キミと空とネコと

キミと空とネコと14

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「お待たせしました。」

アキくんは腕にたくさんのお皿をのせ器用に運んでくる。

小さいのに力があるのはやっぱり男の子だからかな。

湯気にけむるパスタからはおいしそうな匂いが漂う。

アルデンテの平麺に卵と生クリームのソースが絡み合って、しつこくないのは粒こしょうが効いてるから。肉厚に切ったベーコンも香りが芳醇でおいしい。

「ほんとだ。おいしいっ!!」思わず笑顔になる。

「そうでしょ。高瀬さんに喜んでもらってボクも嬉しいです。」

おいしいを繰り返すオレを見ながら雪夜先生は満足そうな笑みを浮かべる。

しばらくたわいのない話をしながら食事をする。

「高瀬さん、昨日は『初めまして』なんて言っちゃったけど、ボク高瀬さんの事知ってました。」

看護士に言うとしつこく聞かれるので知らない振りをしたんだと、雪夜先生がオレの顔を見ながら申し訳なさそうに言う。

「ああ、やっぱり。スーパーでお逢いしましたよね。」

「いえ。ほんとはもっと前に響夜のマンションで逢ってるんですよ。高瀬さんは気がついて無いと思いますけど、何回もお逢いしてるんです。」

少し意味ありげな表情をする雪夜先生の表情を、パスタを見ていたオレは気がつかなかった。

「えっ。そうなんですか?ごめんなさい。知らなくて・・・。」

そっか、それでオレの顔みてはっとしたような顔してたんだ。

じゃ、響夜とも逢ってたのかもしんないな。

オレはアイツのことしか見て無かったからマンションの住人なんて見てないし・・・。

アイツの事を思い出していた。週の半分はアイツ泊まりに来てたな。あの頃は別れが来るなんて思いもしていなかった。

身を切られるような別れの言葉。アイツの顔。昨日の事のように思い出す。左手の傷がまた、ズキズキと疼きだす。

「高瀬さん・・・。高瀬さん大丈夫ですか?顔色悪いですよ。」

「あっ、ごめんなさい。ぼーーーっとしてました。ちょっと寝不足で・・・。もうパスタもおなか一杯で・・・。」

お皿にたくさん残っているパスタを見て申し訳なく思う。

小さな嘘を重ねていくごとに胃が痛む。

だから、他人と関わりを持ちたくないんだよ。

フリがしんどくて・・・。

「すいません。寝不足ですか?そういえば病院に来た時から顔色はあんまりいいとは言えなかったな。ボクはほんとにダメだな。高瀬さんより年上なのに。動物たちのことはわかるんですが、それ以外のことには疎くて響夜にも聖夜にも、あっ、聖夜は一番上の兄なんですけど、動物達よりももっと人間について勉強しろって言われるんです。」雪夜先生が申し訳なさそうに言う。

「いいんです。雪夜先生。もう謝らないで下さい。言わなかったオレが悪いんです。申し訳なくて辛くなります。」

「高瀬さんほんとに申し訳ない。ってまた謝ってますね。」

お互いにふふっと笑う。

笑いながらオレは限界が近いことを感じていた。

胃の痛みが収まらないから。

「雪夜先生。今日はご馳走様でした。残しちゃってごめんなさい。」

「いいんです。アキくんたちもおいしそうに食べていた高瀬さんを見ているから喜こんでくれたのはわかっていると思います。気にしないでください。それより家まで送りますよ。」

