土曜の雨のジンクス

土曜の雨のジンクス43

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征一郎さんと遥斗さんの電話での会話をオレが知っているはずもなく、マンションの前で鷹之と出くわした事も覚い。オレは久し振りの酒でだいぶと飛んでしまったようで、目が覚めた時にはすっかり太陽が昇っていた。

「いて…。っつ。何これ?頭いた。」

起き上がろうとして布団に蹲った。それほど痛い。それに…。

「うわっ。オレ酒くせー。そのまんま寝てる?ん?パジャマに着替える理性はあった?」

「なわけないだろうが。オレが着替えさせてやったんだ。この酔っ払いめがっ。」

物音に気が付いたのか征一郎さんが寝室を覗いていた。

「マジ?征一郎さんごめん。」

「まあオレは明日叶に頼られるのが好きだから許してやる。いつでもオレに寄りかかって来い。遥斗にもな。あ、遥斗にはちゃんと連絡してあるからオレがここに泊まった事、明日叶が気に病む必要はないぞ。ちゃんと仲直りもしてる。」

「そっか。うん良かったよ。オレ、シャワー浴びて来てもいい?いくら仕事休みでもさすがに酒臭くて嫌だ。」

「だな。百年の恋も覚めるって奴だ。朝飯作っとくよ。どうせ二日酔いで頭痛いんだろ。シャワー上がったら一緒に食べような。」

「そうなんだよ。ありがとう。じゃ浴びてくる。」

征一郎さんはいまでこそ遥斗さんと暮らしてるけど、一人暮らし歴はすごく長いらしくて、一通り何でも出来るんだって。料理は遥斗さんの方がうまいけど、それでも征一郎さんの作る物だって負けないくらいに美味しいと思う。オレは出来ないから尊敬するな。

征一郎さんの事だから二日酔いの身体に優しいメニューに違いない。

オレが寝てる間に買い物に行ってくれたのかな?冷蔵庫には見事に何も入ってないはずだから…。

シャワーしている間に何の料理か想像するだけでも楽しい。

「絶対オレの好きな大葉の巻いてある出し巻きはあるな。あとはしじみの味噌汁と胡麻豆腐かお浸しに魚ってとこかな。でも何の魚だろう。鮭は定番すぎて外すだろうし、ブリの照り焼きはしつこそうだし、煮魚はオレが嫌いだし…。」

考えてる内に思ったより時間が経っててあわてて出て拭くのもそこそこに着替え、リビングに行く。

「うわ~~~。おいしそうな匂い。頭の痛いのまで吹き飛びそうだよ。」

「髪の毛ちゃんと乾かしてから来いよ。雫がたれてるだろう。そのままじゃ風邪ひくぞ。」

「早く食べたくてさ。」

「ま、そんだけ元気ならいいか。でも先に髪の毛乾かして来い。」

「わかった。」

征一郎さんがセレクトした魚はあじだった。塩、胡椒、バジルで味付けしてあって他に調味料はいらない。おいしくて征一郎さんの分までもらった。

「明日叶も料理を覚えたらどうだ。外食や弁当ばかりじゃ身体に悪いぞ。」

「でもオレ料理の才能ないんだ。野菜切ると指切るし、大きさ揃わないし、鍋は絶対に焦がすし、買い物しても買いすぎて腐らせるだけだし…。後片付けに疲れるだけだし気分も落ち込むから返ってしない方がいいんだよ。たまに遥斗さんが差し入れしてくれるし。」

「遥斗が?それでよく明日叶の好きなメニューが並ぶんだな。謎が解けた。よしこれからはオレも差し入れしてやる。」

「征一郎さん仕事で飛び回ってるのにそんな時間ないだろ。それに休みの日にそんな事してたら遥斗さんに嫌われると思うよ。オレとの時間を大切にしろって。案外遥斗さんってやきもち焼きだと思うんだよね。」

「そうか。わかった。明日叶よりも遥斗が大事だからな。うん。オレの差し入れは諦めてくれ。」

「征一郎さん、もう帰って良いよ。早く遥斗さんに会いたくなったんだろ。そわそわしてる。」

「あ、ああ。わかるか。じゃ帰るとするか。」

「でもその前に征一郎さんこそシャワー浴びたら?無精ひげみっともないよ。征一郎さんが置いてる服、クローゼットにかけてるし着替えたら?そのまま二人でデートもいいんじゃない?」

「明日叶良い事言うな。うん。そうしよう。家に帰ると出るのが嫌になるからデートなんて久し振りだし、遥斗、見たい映画があるって言ってたからそれ見に行って、食事して…。」

「シャワー浴びながら考えれば?」

もうオレの事なんかすっかり頭の中から消えちゃって遥斗さんとのデートの事で一杯の征一郎さんがやけにかわいく見えたのは内緒だ。

征一郎さんがシャワーを浴びてる間にオレは遥斗さんに電話して、昨日の事を謝って征一郎さんがデートしようとしてるよって伝えた。あわてて用意するのは遥斗さんの性格からして嫌だろうと思ったからだ。

それを聞いた遥斗さんが嬉しそうな声をしたのもかわいいと思った。大の大人二人が久しぶりのデートでウキウキしてるのが微笑ましいなんて言ったら怒られるかな。

遥斗さんは後、30分ほどしたら迎えに来るって言って電話を切った。

今頃いそいそと何を着ていくのか考えてるんだろうな。幸せそうな二人を見ていると羨ましく思うけど、妬ましいとは思わない。いつまでもそうして仲良くしてオレの理想であって欲しいと思う。

征一郎さんがシャワーから出て来て、着替えが終わる頃、征一郎さんのスマホが鳴る。

「もしもし遥斗か?今から帰るから。え?下に来てる?わかった。すぐに行くよ。」

「オレって優しいだろ。遥斗さんに電話しといたんだ。デート楽しんで来てね。」

「ありがとな。じゃ明日叶、何かあったらオレか遥斗にちゃんと言えよ。」

「うん。わかってるって。じゃ本当にありがとう。遥斗さんによろしく。」

「ああ。じゃまたな。」

征一郎さんが出て行くととたんに静かに感じる部屋を一瞥してオレは片付けを始めた。

「今日はシーツもカーテンも洗濯して部屋の掃除でもしてさっぱりするか。」

自分の身の周りは落ち着かないけど、それだから尚更綺麗にしたかった。乱れた部屋は心も乱すと遥斗さんに言われたことを思い出した。

「そうだな。そんなに乱れてるわけじゃないけど誇りかぶってるし、部屋の空気の入れ替えしたのっていつだっけ?」

そう思いながら洗濯し、本棚の整理をすると高校時代の卒業アルバムが出て来て手に取ってページをめくる。

まだ少年の顔をした同級生の中に鷹之を見つけて指が顔をなぞる。

鷹之と一緒に写ってる文化祭の写真もあって嬉しそうに二人で笑ってた。こんな頃もあったんだなと昔に思いを寄せる。

鷹之に愛されていると思ってたあの頃、とても幸せで毎日が輝いていた。喧嘩もしたし、1週間口を聞かなかった事もあったけど、オレが我慢できなくなって謝ったんだったな。あの頃からオレの中では鷹之が1番だった。今もだけど…。

少し苦い思い出を追いながらも、少しの幸せを感じる。愛されていると思うだけで幸せだったのは事実だから。鷹之がどう思っていようとオレは幸せだった。

その頃、マンションの前で征一郎さんと鷹之があってたなんてオレは知る由もなかった。


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