キミと空とネコと

キミと空とネコと21

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「海人!!」

「海人くん!!」

二人が同時にオレを呼ぶ。

「出てけっ!!今すぐここから出てけっ!!」

オレの大きな声に武蔵が驚いて部屋中を走り回る。部屋の色んなものを蹴落としながら・・・。

「出てけって言ってるのが聞こえないのか?二人とも早く出てけよっ!!」

オレは傍にあった物を手当たり次第に投げつける。

「海人落ち着けよっ。」

「話を聞いて下さい。海人くんっ。」

「うるさい。話なんてない。響夜と雪夜さんが出て行かないならオレが出て行くっ!!」

二人が何と言おうと話を聞くつもりなんて一切なかった。雪夜さんはオレに嘘をついた。身体を拭く時、包帯を見て「怪我してるんですね」なんて、知ってたくせに知らないフリをした。

響夜はデリカシーもなくこの包帯を外した。普通はこんなところの包帯を本人に聞かずに勝手に外すものか?響夜の無神経さに怒りが増した。

オレはパジャマのままベッドから降りると、出て行こうとしない二人を後にジャケットをはおり部屋から出て行こうとする。二人と一緒になんていられるかっ!!

そんなオレの前で武蔵がしっぽを膨らませ、響夜と雪夜さんにフーフーと威嚇している。オレを守るかのように・・・。

そんな状態のオレと武蔵を見て話をしても無駄だとわかったのか

「今日は何を言っても海人には通じないようだな。」

「海人くん、その身体で外に出て行くなんて無謀です。ボクたちが出て行きますから海人くんは休んで下さい。」

そう言うと二人は部屋を出て行く。

オレは横を向いて拳を握り締め、二人の事を見なかった。

二人が心配そうにオレを見てからドアを閉めた事なんて知らない。

二人が出て行ったドアにソファーにあったクッションを投げつける。

「うわあああああっ。」叫ぶとオレはその場に泣き崩れた。

涙があふれて止まらなかった。顔を覆った手のすきまから、絶え間なく涙が落ちる。

この傷を誰にも知られたくなかったのは何故?

触られたくなかったのは何故?

今まで気がつかないフリをしてた。

わかっていたけどその事を考えないようにしていた。

それを認めてしまったらアイツを求めてしまうから。

もう終わってしまったのに、帰ってこない幸せな日々を思い出してしまうから・・・。

この傷はオレとアイツの・・・コウキとの愛の証。

コウキが憎くないのかと言えばどうなのかわからないけど、オレがコウキを愛してたのは事実で、コウキに愛されていたことも事実。オレをちゃんと愛してくれたのはコウキしかいない。オレはコウキの事を嫌いになって別れたわけじゃない。コウキがオレの事を嫌いになったのだとしても・・・。

心から笑顔でいられた日々。フリじゃない素のオレで過ごせてた日々。

最後は終わってしまったけれど、少なくともそれまではオレの人生の中で一番愛されて、幸せな時間だったわけで本当なら幸せな思い出を抱いて死んでいた。今はここにオレはいなかったのだ。

助かってしまったからこそ残ったこの傷はオレとコウキとの愛の証。思い出。もう誰も愛さないというしるし。

そうだ。オレは今でもコウキのことを愛してる。忘れられるわけがない。一番愛した男なんだから・・・。コウキがもう帰ってこない事を認めたくなくて、わざと考えないようにしていた。傷も包帯で隠していた。傷が表に出るという事はコウキが傍に居なくなった事の証でもあったから、それをオレたち以外の人間に触れて欲しくなかったんだ。

「コウキ・・・コウキ・・・。」オレは泣きながらコウキを呼んでいた。

傍で武蔵が「にゃー。」と小さな声でオレをなぐさめるかのように手を舐めてくれていた。

武蔵を抱いて身体に顔をくっつけて温もりを感じていても涙は止まらず嗚咽をもらしながら過ごした。

寝られるわけもなく、空は夜半から降り出した雨に夜が明けても暗いままだった。








海人はまだコウキのことを愛しています。忘れられるわけはありません。幸せをくれた唯一の人です。本当なら幸せを抱いて死んでいたはずなのですもの。この愛を抱いて死んでもいいと思えるほど、コウキは海人に初めての愛と幸せをくれた相手だったんです。海人にとっては・・・。それが正しくない事だったとしても・・・。

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