キミと空とネコと20

「ゆ･･･雪夜さん？」ソケイ部にタオルが上がってきてあせる。だってどこまで拭くつもりなんだ？そこはいくら病人でも、他人様に拭いてもらうのは嫌だ。仲の良い友ダチだって嫌だ。

なのに、雪夜さんは平気な顔でと言うより嬉々として拭いてないか？

「雪夜さん止めて下さい。オレ自分で拭きますからっ!!」雪夜さんの手首を押さえ、それ以上拭かせないように力を込める。

「おやおや、病人が何を言うんです？ボクがキレイにしてあげますよ。海人くんは安心してボクにまかせていればいいんです。」

おいおい、この人ってこんなキャラなのか？

「自分でしますっ!!」「ボクが拭きます!!」とお互いに引かない。雪夜さんの力に押されそうになる。なんでこの人こんなに力があるんだ？

「海人くん、ボクを非力だとでも思ってたんですか？なまじ鍛えてませんよ。なんせ大型犬で暴れる子も押さえ込んで処置してますからねっ。ふふっ。」うわぁ、眼鏡ないけど、この人鬼畜だぁ～～～!!

もう少しでってとこで

「雪夜何してんだ？」

怒りを含んだ低い声が聞こえた。

二人してその声の方へ顔を向けると、寝室のドアを開けて壁に背をもたせかけ腕組みをしている響夜が雪夜さんを睨み付けていた。

響夜の目怖いよっ!!

「あれっ。お早いお帰りだね。響夜。もっと遅くなるはずじゃなかった？」

「何か、いや～～～～～な予感がしてさぁ。」

なんだ？二人の間に火花が飛び散ってるような？？？

「帰ってきてよかったみたいだな。」

「帰ってきてくれなくてよかったのに。」

二人がいい合いをしている間にオレは股と臀部を適当に拭いて、出してくれていた新しい下着とパジャマのズボンを履く。

ふぅ。助かった。余計に熱が出そうだ。

「ああっ。海人くん･･･。」

「雪夜さんありがとうございました。もうキレイに拭けました。」

「残念です。」ガックリとうなだれる雪夜さん。なんでガックリなんだ？

「昨日は響夜が海人くんの身体をキレイに拭いたんです。全身を。まぁ、海人くんは寝てたからわからなかったでしょうけど。」

「えっ？全身って？えっ？」

「おぅ。オレがキレイに前も後も拭いてやった。」ニンマリと口角をあげる響夜に声もでず、金魚のようにパクパクと口を動かすオレ。

「オマエ、最低だ。人が苦しんでるのに･･･。」やっとのことで言うと

「だから、キレイにしたんじゃねぇか。汗拭かないと身体が冷えちゃうだろ。」

そうかもしれないけど、前も後もしなくてもいいじゃねぇか。

起きてたら、絶対にさせないのに寝ていて気がつかなかった自分が情なくなる。でも、寝てて記憶がないのだからなかった事にして忘れよう。これからは自分ですればいい。

そう思ったところで左手首が気になる。

もしかして響夜は包帯を外したんじゃ･･･。そういえばこの包帯巻き直されてる？

思わず、左手首をぎゅっと掴む。

「全身を拭いたのか？響夜･･･。」

急に声音が変わったオレに二人の目がオレに向く。

「ああ。そうだけど？」

「全身って、この包帯ほどいて拭いたのか？」

この傷は誰にも見られたくない。見てもいいのは武蔵だけだ。誰にも知られたくない、誰にも見せないって、触らせないって決めたんだ。

心の中でマグマのような怒気が込みあげる。

「どうなんだよっ。響夜っ!!」

オレは大きな声で怒鳴るように、叫ぶように響夜に向かって吼える。

「･･･。ああ。雪夜と一緒に包帯外してそこもキレイに拭いた。」

響夜は事も無げに無表情で言いやがった。

雪夜さんはオレを悲しげに見ていた。

「･･･っつ･･･。」

知られた。他人にこの傷を見られた。触られた。オレの傷を武蔵以外の奴に･･･。

「わあああああああああっ!!!!!」

---

海人が見られたくないものを響夜も雪夜も見ていました。傷跡って見た目以上に心に傷を残すんですよね。その時がフィードバックしちゃうんですよ。心が安定して無いと･･･乗り越えないと。海人はパニックおこしちゃいました。まだ、この間のことですから･･･。



ランキングに参加しています。ぽちっとご協力お願いします*゜✲ฺ(✿◕ฺ ∀◕ฺ)ฺノ†゜*




にほんブログ村