ほんとに雪夜先生は優しいな。残したオレに気遣ってくれて・・・。

「いいえ。大丈夫です。オレ寄りたい所があるので・・・。」

「そうですか・・・。無理しないで下さいね。」

よかった。それでも送ると言われたらどうしようかと思った。

「じゃ、何かあったら連絡して下さい。」と携帯を取り出した雪夜先生にあわてる。

「いえっ。そんな迷惑になりますし、オレ大丈夫ですから。」

「高瀬さんはボクが迷惑ですか?」

「いえ、そういうわけじゃ・・・。」

「なら、交換しましょう。」

有無を言わせずにニコッと微笑む雪夜先生。

やっぱ響夜と兄弟なだけのことはあるかも・・・。この押しの強さは・・・。

内心で大きなため息をつきながらも赤外線でお互い交換する。

「それじゃあ、雪夜先生ごちそうさまでした。」

雪夜先生に頭をさげ、アキくんにもごちそうさまと残してごめんなさいと言って店を後にする。

しばらく歩いて店が見えなくなってから、ほーーーっと息をつく。

胃が痛い、薬飲まなきゃ治らないな。

ふと、武蔵の温もりに触れたくなった。

「帰ろう。」一人呟くと遠回りになるけど、店とは反対の道を通ってマンションへ帰る。

7階のボタンを押し、エレベーターにもたれ眉間を押さえる。

胃だけでなく、頭も痛くなってきた。







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~ Comment ~

頑張れっと、応援するしかないのね‥ 

こんばんは~(^-^)

私も薔薇をまとってきましたよ~♪
薔薇のお香もあるのですが今日はアロマです。

あーー‥トラウマになってますよね、勿論。
辛い時にひととお付き合いするのは神経が
すり減るだけで‥とっても可哀想で。
でも誰とも関わらない訳にはいかないし‥
人生は大変ですねえ。
死ぬよりも生きることの方が大変だといいます、
まだ死んだことがないので分からないけど、
大変だけどいいこともたくさんある。
そう信じていないと辛いことだらけで苦痛なだけの人生になってしまいます。

でも‥お腹を温めてあげたい。
温めて‥部屋も暖かくして‥気分の落ち着くアロマでも(笑)
ヒーリングキャットの武蔵くんと一緒に寝たら‥
元気になるでしょうか。

でも響夜くんより雪夜さんが相手の方が
気を使ってた気がしましたけど‥気のせいかな。

海人くんにはきっと生き残った意味があると思うから頑張ってほしい、
ガチで応援していますv-25
どうか頑張ってる分だけ彼が幸せになるように‥v-344

もう朝になっちゃった‥また参ります(^-^)

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Re:頑張れっと、応援するしかないのね‥ 

> ハル様こんばんは☆
>
> ほんとに傷ついちゃうと、次もそうなるんじゃないか、裏切られるんじゃないかって不安になるんですよね。心が弱ってるから余計に・・・。でも、その苦しみを乗り越えて海人には幸せになって欲しいと思います。
> 優しいハル様が海人の傍にいたら甘やかせてくれるんでしょうね。いい子いい子してくれちゃいそう(*^_^*)
> 武蔵にも癒しは出来ているみたいです。てか、海人には武蔵がいないとダメですね。きっと武蔵は海人よりお兄ちゃんな気がします(笑)武蔵のため息が聞こえそうです(苦笑)
>
> 響夜はあんな性格だから相手にすると感情が先走ってしまうんでしょうね。それに対して雪夜さんは4つ年上だし、優しく話すので冷静に話せるから響夜と話すより余裕があって気を使ってしまうんでしょうね。武蔵がお世話になったこともありますし・・・。
>
> ハピエンは譲れないので海人は幸せになります。多分きっと・・・。
>
> でもそのためにはネガティブな考え方をポジティブに考えられるように、人との関わりの中で海人を導いてくれ、信頼出来る友ダチや仲間を作って「フリ」をしないで生活出来るようにならなきゃいけないと思うので、これから色々と勉強していただきますっ。
>
> 海人を応援してくれてありがとうございます。
>
> 26歳という年齢設定のわりに子供っぽく幼い海人ですが、大人になっていきますので・・・。てか、周りの26歳が幼いんだよぉ・・・。大人になれよって感じですლ (。◕ˇε ˇ◕。ლ)
>
> では、またお邪魔しますね。
> ハル様ちゃんと寝てくださいね。無理はなさいませんように・・・。

Re: タイトルなし 

> Y様こんばんは☆
>
> いつもお寄り下さいましてありがとうございます♥♡♬☺(✿ฺ´∀`✿ฺ)
> すごく嬉しいんです。『楽しみにしています』の言葉にどれだけ励まされているか。拙いお話ですが愛情込めて書いております。ハピエンに向けてお話は続きますので又来てくださればと思います。
>
> リンクの件、とても嬉しいです。でもBLなだけにY様のページを汚してしまわないかと・・・。それでも大丈夫と思われるならどうぞお願いします。
>
> また、私もY様のところにお邪魔させていただきますね。
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