた。でも子供が出来たのならオレの恋の実る可能性はゼロだ。その事実が受け止めきれなくて何も言えない。吐きそうだ。鷹之の幸せを祝福しないといけないのに、オレの心の中は真っ黒な気持ちが渦巻く。どうして祝福出来ないんだ。鷹之の事を思えば笑って祝福しないといけないだろう。

「伊藤さんどうしたんですか?真青だよ。すみれちゃんは大丈夫だって。菅沼さんに連絡して菅沼さんすみれちゃんの傍にいるから。伊藤さんは優しいんだな。数回会っただけのすみれちゃんの事をそんなに気にするなんて。」

「違う。オレはすみれさんを気遣ってるんじゃない…。子供…出来たんだ…。鷹之喜んでるんだろうな。」

「鷹之って?菅沼さんの事?下の名前知ってるって二人は知り合い?」

「ごめん…。オレ帰る…。」

「ちょっと伊藤さん。話終わってないって。一体どうしたんだよ。」

「ほっといてくれ。」

「そんな伊藤さんほっとけないって。」

「一人にしてくれ。お願いだから。」

これ以上普通の顔をしていられなくて立ち上がりドアに向かおうとして遥斗さんと目が合う。「送るから」と遥斗さんの口が音をたてずに動いた。一人にしてくれと鈴城さんには言ったけど、一人でマンションに帰るのは寂しくて、自分がどうにかなりそうで怖かった。そんなオレの気持ちに気づいてくれた遥斗さんの気持ちが嬉しかった。遥斗さんは昔のオレを知ってるからオレが自暴自棄にならないようにと思ってくれたのかもしれない。

オレはドアを出て路地裏の従業員用の出入り口から店の事務所に入ってスファーに座り込み遥斗さんが来るのを待った。




「鈴城さんすいません。明日叶はちゃんと私が責任を持って送ります。今はちょっと混乱してるみたいなので許してやって下さい。」

「明日叶?伊藤さんの事ですか?マスターも伊藤さんと親しいんですか?」

「ええ。鈴城さんよりも付き合いは長いですよ。あ、私が明日叶と呼んだ事は内緒にしておいてください。下の名前で呼ばれる事を他の人に知られたくないようなので。」

「はあ。それはわかりましたけど…。何だか伊藤さんの交友関係を知ってしまって良かったのかな?何だかオレも混乱してるっていうか複雑っていうか…。オレも帰って頭ん中整理します。」

「落ち着いたら鈴城さんにもちゃんと話をすると思いますので待ってやって下さい。」

「わかりました。待ってるから話が出来るようになったら連絡をくれって伝えて下さい。あ、もし言いたくなかったら聞かないので気にするなとも伝えてくれますか?」

「鈴城さんは本当にいい人ですね。」

「いい人なんかじゃありませんよ。必死なだけです。オレ伊藤さんの事本気なんで、何が何でも振り向かせたいんですよ。いい人ぶってるだけです。じゃ、伊藤さんの事よろしくお願いします。」

「ええ。わかりました。じゃあお気をつけて。」




「本当に鈴城さんはいい人ですね。あんな人に愛されたら幸せでしょうに…。でも明日叶は鷹之くんの事が好きなんですよね。上手くいかないもんです。」



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